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第184話:チートの弊害


『さてと……それじゃあ、街に戻りましょう。フィアとヴェルは、敵の手前までは私が運ぶね』


『ピィィィッ!』


『グルゥゥゥ』


『今回は急いでるわけもないので、ゆっくり行きます。具体的にはふたりの戦闘訓練と採取も兼ねて、戦いながら行こうと思います』


『その子たちだと、この辺はまだ無理でしょう。もっと死の森の南寄り辺りでないと、訓練どころじゃないと思いますよ?』


『その辺は私がサポートしますので、大丈夫だと思います。そのために、わざわざウルに手伝ってもらって、威圧の威力調整ができるようにしたわけですし……』


そう。野菜の収穫待ちの時間を有効活用するために、ウルに威圧を使いこなすための訓練をしてもらっていたのだ。

というのも、いつまでも垂れ流しというわけにもいかないし、なによりも完全に制御できるようになれば、不意にイラついたとしても無自覚に放出することもなくなると思ったからだ。


元々スキルとして使っていたため、オンとオフしかない状態からの変更だったので、感覚を掴むまでにそれ相応の時間を要した。その甲斐あって、威力だけでなく効果範囲も結構融通が利くようになってきたのだ。今までは自分を中心とした球状の一定範囲だけだったが、範囲の拡大縮小や変形、視線を媒介に対象のみを威圧することもできるようになったし、威力調節も大分うまくなった気がする。


とはいえ、威力の方は自他の力量差によっても変動するため、もっと経験を積まないとダメらしい。対象によって、どれくらい効果に差があるのかをしっかり把握しないと、やり過ぎたり足りなかったりするため、実際に使いながら慣れていくしかないようだ。


そういうわけで、街までの道中にいる敵を相手に練習するつもりなのだ。詳細鑑定で相手の力量を把握して、どれくらいの強さの敵に対して、どれくらい威圧をすれば、どれくらいの効果を発揮するのか?それを実地で検証しながら進んで行けば、街に近づく頃には弱い敵相手でも、対象以外を無駄に怯えさせずに済むようになるかもしれない。

というか、そうならないと周囲の生物が暴走しかねないので、今となっては必須技能といってもいいかもしれないため、早めに身に付けたいというのが本音である。




そして、フィアを抱えヴェルを背負った状態で走ることしばし、ようやく認識範囲内に動物の反応が現れた。既に温泉から30km近く離れているので、温泉を中心に半径約30kmほどが禁足地となったようである……ちょっとどころではなく、広すぎませんかね?

あの時だって憤りはしたものの、別に怒り狂ったわけでもないのに、ここまで生物が寄り付かなくなるって、どういうことなの……?


まぁいいや、考えたところでどうなるものでもないし、制御できるようになってしまえば、もうあんなこともなくなるはずだしね。切り替えていくしかない。


『よし、この辺からかな?ここから少し先に行くと獲物がいるから、気を抜かないようにね?』


『ピィピィ!』


『グルゥゥ!』


そう話しかけながら、ふたりを地面に降ろす。


『ウルが言うには、この辺の敵はふたりにはまだ早すぎるということなので、まず私が動きを止めるから、その弱った敵だけを狙うようにね。張り切るのはいいけど、自分と相手の力の差をしっかりと把握すること。そして無茶はしないこと。いいね?』


『ピィィ』


『グルゥゥ』


『それじゃ、ゆっくり進むよー』


『ピィィィッ!』


『グルゥゥゥッ!』




そして、第一目標を射程内に捉えたのだが……空間認識でわかってはいたが、この辺の生物は基本的にでかいんだよね……

街付近にいた動物たちよりも、ふた回りくらいでかい。それはそのまま強さにも反映されるわけで……確かにこれでは、フィアたちには荷が重いだろう。毒が効けばあるいは……とも考えられるが、多分毒で倒れる前にフィアたちが倒されてしまうことだろう。


なので、街周辺でもやっていた様に、基本的に四肢を壊して動きを止める。ついでに威圧の練習もする。そうして身動きの取れなくなった相手に、フィアたちが襲い掛かる。

酷い絵面ではあるが、これも生存競争と思って諦めて欲しい。すまぬ。君の犠牲は無駄にはしないよ。もちろん君の素材も無駄にはしないので、安心して逝ってほしい。


とはいえ、格下のフィアたちでは、いくら身動きが取れないとはいえ、体力も耐久も高い相手には手こずっているようだ。予想以上に攻撃が効いていないなー……これは時間が掛かりそうだ。


『ウル、あれはこの辺だとどれくらいの強さにあたるのでしょう?強い部類に入りますか?』


『決して強くはないですね。弱いわけでもありませんが、耐久力が高いのであの子たちではきついでしょう。先程も言ったように、死の森の南側くらいでないと攻撃が通らないでしょうね』


あー、やっぱりそうなるのかー……でもそうなると、そこまでこの子たちのすることなくなっちゃうんだよなー……


『どうせなら、鍛えながら南下したかったのですが……フィアたちには、もうしばらくは散歩状態でいてもらうしかないようですね』


まさか、この辺の敵とそこまでの格差があるとは思ってもみなかった。ウルが言っていた無理があるというのは、こういうことだったんだなー……私自身のステータスや装備の異常さのおかげで、敵の強さを詳細鑑定で見てもいまいちよくわからんのが辛い……


フィアたちの数値と比較して、相手の方が明らかに強いのはわかっても、それがどれくらいの差になるのかが理解できない。これは、今後も育成するにあたって致命的だと思うので、なんとか改善しなくては……


やはり一足飛びで強さを得ると、こういうところで弊害が出るなぁ……低い数値での検証ができていないから、基準値がわからん。おまけに、もう既にかなり強くなってるから再検証もできないしなー……


手加減はできても、それが数値的に幾つなのかはわからないから、ステータスによる比較検証の役に立たないし、一体どうすれば……


カヅキは住人モードのため、ダメージが可視化されません。数値もHPバーも見えないため、ダメージの数値化は不可能となっています。

詳細鑑定でステータスが見れますが、自分のステータスと違って現在値は表示されないため、残存体力もバフ・デバフ状況も知る術はありません。

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