第130話:北側の森
南北方向に長く進み、空間認識の幅の分だけ東に移動するように蛇行していたおかげで気付けたのだが、北側の森は北へ進むほど暗くなってくるようだ。
木々の間隔にはそれほど変化はないのだが、上部の葉の茂り方が変わってくるのだ。枝が多いものや、葉が大きいものなどいろいろあるが、北へ行くほど日の光が入らなくなっていくようだ。
蛇行中の最北端付近だと、既に直射日光はほとんど差し込んでおらず、枝や葉に当たって何度も反射した末に届いた弱い光になってしまっている。この分だとあと数kmも進んだら、完全に光の届かない真っ暗闇になるのではなかろうか?
もしかして、これが冒険者が忌避している理由なのか?
いや、それならダンジョンや洞窟も忌避することになってしまうだろうし……ランタンやライトの魔法もあるのだ。ただ暗いだけではそうはならんだろう。
こういう時は冒険者ギルドに行けば情報をもらえそうだけど、行きたくないので自力で条件を見つけるしかないな……
街に近い南側は、北西の森とこれといった変化はなし。やはり北側の薄暗くなってる辺りから奥に原因があると見ていいな。
多分、私が行ったくらいの場所は、まだ変化が起こらない範囲なのだろう。奥に入る前に、その手前までのマップ埋めをしておいた方がいいかな?一定範囲を埋め終わったら、今度は東西のラインで1列ずつ奥に向かうとしよう。それで変化の起こる領域を確定させた後で、いつでも逃げられるようにしてから調査開始としますかねー。
マップ埋めをしつつ、徐々に北東側へ向かっているわけだが、街から見て北北東に差し掛かる辺りで採取物に変化が現れた。
どうやら、その見慣れない赤黒い実はイチゴらしい。小粒でやや平べったい。
味は向こうのイチゴよりも甘味は少ないが、その甘酸っぱさは確かにイチゴのものだった。そのまま食べてもいいけど、どちらかと言えばジャムにした方がいい気がする。ここは群生地のようなので、マップに位置を書き込んでから、全体の7割ほどを採取した。
多分、これもリポップするとは思うが、念のために全部取るのは控えておく。リポップしなかった時の後悔が凄そうだからね……
さらにその先では、樹に巻き付いてる蔓から細長い何かが多数ぶら下がっているのが見えたので、詳細鑑定してみたらししとうだった。何となく、見た目が唐辛子やししとうに似てるなーって思ったら、案の定そうだったという。
これで、またひとつ向こうの食材が増えたな。こっちのししとうにも、やたら辛いやつが混じっていたりするのだろうか……?
パパラパッパパー♪
おお?
移動しながら狩りをしていたら、レベルアップした時の効果音が流れて来た。
さすが必要経験値32倍、これだけ狩ってようやくか。先は長いなー……
≪システムメッセージ≫
レベルアップしました。
筋力が 20 上昇しました。
耐久が 20 上昇しました。
知性が 20 上昇しました。
精神が 20 上昇しました。
器用が 20 上昇しました。
敏捷が 20 上昇しました。
幸運が 20 上昇しました。
ステータスポイントを 20 獲得しました。
体力が 60 上昇しました。
魔力が 60 上昇しました。
あー……やっぱりかぁ……レベルアップ時のステータス上昇値は固定なのね。前回、数値があまりにきっちり揃っていたから、そうじゃないかと思ったんだ。
その時にも思ったんだけど、このまま上がり続けた場合、レベル50手前で各ステータスが4桁に突入するんだけど……果たして4桁目はあるのか?多分あるんだろうな……人間ではない超越種も結構いるって言ってたし、そっちは私よりもさらにえげつないステータスしていそうだしねー……
まだ月光花が現れそうな水場は見つけられてないけど、仕方ないか……
レベルも上がったし、今日はここまでにしておくかな?
結局一日中マップ埋めしてたなー……まぁ、戦闘も採取もしながらだったから進みは遅かったけど、その分いろいろと収穫もあったし、満足満足。
よし、それじゃあテントを出して……んー……やっぱやめた。簡易工房を使ってみよう。工房の方なら、確かキッチンも付いていたはずだから、イチゴを使ってジャムを作ろう!
なるべく間隔の狭い樹と樹の間の地面に置いて……ハッチを開ける。
開かない……え?どうなってんの?ここを開けて中の梯子とかで降りるのかと思っていたんだが……ああ、そっか。これはアレだな。テントの内側と同じように入り口で別空間に飛ばされる奴。
ということは……このままハッチの上に乗ればいいのかな?
よし!正解!ちゃんと中に入れた。なるほどね、これなら置いてすぐ入れるし便利だわ。
ふむ……こっちは作業場がメインだからか、土足仕様なのね。靴を脱ぐのは、仮眠用ベッドで寝る時くらいかな?
入ってすぐは、通常の生産施設かな?正面奥に両開きの扉っぽいのがあるから、あそこがメインとなる大型工房かな?それで、ここから左側に見える扉は……なるほど、ここが生活用の部屋か。テーブルと椅子、キッチンに仮眠用……ベッド?
仮眠用、なんだよな……?明らかにシングルじゃない大きいサイズなんですが、なんでこれにしたし……
うおっ!めっちゃふかふかやん……これは寝るっていうより、意識が落ちるやつじゃね?横になってひと息ついた時点でもう寝てるっていうアレ……
なんでこんなのが、作業場の休憩室みたいなところに置いてあるんだよ……
まぁいいや。とりあえず、当初の予定だったイチゴジャムを作ろう。
キッチンは……システムキッチンみたいなやつか。グリル付きコンロに、その下は……石窯オーブン?作業台を挟んで向こう側にシンクがあって……水も出るんかいっ!おまけに電子レンジにトースターまで……ほんと、どうなってんだ、ここ……
…………よし、ジャム作るか!