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第144話:会談開始


そんなわけで、マイアさんを連れてメリルさんの屋敷へと戻る。

念のため、門番に頼んでマイアさんを屋敷に入れてもいいか、確認を取ってもらった。その待ち時間を使って、進化したフィアの紹介も済ませておいた。たった数日でここまで姿が変わるとは思ってなかったのか、かなり驚かれた。


その後、迎えに来たメイドさんに連れられて、メリルさんのいる部屋へ案内される。部屋へ入る時にフェルシアさんを呼んでもらうようにお願いしておいた。


「ただいま戻りました。それと提案を聞いていただきありがとうございます。」


「おかえりなさい、カヅキ。待っていましたよ。マイアも良く来てくれました。そちらに掛けてください」


「本日は突然の来訪にも関わらず、快く受け入れていただき、誠にありがとうございます」


マイアさんは緊張こそしているが、その動きには淀みがない。思い返してみれば、王女とも会話できていたのだから、これくらいはできて当然なのか。それにしてはここに移動すると言った時、かなりうろたえていたようだが……あれは何だったのだろう?


「まずは、どうしてこのような3人での会談のようにしたのかを説明しますね」


「ええ、頼みます」


「はい、お願いします」


「事の発端は、旅の予行練習中に疑問を持ったことです。何に疑問を持ったのかといえば、図書館で可能な限りこの街周辺の情報を調べたはずなのに、全く知らない素材を見つけたことに対してです」


僅かだがメリルさんの気配が変わる。さすが、常に情報収集を怠らないだけあって、この手の話題には敏感である。


「続けてください」


「これが、ただ1種1個だけなら、たまたまどこかから飛ばされてきた別地域の植物の種が芽吹いただけとか、偶然見つけた突然変異の異常個体という可能性もありますが、複数の地域でいくつもの種類の資料になかった素材が、それも複数見つかったのなら話は別です。これは、私が図書館で資料を見つけられなかっただけなのか、それとも図書館に資料が用意されていなかっただけなのか、それとも誰一人としてこれらの素材に関する知識を持っていないのか、それを知りたくて図書館へ行きました」


ここまで言ってからマイアさんに視線を送る。マイアさんもそれに気付き、言葉を継いでくれる。


「館内の応接室にてこのような質問をされたため、他所の地域ならばいざ知らず、この街周辺の素材であれば全て網羅しているとお答えしました。また、いくらなんでも複数の未知の素材があるとすれば、過去から現在までの、この街周辺で活動していた人数を考えて、それはあり得ないともお答えしました」


「この答えをいただくまでに、各街の情報は各街で管理されており、特に価値のある情報は秘匿、独占されている可能性が極めて高く、公開されることはほとんどないことも教えていただきました。これらの答えから、私が見つけた見知らぬ素材が、もしも他の街で秘匿され、一部の人間たちによって高値で取引されていた場合、かなり面倒なことになりそうだと考えたために、ここに移動することをマイアさんに提案したのです」


「なるほど……そういうことでしたか。確かにその先を図書館で話せば、マイアから報告が上がってしまいますから、ここに連れて来たのは正解でしょう。特にカヅキが”どうやって見知らぬ素材を見つけたのか”を知られたら、本当に面倒なことになりそうですからね」


やはり、メリルさんは気付いたかー……もうこの時点で、その方法まで察していそう。ついでに面倒の内容も……マイアさんもいろいろ考えてるみたいだが、考え過ぎて候補が絞れていないような感じを受ける。


「ええ、そういうわけで他にもいろいろと話す前に、こちらに移動してきたというわけです」


「賢明ですね。この会談が終わった後も、しばらくはこの件に関する情報は、全て秘匿しておく必要があるでしょう」


ここで、扉がノックされる。待ち人が来たかな?

メリルさんが入室許可を出し、予想通りフェルシアさんが入ってくる。


「カヅキ様がお呼びとのことで、参上致しました」


2人が私の方を見て来たので、頷いて答える。


「お呼び立てして申し訳ありません。この先の話で、フェルシアさんの知識を貸していただきたいのです」


「この婆の知識でよろしければ、喜んでお貸し致しましょう」


「ありがとうございます。もう少しだけお待ちください」


「承知致しました」


私とフェルシアさんのやり取りを、目を見開き信じられないといった感じで見ているマイアさん。まぁ、言いたいことはわかる。こんな小僧にエルフが畏まっているのだから、さぞ我が目を疑ったことだろう。申し訳ないが、この先の会話で耳も疑うことになるかもしれないが、我慢していただきたい。


「すみません。少し話が逸れました。それで、私が資料に載っていない素材を、どうして素材として使えるのかを知ることができたのかということですが……マイアさんは、私の個人情報を義務だからと報告しますか?」


「それは……さすがに報告するつもりはありませんが、察しのいい方々には、かなりの確率でバレると思っていただいた方がよろしいかと……」


マイアさんが、メリルさんを気にしながらもそう言ってくれる。そこまで譲歩してもらえるなら十分だろう。どうせ、推測だけでは届かないのだから。


「それで十分です。そういった詮索好きな方々は、既に過去に渡した情報からも、いろいろ推測されているのでしょう?私とその周囲に影響を及ぼさないのであれば、それほど気にすることはないでしょう。問題があるとすれば、その推測から得た情報によって、私を有用な手駒として利用しようとする輩でしょうか?」


「させませんよ。絶対に。例え、相手が誰であろうと、どんな理由があろうと、カヅキを利用することなど許しません。私利私欲のために、そのようなことを目論む者たちがいるというのであれば、関係者全員、草の根を掻き分けてでも探し出し、生まれたことを後悔させてあげましょう。カヅキを利用することで国を救おうというのであれば、その前に国そのものを滅ぼしてしまいましょう。カヅキを煩わせるものに容赦など必要ありません。何であろうと私が完全に排除しますから、安心してください」


うん……相変わらずの過保護っぷりですね。あと、若干怒気が溢れてきてるので抑えてください。他の2人が萎縮してますから。特にマイアさんは、初見に加えて非戦闘員なためか、身を固くして微かに震えてしまっている。フェルシアさんは、既にもっと顕わになったものを体験しているせいか、大分マシではあるが、あの時のことを思い出しているのか、若干顔色が悪くなっているのが見ていてつらい。


アレを鎮めるためにも、早く話を進ませねば……


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