第127話:北西の森
どうしよっかなー……?
これ、下手すると地獄の窯の蓋の可能性もあるんだよなー……レアイベとかワールドアナウンスのトリガー引くとか、絶対やだぞ?!
何か、嫌な予感がするから、念のためシステムアナウンス関連を全部匿名設定になっているか確認しよう。万が一にも、私の名前が出ないようにしなければ!
よし!ちゃんとなってた。可能な限り、トリガーを引かないように気を付けるつもりだが、何事にも絶対はないからな。万が一の場合に備えておくのは当然だ。
さて、ほんとにどうしようか……このエリアにいるのは、ちょっと怖いな。主にトリガー的な意味で……
とりあえず、ここでは強い部類に入るフォレストディアを一撃で倒せたし、北上して街の北西部に入った方がいいかな?そっちもモブが少なかったら、もうこのゲームでは、この密度がデフォってことにしよう。
そうと決まれば、さっさと行くか。とはいえ、道中の素材がもったいないので、採取だけはしながらだけど。
というわけで、西の町への街道を越えて北西の森へ突入しました。
こちらも街道付近はかなり低密度だったけど、1kmほど入った辺りから徐々に密度が上がってきているので、やはり南西の森は何かありそうな気がする。
ここはひとつ、何も知らない第2陣のプレイヤーが、トリガー引いてくれるのを祈りましょう。私は嫌です。そういうのは、目立ちたがり屋か主人公属性持ちがやればいいのです。まったり勢な私とは縁がないのです。あっても切るのです!
それはさておき、こっちはそれなりに敵がいるので、射撃練習が捗っている。
特にフォレストウルフは、基本的に3~5体で群れているので、複数同時に倒す練習ができてとても助かります。ちょっとバラけているところも練習に丁度良かったりする。
フォレストボアはただのでかい的でした。風下にいればまず気付かれないと思っていたけど、隠密に消臭スキルも統合されてたのを思い出して、風向き関係なかったな……と自分の間抜けさに気付いて、ちょっと凹んだのは内緒だ……
というか、どうやらこの森にいるどの敵も、そもそも私を知覚できていないっぽい。隠密はそこまでレベル上がってないんだけどなー……まぁ、それに気付いてからは立体機動、瞬歩、空歩の練習も加えることにしたので、文字通り縦横無尽に動き回りながら弓の練習をしていた。死体を回収しながら、たまに蹴りの練習もする。
もちろん、採取も継続中。こっちにはきのこも結構生えていて、収穫物がさらに増えた。詳細鑑定のおかげで毒の有無もわかるから、全部取って問題なし。たまに果実も収穫できるし、ここは素材庫として優秀なのではなかろうか?
一部を除いて初級素材ばかりだけど、この近辺では取れないことになっているものが、ちらほら混じってるからね……
取れた場所はしっかり書き込んであるし、リポップ間隔は不明だけど、またそのうち取れるようになるだろうから、今度マールさんのところにでも持って行ってみよう。なお、師匠たちには見せないようです。何故なら嫌な予感がするからだよ。こういう時は知らせない方がいいと相場が決まっているのだ。どうせ悪目立ちするものしか作らないんだから……
うん?今、範囲に入ってきたのは……蜘蛛さんだー!うおぉぉぉ、やっと出たぁぁぁ!革素材はいっぱいあるけど、布素材が全然手に入らなかったから、これは嬉しい!絶対に逃がさんぞ。我は貴様の糸を欲しておるのじゃ。大人しくその糸を差し出すのじゃ!
いかんいかん、つい新素材に浮かれてしまった。糸と布を自給自足できるようになると考えたら、つい……
やり込み勢の大半はアイテムコレクターでもあるから、どうしても新素材を前にすると倒したくなるんだよね……不思議と人が持ってるのは欲しくならないが、自力で取りに行きたくはなるんだよなぁ……
新しい敵のドロップってワクワクするよね?でも、ドロップよりも倒す方に比重が傾く敵は滅多にいないんだよ……
そんなわけで、蜘蛛はもちろん、ウルフもボアもディアもスネークもうさぎも倒しまくった。平原より少ないとはいえ、結構なペースで倒しているために解体してる余裕がないので、死体は全部インベントリにポイポイ投げ入れている。
レアドロップもいくつかあるっぽいが、確認は後回しである。そんなものは寝る前にすればいいのだ。
あと出会っていない森の生き物と言えば、蜂と熊だろうか?それ以外だと樹木系と虫系かな?どっちもいてもいいと思うんだが、まだ見たことないなー……。生息域が違うのかもしれん。街の北側の森なら生息しているのだろうか?あ、他にも蝙蝠やフクロウなんかもいるかもしれんな。うむ、会うのが楽しみだ。
日が暮れると、やはりというか、こういったゲームではお馴染みの出現モブの変更が入るようだ。ウルフの群れは5~10体前後に増え、蝙蝠も出てくるようになったが、その分ボアやディア、うさぎ辺りはほとんど出なくなった。昼間のまだ余裕があるうちに罠の練習もしていたため、その流れで地上は乱獲状態になっている。
蝙蝠も私を見つけることはできないのか、狩り放題ではあったのだが……ふと思い付いた、割と広範囲な罠を仕掛けてみた。
どんな罠かと言えば、所謂”かすみ網”である。向こうでは禁止されている罠ではあるが、今ここには私とモンスターしかいない。ついでにいうと、罠を仕掛けっぱなしにするのではなく、足止めして一度に纏めて仕留める間だけ使って、すぐに回収するので誰にもバレないし、余計な被害も出さないようにしている。
罠用の、細くて見えにくく強度のある糸で作ったかすみ網の前には、蝙蝠たちの集団による物量作戦も意味をなさず、一網打尽にされるだけだった。うん。さすが禁止されるだけのことはあるって感じの効果を発揮してくれました……
多分、余程のことがない限り、もう使わないだろうなー……この世界だと魔術もあるしね。