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第139話:ワールドアナウンス


「あの……もう大丈夫なので、そろそろ離していただいてもよろしいでしょうか?」


『わかりました』


ふぅ……何とか解放してもらえたようだ。いくら精霊でも、女性に抱きしめられるのは落ち着かない。見た目は子供っぽくても、中身はいい年したおっさんなのだから……


「すみません。少々、精神的に不安定なようでして……」


『いえ、こちらこそ無闇に聞いて良いことではなかったようです。知らなかったとはいえ、あなたの”傷”に触れてしまいました』


「それに関しましては、私自身にもわからないので致し方無いでしょう。時折、あのように精神が掻き乱されることがあるので、あまりお気になさらずに」


本当に厄介な精神状態だ。特に今回のような理由のわからないざわつきは、対処のしようがなくて困る……失った記憶に関するものだとは思うが、一体何に反応しているのやら……


『……どうやら、本当に大丈夫そうですね。それから、許してくれてありがとう。あなたはとても優しい人間のようですね』


「そんなことはありません。あなたは何もおかしなことは言っていません。こちらが勝手に動揺しただけなのですから。もっとも、その原因は自分にもわからないので、どうにも対処に困る時がありまして……無用の気遣いをさせてしまい、申し訳ありません」


『…………あなたは……いえ、そういうことであれば、あなたに加護を授けましょう。そうすれば、今よりも精神的に安定するはずです』


はい……?加護を授ける?そういうことは、余程上位の存在でなければ無理なのでは……?


「えっと……そういった加護とかは、おいそれと与えられるものではないと思うのですが……」


『問題ありません。あなたはとても礼儀正しく、心優しい人間ですから。それに、これは先程のお詫びも兼ねていますので、遠慮なく受け取ってください。それから、まだお名前を伺っていませんでした。よければ教えていただけますか?』


「え?ええ、わかりました……私の名はカヅキ、渡来人です」


『カヅキ、ですね。そう……あなたは異界より世界を渡ってきた方だったのですね。どこか、他の人間と違うと感じたのはそのためでしょうか?』


「私は少し訳ありで、特殊な人種になってしまいましたから、そのせいかもしれません」


全人類で最初にして唯一の超越種になっちゃったからね……ステータスも異常な数値になってるだろうから、なおさらだろうなー。


『そうでしたか。あなたは特殊な生を歩みながらも、折れず曲がらず腐ることもなく、命を慈しむ優しさを失わずに真っ直ぐに育ったのですね。その強さと優しさに敬意を表し、我、水の上位精霊たるウルの名に於いて、渡来人カヅキに加護を与えましょう』


その言葉と共に、私の身体が精霊と似た淡い光に包まれたかと思うと、それはすぐに収まった。



≪システムメッセージ≫

<水の上位精霊ウル より 水の加護 を与えられました>

<称号:上位精霊に認められし者 を獲得しました>

<称号:上位精霊ウルのお気に入り を獲得しました>



ぬおっ?!加護だけじゃないんかいっ!しかも何か称号まで増えてるし!それも同時に2つも獲得してるぅぅぅぅ!



≪ワールドアナウンス:プレイヤーに精霊の加護が初めて授与されました≫



ファァッ?!ワールドアナウンスゥゥゥゥゥッ?!

ま、待て。待った!待ってくれぇぇぇぇ!!やっぱなし!加護をもらう前まで戻して!やり直しを要求します!!

あぁぁぁぁぁ……女神がめっちゃニコニコしながら、それはならぬと首を振っているイメージがぁぁぁぁ……orz


加護を授かるのはいい。称号も受け入れよう。だがワールドアナウンス、てめぇはダメだ!出てくるな!戻れ!私を有名にしようとするんじゃなぁぁぁぁぁいっ!!

プレイヤー名が表示されてないことだけは不幸中の幸いだった。ちゃんと非表示になるように設定しておいて助かった……非表示に設定されてることを何度も確認して、しっかりロックもしておいた甲斐があった。危うく世界中に、文字通り名前が轟くところだった……あっぶねー……

ああ、そうだ。加護をいただいたわけだし、お礼は言っておかないとだな。


「加護を授けていただき、ありがとうございます」


『いえ、こちらがしたくてしたことなので、お礼は不要ですよ。それと、また少し困ったような顔をされていたようですが、ご迷惑でしたでしょうか?』


「そういうわけではありません。ただ、どうやら渡来人で加護を授かったのは、私が初めてだったようで、他の渡来人たちにそのことが伝わってしまったようでして……」


『ああ、確か渡来人たちには天啓が齎されることがあるのでしたね。それでカヅキのことが知れ渡ってしまったということでしょうか?』


「私個人の名前は伏せられていたのですが、加護を授かった者が現れたことは知らされました。もしかしたら、今後は渡来人たちが加護を欲して、各地を徘徊するかもしれません。場合によっては精霊と接触を図るために、何かとんでもないことをする者も現れるかもしれません……」


もう既に、かなりのプレイヤーが淘汰されたはずではあるが、まだ潜在的にやらかす可能性がある者たちが半数以上いるのだ。魔法や精霊に憧れを抱く者たちが暴走しないとも限らない。

精霊の居そうな場所を、手当たり次第に荒らしたりしなければいいが……


『それを危惧してくれたのですね。どうやら心配させてしまったようですが、何も問題はありません。自然を大切にしない者の前に、我々が姿を現すことはありませんから。仮に我々が姿を見せぬことに苛立ち自然破壊をするのであれば、こちらも容赦なくその怒りを示しますので、あなたが気にすることは何もありません』


「わかりました。そういったことをしそうな者たちはかなり減ったはずですが、まだそれなりにいるかもしれませんので、念のため、他の精霊の方々にもお伝えいただければと思います」


『ええ、わかりました。確かに伝えましょう。それにしても……あなたは同じ渡来人よりも我々精霊や自然の心配をするのですね?』


「私は……どちらかと言えば人間が苦手なので……あまり関わり合いにならないようにしていますから。人の来ない自然の中の方が居心地がいいのですよ」


今は早く温泉要塞を作って癒されたい……私が遥か遠き理想郷アヴァロンに辿り着くのは、果たしていつになるのやら……


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