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第180話:お詫びの品


『というわけで、私が人の世で暮らして居ると、いつ騒乱の種になるかわからないので、人のいない地で心安らかに暮らしたいと思うようになったわけです』


『そうでしたか……ただでさえ不安定な精神に、そのような荷を抱えさせれば、人を避けるようになるのも頷けますね』


そんなわけで、ウルには心配を掛けたこともあり、私に関する情報を少しだけ話した。その結果、それなりに理解は得られたようだ。同時にそれ相応に呆れられもしたが……

ちなみに、工房のアップグレードは既に終わっている。これは別に私が作業を進めたわけはなく、ウルと話している間にいつの間にか終わっていたのだ。おそらく女神がやったのだろうが、何故かシステムメッセージは出なかったので、叱られないようにこっそり修正していたのかもしれない。


『確かに、これで植物を育てるのは楽になりそうだけど、これが当たり前になると、人の街や村に行った時に認識に齟齬が出そうで怖いんですよね……まぁ、それ以外にもいろいろと慣れ始めてきているので、時間が経てば経つほど手遅れになっていきそうですが……』


『これだけ異常な能力を持っている時点で、手遅れなのではありませんか?』


そうなんだけど、できれば信じたくないというか、目を逸らしていたいというか……認めるのに、かなりの覚悟が必要なんですよ、それ……


そんなこんなで、ウルと会話しながら水やりをしていると……



≪システムメッセージ≫

<特殊アイテム:お詫びの品 を 獲得しました>



…………この期に及んで、こちらの神経を逆撫ですることはないだろうが、また余計なものだったりしたら精神的にヤバいので、一応念のために深呼吸をして心を落ち着かせる。


『カヅキ?どうしました?』


『……女神から、お詫びの品が届いたようです』


『え……?どういうことですか?』


『スキルだけでなく、アイテムもこうやって送ってくることがあるんですよ……さすがに、さっきの今でおかしなものを送ってくるとは思いませんが、念のために心を落ち着かせておこうかと思いまして……』


『確かに、今のカヅキには必要かもしれませんね……』


ウルにも私の警戒が伝わったようだ。まぁ、先程の状況を考えれば当然のことではあるのだが……このまま放置するわけにもいかんし、意を決してお詫びの品の中身を確認する。

するとそこには、牛セット、羊セット、鶏セット、川魚セットなどなど、動物の名前入りのセットが詰め合わせになっていた……いたのだが、インベントリには生きたままの動物は入らなかったはず……何かそのまま出してはいけない気がして、内容物をしっかり確認することにした。


テキストを読んでみると、どうやら各動物たちが生きたまま群れで詰め込まれているらしい……繁殖用にどうぞって、インベントリに生き物は入れられないんじゃなかったのか?!いや、助かるけども!輸送手段がないからと諦めていたから、それを何とか用意することでお詫びとしたって感じなのか?


『カヅキ?大丈夫ですか?顔が強張っていますよ?落ち着いて、ゆっくりと呼吸を繰り返してください』


『大丈夫ですよ、ウル。まぁ、やはりというかなんというか……突拍子もないものではありましたが、この世界に普通に存在しているもので、おかしなものではありませんでした』


『そうですか。カヅキが正気を保っているようでなによりです』


『おかしなものではありませんが、おかしな状態にはなっています。理由としては、送られてきたものが家畜用の動物たちの群れなんですよ……』


『……カヅキ?お願いですから正気に戻ってください。おそらく動揺しているだけなのでしょうが、精神に悪影響が出ているようなので、それはもう見ないでください。ああ、そうです。今日はもう疲れたでしょうから、もう寝ましょう。時間はいくらでもあるのです。後のことはまた明日することにして、今日はもうゆっくり休みましょう』


なにやら、ウルがめっちゃ焦っている。私が精神疲労で混乱しているとでも思っているようで、やたらと寝るように勧めてくる。うん、そう言いたくなるのもわかるのだが、私は至って正気です。おかしいのは送られてきた中身の方です。


『ウル。私は正気ですし、精神的にも少ししか混乱していませんから安心してください。本来、インベントリには生き物は入れられないはずなのに、何故か生きたまま入ってるらしいということで、理解に苦しんでいるだけです』


『しっかり悪影響出ているじゃないですか!もういいから寝ましょう。作業も確認も明日やればいいのです。いえ、精神が落ち着くまで、数日は温泉に浸かってゆっくりするべきです』


おかしい。なんだかウルまで過保護になってきてないか?先程からの一連の流れで、私の精神状態をかなり心配してくれているのだろうが、少しばかり慌てすぎなのでは?ウルはもっと落ち着いた性格だったはずなのだが……


まぁ、いいか……随分と心配している様子だし、ここは大丈夫と押し通すよりも、素直に休んだ方がいいだろう。そうすればウルも安心するだろうし、この動物たちに関してもよく考えたいから、一度寝ることにしようか。


実際、ちょっと混乱している自覚はあるし、思考をスッキリさせるためにも寝た方がいいのだろうし、ここは大人しく寝るとしますかー……


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