第181話:寝て起きたら・・・
おはようございます。うん、思考も大分スッキリしてますね……悩み事はちっともスッキリしてませんが……
『おはよう、カヅキ。精神の調子はどう?まだ落ち着いていないようなら、まだ寝ていてもいいのですよ?』
『おはようございます、ウル。大丈夫です。思考は大分スッキリしましたし、心のモヤモヤもかなり晴れた気がします』
『そう。でもやっぱり心配ね。なにしろ、昨日はあんなに凄まじい威圧を放つほど精神に負荷がかかったのだから、そんなに早く完治するとは思えないもの』
『全く自覚がないのですが、そんなに凄かったんですか?』
『我もそれなりに長く存在しているけれど、人間に威圧で行動を阻害されたのは初めてよ?それこそ大精霊に匹敵するくらいの圧を発していましたからね……』
『大精霊って……そこまでいくと、もうどれくらいの格差があるのか、想像もできませんね』
『全力の我が10人いても、どうにもならないくらいだと思えばわかりやすいかしら?』
『そんなとんでもない領域に届いているとは到底思えませんが……』
『あくまで、威圧に関してということですから。他の能力がどうであれ、我を威圧のみで抑えたのは事実。そして……この地域から、あらゆる動物や魔物が逃げ去ったことも、カヅキの威圧が異常であったことの証明ですよ』
『え……?今、さらっと私の知らない情報が追加されたのですが……?』
『カヅキが眠っている間に、周辺の状況を調べてみたんですよ。あんなことがあったのですから、少なからず森に影響が出ると思ったので調べてみたら……案の定、周囲の移動可能な生物は全て逃げ出していましたね』
『ここに来た時に、かなり離れたところまで逃げられて、それから近付いて来てなかったはずなのですが?』
『そこから更に遠くまで逃げ出したのですよ。あの様子では、もう2度とこの地に戻って来ることはないでしょう。最初に来た時と今回のことで、この地には逃げるしかないほど恐ろしい”何か”が住み着いたと認識したでしょうし、もうこの周辺は近付くもののいない、カヅキという絶対強者の支配領域となったと見た方がいいでしょう』
『…………え、えーっと……絶対強者になんてなった覚えはないんですが?』
『カヅキにはなくとも、もう既に逃げ出したものたちにとっては、決して近付いてはならない恐ろしい場所として認識されたことでしょう。もはや、元の状態に戻ることはないでしょうね。少なくとも100年程度では何も変わらないと思いますよ?』
『別にそんなことをしたかったわけではないのに……女神の横暴っぷりに憤っただけで、なんでこんなことにー……』
『不幸な事故といえば事故なのでしょうが、カヅキはもう少し精神を安定させることを優先しましょう。そうすれば、今回のように無自覚に威圧を放つこともなくなるでしょうし、もっと気を楽にして落ち着きましょう』
『そう、ですね。私としても、これ以上暴発したくはありませんしね……願わくば、もう女神が余計なことをしでかさないことを祈りましょう』
お前のことやぞ、女神!もうチートは全面禁止だから!わかってる?!
ブンブンブンブンと今度は首を縦に振りまくって頷いてるし、多分大丈夫だとは思うが……そのうちに、また何かやらかしそうな気がするんだよなー……
『でも、そうなると……魔物避けの外壁とか作る必要がなくなりましたかね?』
『そうですね。もうここには、人も獣も魔物も寄り付くことはことはないでしょう。もし訪れるものがいるとするならば、我のような精霊か、あるいは空に棲まうものくらいでしょう』
『あー……空、ですか……この辺だけ、樹々がないから降りてこられますねー……家畜を飼うとしたら、それはちょっと困りますね』
『カヅキは、家畜を飼うつもりなのですか?』
『ええ、もう既にインベントリにいますし、これは返すことができないので……いくら時間が停止しているとしても、この子たちもずっとインベントリに封印されたままでは嫌でしょうし……』
『なるほど、それは確かに出してあげたいですね』
『とはいえ、牛や羊は基本的に放牧でしょうし……餌になる草は生やすことができるでしょうが、空襲を防ぐ方策を練る必要がありますね』
寝床は普通に厩舎みたいなやつを作ればいいだろうけど、日中放牧してる時に狙われそうだしなー……
数が少ないとはいえ、それでも結構な広さが必要になるだろうし、それだけの広さの草地が森の中にぽっかりと穴が開くようにできていたら、相当目立つだろう。
となれば、興味も引きやすく狙われやすくなるということだ。
それだけ広大な範囲を全てカバーするとなると……結界とか幻術とかになるのだろうか?仮にそういう系統があったとしても、私には使えない。こっちの世界にはマジックミラーみたいなのはないだろうし、どうしたものか……