第174話:発掘機械?
とりあえず、家屋が完成したということで屋内を歩き回ってみる。
まず玄関から入ってー……あ、やべー……つい、日本式の靴を脱ぐ前提で家を建ててしまった……うわぁぁぁぁ、やらかしたぁぁぁぁぁぁっ!あの2人はこっちの住人だし、メリルさんの屋敷でも普通に暮らしてたから、靴を脱ぐのは寝る時と水浴びの時くらいのはず……こーれ、どうしよっかなー……
とはいっても、建て直す気なんて起きないし……どうしても慣れないようなら、新しく2人用の家を建てることにしよう。
気を取り直して続きといこうか。一通り見て回ったが、土足厳禁以外は特に問題はなさそうだったな。敢えて言うなら、ガラス窓がないことくらいだろうか?
窓自体は作ってあるのだが、嵌め込むガラスがないため、押し上げるタイプの木戸になっているのだ。これだと、一応開閉はできるし空気の循環自体は問題ないのだが、採光という点では問題が残る。さすがに砂浜もないのに、ガラスの材料となる珪砂を得られるはずもなく……そのうち、どこかで採取してこないとだなー……
こうしてみると、結構足りないものが出てくるなぁ……仕方ないこととはいえ、やはり完全に自分好みの空間というのは、早々手に入るものじゃないかー。
とはいえ、不幸中の幸いというか知識と技術と工房はあるので、材料さえ見つかれば作れるんだろうけど……その名前も見た目も生息域もわからぬのでは、どうにも探しようがないという困った状況である。
ここの要塞化が終わったら、素材探しの旅にでも出るかなー……?
あー、でも……より良い要塞にするために、先に旅に出て探してきた方がいいのだろうか?後々のことを考えれば、先に探した方がいいのは明白なのだが……さすがに、要塞化を2人に任せて素材探しの旅に出るわけにもいかんしなー……
外壁と畑だけ作っておいて、ここの維持の他に、伐採や狩猟、採取などをしてもらうように頼んでおけば、あるいは……?いや、それでもダメか。当てがないから、いつまで掛かるかわからんしな。場合によっては年単位で留守にすることになるし……
んー……ん?いや、それでいいんじゃないか?
元々、ここは私が温泉に入りたかったこともあるが、それと同時に従者となったルリを同行させることなく、のんびり一人旅をするためではなかったか……?ということは、別に数年くらい素材探しの旅をしても問題なかろう。
たまに戻ってきて、報告や確認だけはするようにすれば自由に一人旅ができるし、温泉に入りたくなったら戻ってくればいいのだ。よし、それでいこう。いやぁ、建築ばっかりしてて、当初の目的を忘れかけてたわ……
また忘れないためにも、さっさと完成させてしまわねば……
残っている作業は、内装と上流への水路と温泉掘りと畑、それに外壁か。とりあえず、外壁以外は終わらせて、温泉でのんびりしよう。
そんなわけで、内装と上流への水路を完成させた。
上流の方は普通の水門も作って、引き込む水量を調節できるようにした。氾濫することはないらしいが、念のために作って設置しておいた。それと、一応こちら側にも、侵入防止用に下流の出口付近と同じように対策を講じてあるので、余計なものが入ってくることはないだろう。
水門を開き水路へ水を通す。
本流から別れた水が、水路を通って家に向かって流れていく。途中で池と露天風呂と屋内の各場所へと分岐して通過し、そこから排水路を通って川と至る。よし、どこも問題はないな。空間認識なども使い、しっかりと観察し、水漏れの心配はなさそうだと確信する。
これで残るは温泉の発掘だけとなり、そしていよいよ、こんな人外魔境まで来た主目的となる温泉掘りを開始することとなる。
最初から、この真下に源泉が存在することが判明しているため試掘する必要はないし、温泉を湧出させるためにどうすればいいかも、全土木があるので問題なし。既に資材も揃っているので、すぐにでも始めることができる。
この温泉用の資材は、はっきり言って特別製である。何故なら、工房がなければまず完成しなかった、トンデモ資材だからだ。
さすがに温泉という高温の水流が絶え間なく流れ続ける水道管を、木製で作るわけにもいかないと思ったため、工房を使って極めて硬い圧縮煉瓦で作ったのだ。なんでそんなものが作れたのかって?それは……製作可能リストに載っていたからだよ!そんなの見つけたら作ってみたくなるのが人の性というものでしょう?
そうして完成たのが、1本あたり全長20mという圧縮煉瓦製の連結式パイプで、先端部はドリルになっている。というか、パイプそれ自体が、中が空洞のドリルとなっており、目標に到達したら先端部のドリル部分を破壊することで、パイプを開通させようということなのである。
また、パイプの外側についているドリルの羽が、そのまま固定具としても機能するため、余計な手間なしでパイプを固定させることができるので、とてもありがたい。
ちなみに、この巨大ドリルをどうやって回転させているのかというと……一言で言い表すなら”自転車”である。ドリルの連結や回転させる道具には、自転車のようなものが備え付けてあり、これを漕ぐことで動力としているのだ。原理としては水車小屋の脱穀機と似たようなものである。
誰だよ、これ考えたの!全土木の建設機械の中に、なんでこんなのが混ざってんの?しかもご丁寧に、作り方までしっかりと用意されてるってどういうことなんだろうね?
まぁ、アレだ。便利だし有用だから使うけどさぁ……もしかして、現在の地球では、こういう工法が主流なのだろうか?多分、私が生きていた時代にはこんなのはなかったと思う……