表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/220

第185話:虫がいない?


『フィア、ヴェル。ふたりとも戻っておいでー』


『ピィィィ……』


『グルゥゥ……』


君も散々苦しめてごめんね。今、終わらせるね。

ふたりが離れたところで、急所に撃ち込み一撃で絶命させる。ウルの言葉通り、ふたりでは無理があったが、実際にやってみたからこそ、この状況が判明したともいえるので、全くの無駄というわけでもない。


『ふたりともごめんね。でもこれで、今の自分たちの実力がわかったと思う。まだ結構先の話だけど、ふたりでも倒せるくらいの場所に行ったら、そこで戦えるようにするから、それまでは大人しくしててね』


そう言って、ふたりの頭を撫でてあげる。

ヴェルはどうかわからないが、フィアにとっては初めて攻撃が効かなかった相手ってことになる。少し凹んでいるようだが、早い段階で上には上がいるということ、自分はそれほど強くないことを知ることができたのは良かったと思う。


『そのうちにいろんな場所を旅するから、その時にたくさん修業するといいよ』


『ピィィィ』


『グルゥゥゥ』


ふむ……とりあえず、不貞腐れてる感じではないし……若干不満そうではあるが、やる気はあるようだし、大丈夫かな?


さて……これからどうするかなー?予定が狂ってしまった……

私が全部一撃で倒せるものだから、ここでも街周辺と同様に、修業しながら移動できると思っていたのだが……そういえば、ここは前人未踏の未開領域だったんだよなー……そりゃあ、敵も強いはずだよ。いくら変異種とはいえ、元は序盤にいる種族なのだから、相手になるはずがない。


そんなことにも気付けないくらい感覚が狂っているとは……思っていた以上にチートに侵食されてるなぁ……既に強さの感覚がかなり麻痺してるっぽいし、この分だと他にも結構影響出ているのではなかろうか?全く自覚がないけど、だからこそマズいと思う……


とりあえず、ここで止まっていても仕方ないし、通りすがりに採取できそうなものだけ採取しつつ、射程内の敵だけ倒しながら進みますか。




フィアに並走してもらいながら、ヴェルを背負って採取と狩りをしつつ、ひたすら南下を続ける。そのため、来た時よりもずっと遅い速度で進んでるわけだが、その分周囲を見渡せているので、いろいろなものが目に留まる。


その度に詳細鑑定をしてるので、新しいものはとりあえず採取している。ついでに新種の樹木があれば、木材として伐採もしている。当然、新種の動物は射程内に入り次第、インベントリにお引越ししていただいている。

こうしてみると、実に見事な環境破壊者である。ひでー奴もいたもんである。


あと意外だったのは、この森には思ったよりも虫や鳥がいないことである。

樹々が密集しているわけではなく、十分に飛び回れるくらいの間隔があるにも関わらず、小鳥の類すらほとんどいないのは何故だろうか?

餌となる虫がいないから、その影響とも考えられるが……そもそも、森に虫が少ない方がおかしいのだ。虫が動物を恐れて逃げ出したわけでもあるまいに……


『ウル。この森には、虫や鳥の類がほとんどいないようですが、この世界の森はみんなこうなのでしょうか?』


『そういうわけではありませんが、この森はかなり少ない方ですね。ここからずっと南西に行くと、逆に虫ばかりで動物がほとんどいない森もありますよ』


『なるほど、それぞれの森で生態系がかなり違うんですね。私としては、ここが虫の少ない森で良かったです。温泉に浸かっている時に、虫に集られるのは嫌ですからね……』


そういえば、蚊やハエの類も見たことないし、この森はとても住みやすい森なのかもしれない。動物に対抗できるのであれば、だけど……

しかも、交通のアクセスは凄まじく悪い。片道だけでも、威圧付き全力疾走で約2週間くらい?それも、暗視や悪路走破、水上歩行などのスキルと、泥沼での安全な寝床と大量の水と食糧が必須という条件付き。

こんな酷い条件を課される場所に来る人なんて、まずいないよねー。むしろいたら困る……もしいたら、私だけの癒し空間がなくなってしまう……


あっ!あのふたりを連れてきたら、私だけのものではなくなってしまうんだった……とはいえ、建物や温泉の維持管理に畑や家畜の世話などもあるし、やはり人手は必要になるよなー……何もかもが、フルオートにできるわけじゃないからなー。


掃除だけなら、一定時間毎にあらゆる場所に〔洗浄〕の効果が発動するようにできれば解決する(できるかどうかは別にして)が、畑や家畜の世話はさすがに無理がある。自分用の食事の準備もいるし、食材の補充も必要だし、無人で永久稼働可能で、あらゆるものが揃ったフルオートの生活空間なんて、作れるはずがないのだ。


そうは言うものの、将来的には絶海の孤島で一人暮らしをするわけだから、人手なしで全てを手間なくこなすことを考えなくてはならない。とはいえ、私にできそうな案と言えば、そういったことが可能な能力を持った従魔を得て、代わりにやってもらうことくらいか?


家事ならシルキーやブラウニー、畑や果樹はノームやドライアドだろうか?こうして例を挙げると、妖精や精霊に属するものばかりだなー。今すぐ必要なわけではないし、海に出るまでに着いて来てくれるものと出会いたいものだ。


とはいえ、ノームやドライアドは旅をしていれば出会う機会もあるだろうが、家事担当のシルキーやブラウニーと出会う機会は、ほとんどないのではなかろうか?


特にシルキーの方は、旧家に棲み着いていることが多いらしいし、まずはそういった物件を探すことからになるため、交渉以前に出会うこと自体が運だろう。はっきり言って望み薄である。

ブラウニーに至っては、野良がいるのかすらわからん。個人的には、既に誰かと共生してるイメージがあるため、もしかしたらこちらの方が難易度が高いかもしれん……


なんにせよ、気が合わないと一緒には暮らせないので、何度出会ってもダメな可能性もあるけどね……これに関しては、良い出会いがあることを祈るしかないなー……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ