第183話:準備完了?
その後、ウルと話し合った結果、各動物用の寝床と放牧地、養殖用の生け簀などを作り終えてから、2人を迎えに行くことになった。
あまり景観を壊したくなかったので、動物たちの寝床は全て半地下にして、屋根が地上1mくらいの高さになるようにして、さらに上から土を乗せて丘のような見た目になるようにしてみた。そこには柔らかい芝生を植えることで、昼寝しやすいように整えておいた。
それと念のために、雨が降っても大丈夫なように側溝と排水路を作り、内側に水が入らないようにしてある。出入りするためのスロープの地上部分は、地面より少しだけ高く設定してあるため、もし雨の勢いが強く側溝から水が溢れたとしても、心配する必要はない。
寝床作りで一番苦労したのは、養鶏舎である。
なにしろ、アレはとてもうるさいらしいので、防音措置を施さねばと思い、結構な時間を取られた。完全に密閉すると窒息してしまうので、空気を循環させながら、音だけを遮ると言うのは難しかった……最終的には遮るのではなく、音という振動を吸収させることで減衰させる方式になったが、音漏れはほとんどなくなった。少し離れるだけで、耳を澄ませなければ聞こえないくらいにまでなったので、大丈夫だろう。
ちなみに、音漏れの実験はフィアに手伝ってもらった。普段、あまり鳴かないから知らなかったが、実はかなりの声量を持っていてびっくりした……
生け簀は、結局池の下流に作ることになった。何故なら湖が遠すぎたからだ。さすがに20km以上も離れている場所まで毎日通うのは辛すぎるので、これはもう致し方ない。
後々、あの2人に引き継ぎする以上、そこまでの負担を強いるわけにはいかないからね……手近なところに作ることにしたのだ。
池で養殖すればいいじゃないかと思うかもしれないが、あそこはヴェルの寝床でもあるので、そう言うわけにもいかないのだ。そんなことをすれば、同じところに入れられた魚たちのストレスがマッハである……
そんなわけで、生け簀は空から狙われないようにと細長いものを2列平行に作り、その両脇と中央に樹を植えることで、視認と襲撃の障害となるようにしておいた。3列に並んだ樹々の間に挟まるように、2つの川が流れているような見た目になったが、これはこれで割といい感じの見た目になったので、後から石や岩、水草などを持ってきて、自然な川に近い感じに仕上げてみた。
岩と格子で区画を分けることで、1つの生け簀で複数の種類を養殖できるようにしてあるので、生け簀が足りなくなることはないだろう。
他に育てる動物は何かとインベントリを見た時に、目に留まったのは水鳥である。
そういえば、羽毛布団も欲しいなーって思ったけど、羽毛ってどうやって量産するんだろう?抜け毛を拾い集めるのだろうか?それとも、押さえつけてブチブチ引っこ抜くのだろうか?あるいは羊みたいに刈り取るとか?わからん……
それはともかく、養殖となるとどうすればいいんだ?飛んで逃げられても困るし、屋根と壁付きの池でも作ればいいのだろうか?これもわからんが、他にどうしようもないだろうし、陸地と水場が半々の養殖場を作ってみる。ダメだったらその時はその時だ。羊毛布団は作れるから、それほど深刻な問題ではない。
もし、どうしても羽毛布団が欲しくなったら、それっぽい敵を探して乱獲するしかないな……対象となった相手にとっては、はた迷惑ってレベルではないが、多分ひとつ作れば満足するだろうから、それまで耐えて欲しい。ほんと、欲深くて申し訳ない……
というわけで、あれもこれもといろいろなものを作って過ごしてる間に、野菜が実ってしまった。早くね?野菜って、植えてから1週間程度で収穫できるものだったっけ……?
しかも、どういうわけかどの野菜も、街で売っていたのよりも一回り大きいのだ。じゃが芋が握り拳くらいあるし、玉ねぎはソフトボール並だし、ほうれん草は葉っぱが大きくて、肉厚(?)になっていた。おまけに素人でもわかるくらいに活き活きとしているのだ。
まさかと思い鑑定してみると、予想通りというかなんというか、品質Sになっていた……初めての農作業でこれってことは、もう品質は上りも下がりもしないってことなのでは?全く努力しないで、農業の高みに至ってしまった。もうこの分野で成長できないじゃん……全栽培とかいらないから、成長する楽しみと達成感を返して……
まぁ、スキルが進化した時点で、こうなるんじゃないかとは思っていたけど……せめて品質Aで止まっていて欲しかった……
それから、果樹の方も異様な成長を遂げていたりする。たった1週間で膝丈くらいまで育っているのは、どう考えてもおかしい……桃栗3年柿8年と言うけど、下手すると1か月くらいで実が生るのでは?とか思えてしまう。なんだかなぁ……
今のところ、果樹も畑もすこぶる順調で、ダメになりそうなものは何もない。これなら、もっと面積を増やしても大丈夫そうだな。植えるかはどうかは、またあとで決めるとして……とりあえず、畑だけは耕して準備しておくことにしよう。
これで、2人を呼ぶ前に作っておこうと思ったものは、全部作り終えたかな?なら後は、畑の収穫が全部終わったら、久々に街に戻るとしますかねー。