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第159話:ヴェル


「お腹は満たされましたか?」


「グルゥ」


やはり、かなり理性的だな。人語を発することができないこと以外は問題なさそうだ。非常時はウルに手助けを頼むことになるかもしれんが、なるべく自力で済ませたいところだなー。


「それでは質問させていただきます。内容は、あなたのこれからについてです。私はこの森の奥地まで行く予定で移動していました。その途中であなたの窮状を知り、手助けしたわけですが、私はここに留まるわけにはいきません。ここまではよろしいですか?」


「グ、グルゥ?」


あれ?ちょっと困ってる?えーっと、なんか変な、わかり難いこと言ったか……?対話がいきなり暗礁に乗りかけてるんですが?!もっとわかりやすく、短くしろとでも?


「私は旅をしている途中で、あなたが危ないと思って助けにきました。これはいいですか?」


「グルゥ!」


これはいいのか……丁寧な言葉や長文がダメなのか?もしかして、理解力は意外と低い?だとすると、子供に言い聞かせるようにした方がいいのか?


「次に、私はまだ旅の途中なので、少ししたら別の場所へ行きます。いいですか?」


「グルゥ!」


「私が別の場所へ行ったら、もうあなたを助けてあげられません。これもいいですか?」


「グ、グルゥ……」


あ、なんかショック受けてる……やはり、身体が大きいだけの子供なのか?


「それで、あなたがこれからどうしたいのか、いくつか言うので、どれがいいか教えて欲しいのです。いいですか?」


「グルゥ」


返事もしてるし、頷いてるみたいだから、多分大丈夫だろう……


「1つ目は、ここに残り、自分だけで敵を倒しながら生き続けること」


「グルグルッ」


首を振っているし、これは嫌なんだな。まぁ、自分からあの状態になりたいとは思わんだろうなー。


「2つ目は、自分に合った住処を見つけるために、自分だけで旅をする」


「グルゥ……」


自信なさそうというか、尻込みしてる感じかな?


「3つ目は、しばらく私の旅について来て、住処になりそうな場所があったら、そこで別れる」


「グルゥッ?!」


え?いいの?って言ってるのだろうか?若干嬉しそうな気配がするのは気のせいだろうか?


「4つ目は、うちの子になって、理想の住処を見つけるまで旅をし続け、私たちとずっと一緒に暮らす」


「グル?グルゥゥ?」


んー……?最後のはあまり良くわかってない感じ?


『カヅキは、その子をテイムするつもりなのかしら?』


『この子は賢いし、大人しいから、それもいいかなって。尤も、テイムスキルは持っていないので、しばらく一緒に暮らして懐いてくれたら、眷属化できるかもしれませんし、それ待ちになると思います』


「4つ目はわかりにくかったですか?簡単に言うと、家族になって死ぬまで一緒に居ようということです」


「グル?!グルグルゥッ!」


うおっ!一番食い付いたな……やっぱり中身は子供なのかねぇ……


「あなたはどの生き方を望みますか?1つ目なら後ろに下がってください。2つ目なら右へ移動してください。3つ目なら左へ移動してください。4つ目は……頭をこの辺りに移動してください」


そう言いながら、自分の胸の前辺りを指し示す。

すると、スゥゥっと頭部を動かして、私の胸の前で止まる。まぁ、こうなる気はした。

とはいえ、先にフィアの紹介をしておくか。この先、いろいろ増えたとしても、この子が長女だからね。その辺は最初にちゃんとしておかないと、後々面倒なことになりそうだし……


「フィア、こっち来てー」


「ピィィッ」


タタタッっとこっちに駆け寄ってくると、「なぁに?」と言わんばかりに、首を傾げる。うん、かわいい。

じゃなくて、紹介せねば。


「この子が私の最初の子で、名前はフィア。私の家族になる場合は、この子がお姉ちゃんになります」


「ピィッ?!ピィピィィッ!」


「それでもいいならだけど……どうする?家族になる?」


「グル、グルゥゥ!」


返事をしながら、鼻先を押し付けてくるので、そのまま頭を撫でてあげる。

あー……そういえば、うちの子になるなら、名前も付けてやらないとだよなー……どうしよう?こんな事態は想定してなかったので、サーペント用の名前なんて考えてませんよ?


この手の定番は、鳴き声から付けるってのがあるけど、グルはさすがに変だしなぁ……あんまり変え過ぎてもアレだし、呼びやすさも重要だよなぁ。

んー……よし!ちょっと弄って”ヴェル”にするか。種族名のヴェノムと鳴き声のグルの最初と最後を繋げただけだけど、呼びやすいし、問題なかろう。


「それじゃぁ、あなたの名前は今から”ヴェル”だよ」


「グル?グルゥゥゥッ!!」


「ピィ!ピィィピィィ!」


「はいはい、2人とも嬉しいのはわかったから、もう少し静かにしてねー」


『ウル。すみませんが、ヴェルにも念話ができるようにしてもらえますか?』


『ええ、構いません。はい、繋げましたよ。それにしても、いきなり引き取るとは思い切りましたね』


『なんというか、放っておけなかったので……中身が子供っぽいところもありましたし、もっと自立した性格だったら、また結果は違ったんでしょうけど……』


さて、ヴェルにも念話の使い方を教えなければな……


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