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第14話:お詫びの内容がすげぇ・・・


「皆様、自己紹介も一通り終わったようですし、一度口を閉じていただけますか?」


ここまで黙っていたマイアさんがそう言うと、みんな一斉に黙り込んだ。

声に普段とは大分違うものが混じってたから、まぁ、こうなるよね。

みんなの視線がマイアさんに向いた隙に動こうかと思ったが、おそらく見抜かれていたのだろう、盗賊ギルドマスターがスルリと進行方向に移動して、こちらが動く前に抑えられた…こういう時は余計な仕事しなくていいんですよ?てかするなよ!頼むから!


「さて皆様、既にお分かりかと思いますが、依然としてカヅキさんが警戒を解いておられません。これは彼にとっての危険人物が周囲に存在すると言う事です。これに関してエミーリア様はどう思われますでしょうか?」


「王家には『恩には恩を、信には信を』と言う教えがあります。これに照らし合わせるならば、昨日、疲弊する民に救いの手を差し伸べて下さったカヅキ様はまさに恩人と呼ぶべきお方です。その恩人に対し、恩を仇で返す様な事があってはなりません。ましてや危害を加えようなど以ての外です。故に些か急ではありますが、今ここでカヅキ様に対する国としての方針を決定します」


国としての方針?いくらなんでも事が大きくなり過ぎでは?恩人とは言って貰えているが、それで国が全力で保護するとかになったら相当窮屈な事になるのでは?

しかも相手が王女様なせいか、誰も口を挟まないし…


「まずカヅキ様に対して直接・間接を問わず積極的に関わらない事、これには各施設・ギルド関係者に加え王族・貴族・大商人も例外なく含まれる事とします。また監視や警護等もカヅキ様が望まぬ限り決してしない事、またカヅキ様より支援要請があった場合は可能な限り答える事、これらを遵守する事をエミーリア・フォン・エルメキアの名に於いて命じます。よろしいですね」


ゆっくりと周囲を見渡しながらそう言うと


『ご下命、確かに拝命いたしました!』


私以外の全員が一斉に跪き返事をする。一人だけ警戒態勢で立ってるとめっちゃ浮くんですけど…こういう時どうすればいいの?


「ではこれ以後、カヅキ様に危機感を抱かせたり迷惑を掛けたりしないように。みな下がりなさい」


『承知しました。これにて失礼いたします。』


そう言うと、それまで私から目を離さなかった人達がほぼ全員館外へ出ていく。

そのせいか危険察知もなりを潜めてくれたんだが、一番扱いに困る王女様がしっかり残っていらっしゃる…あ、でも、お礼は言っておかないと。


「ありがとうございます。おかげで危険察知も収まったようです。ですが、あのような命令を勝手に発令して良かったのですか?」


いくら王女様でもさすがに独断専行が過ぎるのでは?


「問題ありません。元々カヅキ様に昨日のお礼をするために来たのですから。それにいくら興味があるからと言っても、相手に危機感を与えるような事をしたのですから、それに対する戒めは必要かと。先程の命令は、わたくしからのお詫びと思っていただければと思います」


お詫びの内容がすげぇ…さすが王族、一般人とはスケールが違う。

でもまぁ、今後煩わしい事が減ると言うのであればとても助かる!


「わかりました。ありがたくお受けします」


さて、想定外の面倒事があった割には、未だに当初の予定が何も済んでないという悲しい事実が……さっさと済ませてしまいたいけど、先にちょっと休みたい。


「マイアさん、当初の予定を済ませてしまいたいところですが、資料を読む前に少し休んでもいいでしょうか?」


「はい、もちろんです。では応接室へご案内いたします」


そう言って先を行くマイアさんに付いて行くのだが、どういう訳か私の後ろから追従してくる足音が聞こえる…

おまけに、危機感ではないが嫌な予感がしっかり感じられるのはどういうことか。


「ではこちらに座って楽にしてて下さい。資料と飲み物をお持ちしますので、少々お待ちを」


言われるままにソファに腰を掛けて目を閉じると、思わず深い溜息が出る。

まぁ、あれだけ長時間緊張状態を強いられれば、いかに耐性持ちであろうと気疲れくらいはするだろうさ。などと考えているとソファの空いてる部分に誰かが座る。


………?マイアさんは資料と飲み物を取りに行ったばかりで戻って来た気配はない。なのに隣に誰かが座っており、それが可能な人物と言うと…ここに来るまで私の後ろから追従していた誰かしか居ないわけで……

あ~、目を開きたくねぇ……隣を見てしまったら嫌な予感が現実になってしまう気がする。それも高確率で!


「お待たせいたしました。どうぞこちらを」


その言葉の後に続いて飲み物が置かれたであろう音が3回、そして…


「ありがとう」


と、真横から先程も聞いた女性の声がする。はい確定。くっそ!なんでこうなってんの?王女が見ず知らずの男性の隣に自ら座るっておかしくね?!

諦めて目を開けるかぁ…可能な限り隣に視線を向けないように気を付けて……


「ありがとうございます。いただきます」


そう言って飲み物を一口含むと、その温かで柔らかな味とふわりとした香りに心が落ち着ていくのがわかる。

再び目を閉じて一息つくともう一口…


「おいしいです。おかげで少し落ち着きました」


「そうですか、それは良かった。それとこちらが資料になります」


紅茶を飲みながら(この世界にも紅茶ってあるんだなぁ、茶葉の種類とかさっぱりだけど)差し出された資料に目を向けて、ふと思う。

昨日は気にしてなかったけど、これって結構ヤバい資料なのでは?今更だけど。

とは言え、こっちも似た様な情報を渡すからお互い様だな。すまんな、一般プレイヤー。私は君らの情報を売って、この世界の情報を手に入れさせて貰う!


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