第187話:レベルが上がらない?
そうして、データ収集も兼ねて狩りと採取をしながら進んでいると……
『カヅキ。この辺りであれば、フィアたちでも敵を倒せるでしょう。ですが、簡単に倒せる相手ではないので気は抜かないように。特に範囲攻撃を持たないフィアの場合、複数相手になるとかなりきついと思いますよ』
『わかりました。ありがとうございます』
どうやら、ようやくフィアたちを鍛えながら移動できるエリアに到達したらしい。フィアたちのレベルがいくつか上がるまで、この辺の調査でもしているとしよう。
『フィア、ヴェル。この辺の敵ならフィアたちでも倒せるようなので、気を付けながら戦うように。それと、私からあまり離れないようにして、1体ずつ確実に仕留めること。わかった?』
『ピィィィッ!』
『グルゥゥゥッ!』
『それじゃ、いってらっしゃい』
『ピィィッ!』
『グルゥ!』
ここに来るまでよほど退屈していたのか、ふたりともすぐに動き出した。とはいえ、あくまで倒せるというだけで、楽勝ってわけでもなさそうなので、しっかり様子は見ておかないとね。何が起こるかわからないし……
とりあえず、ふたりが1:1で戦えるように敵を間引きながら、適度に行動阻害する程度でいいかな?それで大丈夫そうなら、徐々にフォローを減らしていけばいいだろう。
というわけで、採取しながら周囲を探索しつつ、できるだけフィアたちが多く戦えるようにと、敵の数を調整しながら過ごしていたのだが……これがまた、いつまで経ってもレベルが上がらないという謎現象が起きた。
以前からおかしいとは思っていたんだよ。私のレベルがなかなか上がらないのは、諸々の効果のせいなので仕方ないのだが、それを加味してもフィアたちの上りが悪すぎる。なんでこれだけ戦ってるのに、しかもきちんと止めも刺させているのにも関わらず、どうして未だにレベル1なんですかね……?
ただでさえレベル1という一番上がりやすい状態なのに、種族ツリーから見ても下から2番目くらいのはずなのに、全くレベルが上がらないのは絶対におかしいだろう!
あれから3日が過ぎ、ふたりが倒した敵は既に軽く500体を越えている。その間にフィアたちも確実に強くなっているのだ。それこそ、ここで戦い始めた頃と比べれば、それぞれ動きも良くなってきているし、敵の動きも覚えているのだろう。カウンターのようなことをしている時もあるくらいには、ここでの戦闘に慣れてきている。
1体倒すまでの時間も、必要な攻撃回数も減ってきているのだから、確かに成長しているはずなのだ。それなのに、どういうわけかレベルが上がらず、ふたりともレベル1のままなのである。
『うーん……なんでレベルが上がらないんでしょうね?』
『カヅキ?何の話ですか?』
『いえ、ふたり共あれだけ敵を倒しているのに、いつまで経ってもレベルが上がらず、レベル1のままなのが不思議でして……』
『え……?カヅキは何を言っているのですか?フィアもヴェルも、かなりレベルが上がっているでしょう?』
『…………はい?レベルが上がっている?ふたり共?』
『ええ、しっかりと。むしろ、これだけ戦っているのですから、レベルが上がらない方が不自然でしょう?』
『それはそうなんですが……私もあの子たちのステータスを見ることができますが、ずっとレベル1のまま変わらないんですよ……』
『そんなはずが……誰が見たところでステータスが変化などしませんよ?ステータスを偽装するスキルでもあれば別ですが、どちらもそのようなスキルは持っていないでしょう?』
『ええ、まぁ……だからこそ、ずっとレベル1のままなのはおかしいと思ってですね……』
『カヅキが見ているものを、我にも見せてくれませんか?』
『構いませんよ。これです』
そう言って、ふたりのステータスウィンドウをウルに見えるように表示する。すると……
『確かにレベル1になっていますね。ですが、どうしてでしょう?あの子たちが成長しているのは、カヅキも見ていてわかっているのでしょう?』
『そうなんですよね……それがわかるからこそ、どうしてレベルが1のまま上がらないのかがわからなくて……ですが、ウルにはレベルが上がり、成長しているのがわかるということは、おそらく私の方がおかしいのでしょう。であれば……』
『何か思い当たることでもあるのですか?』
『そうですね……私は渡来人ですから、そちら側で何らかの不具合が出ている可能性があります。なので、少し手を打ってみます』
とりあえず、不具合の可能性ありとして調査してもらうように、運営に不具合メールを出しておくかー……こっちの方が時間の流れが速いし、かなり時間が掛かるかもしれないが……結果がいつになるか、全く予想がつかないが、何もしないよりはマシだろう。
原因不明って返ってきたら、もうどうしようもないけど……そうなったら女神案件かなー?そっちには頼りたくないから、できれば運営側の不具合として、解決してくれるとこちらとしては助かるんだけどなー。
まぁいいや、次の休憩の時にでもメールを送っておこうっと……