表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/220

第126話:静かすぎる森


そういえば……平原の素材、薬草はまだ極少数ではあるものの、生えていると知られていたが、それ以外の薬草類は街の誰もが生えていないと思っていた。専門家である薬師のマールさんでさえ、あり得ないと言っていたくらいだ。

つまり、高位の鑑定能力を持つ者が、この近辺、いや、低級の狩場に寄り付かず調べもしないから、誰もそのことに気付いていないだけなのでは?


仮に用事があって来たとしても、そもそも始めから”ない”と決めつけているから、周囲を見ようともしていない。ましてや、鑑定で調べることなど思いつきもしないのだろう。そのために、こういった情報の”抜け”が発生しているのではなかろうか?


うーむ……このこと教えたら、また面倒なことになるよなー……

それこそ、植物に関して何でも知ってると豪語してる権威とかいたら、顔真っ赤にして抗議してきそう……下手すると逆恨みとかされかねんし……黙っていた方がいいかー。

いつか誰かが、私と同様にたまたま発見するかもしれんし、現生人類にはそれまで待っててもらおう。

大丈夫、上等級の品質Bなら、そこまで驚異的な効果もないだろうし、私が今教えなかったとしても、どうということにはならないだろう。というか、そういうことにしておこう。小さな親切、大きなお世話という言葉もあるし、余計なことはしないでおこう。よし!


というわけで、これは普通の素材。ただ単に、面倒事が起きる可能性が高すぎるだけの普通の素材。なので、インベントリに入れておけば問題ない。なに、こんなものは他にもいっぱい持ってるじゃないか。今更、多少増えたところで何も変わらん。気にしない気にしない。

苔は普通の素材であることが判明したので、探索を再開しますかねー……




第一村人ならぬ、第一標的を発見しました。

それにしても……初遭遇は、いきなり鹿ですか……君、レアモブじゃなかったっけ?なんで、通常モブを押しのけて最初に現れるのか、コレガワカラナイ。

まぁいいや。私の範囲内に入ったのが運の尽き。森での試射に使わせてもらうね!


10時方向、距離410m……風下は、向こうじゃないな、よし。当然直線は無理だし、上も邪魔があるからもっと近づかないとだな。空間認識で範囲内の木立ちの状況を把握、2回以上曲げずに矢を通せるルートをシミュレート……移動しているが好都合だ……あった。あとは草を食むために頭を下げた瞬間を狙って…………射る!


水平より少し上向きに放たれた矢は、緩やかな曲線を描きつつ、狙い過たず鹿の首を射貫く。首を射貫かれた鹿は、その一撃だけで倒れ絶命する。



≪システムメッセージ≫

ディアルエッジ を獲得しました。



うん?何か出た?とりあえず、死体回収に行くか。

死体を回収してから、周囲にモブの反応がないのを確認してから、さっきのドロップと思われるものを確認する。



--------------------

ディアルエッジ


分類:双短剣  等級:上等級  品質:C  耐久:110


フォレストディアのレアドロップ。

鹿の角を模した、枝分かれした刃を持つ双短剣。


効果:筋力+13 敏捷+5

   悪路走破(微)


--------------------



おい、待て。なんだこの名前……ダジャレじゃねーかっ!誰だよ、これ作った奴!

初ドロップがこれとか、酷すぎねぇ?レアドロップだけど、レアドロップだけどさぁ……もうちょっと、こう……素直に喜べるものにして欲しかった……


はぁぁぁ……まぁ、文句言っても仕方ないかぁー。出ただけマシだと思うことにしよう。

性能的にはどうなんだろうな、これ?普通の装備を知らんから、強いのか弱いのかすらわからんな……序盤で(微)とはいえ、追加効果があるのは凄いのかもしれんが、どれぐらいの価値があるんだろうな?

あっ!そういえば、いろいろあって結局相場調べるの忘れてた……まぁなんだ、もういいかー。もう人から何か買うことも、そうそうないだろうし……


さて、気を取り直して探索を再開しますか。

それにしても……なんでこんなにモブが少ないんだろ?半径430mって結構広いと思うんだけど、VRMMORPGってこれくらいが普通なんだろうか?ソロでこれなら、パーティだと経験値ほとんど入らないんじゃ?

もしかして……西の町への民族大移動があったのって、このモブの少なさのせいか……?確かに、このモブ密度じゃぁなぁ……多少無理してでも移動するよねー。


でも、なんでここまで低密度にしたんだ?MMOの開始直後なら、最低でも常時千人はいるはず。しかも、その大半が戦闘に行くのはわかりきってるのに、何故こんな配置にした?確かにリアル寄りにするなら、こんな感じになるのかもしれんが、これはゲームだぞ?

平原のうさぎはかなりの数が配置されていた。あれくらい居れば、渋滞は起きるだろうが、すぐに狩場卒業者も出てきて徐々に解消されていくだろうが……次の狩場である西の森がこれでは、渋滞ではすまんぞ?

私の現在位置付近だけがこうなっている可能性もあるにはあるが、それにしたって森自体が静かすぎると思う。


意図してこういう配置にしてある場合、当然そうするべき理由があるはず。

最序盤、最弱のノンアクエリアの次を、モブが極めて少ない森にする理由とはなんだ?ノンアクエリアをさっさと卒業した連中が望むのは、先へ先へと進むこと。モブを倒して経験値を稼いでレベルアップすること。そいつらがそんな過疎エリアに行けばどうなるか。当然、得物の奪い合いになるだろう。次に狩場の移動。例え適性レベルじゃなくても、パーティを組めば多少はごり押しできる。最初に西の町へ行ったのは、おそらくそんな連中だったのではないだろうか?


そして、西の町周辺は敵の強さはほぼ同じなのに、数が多いことが判明し、大移動が発生したといったところだろう。これが全て運営のシナリオ通りだったとしたら?

平原には薬草類もないとされており、うさぎもすぐに狩る価値はなくなる。その次のエリアもモブの数が少なすぎて行く価値がないとしたら、普通の感性を持っていれば西の町へ移動するだろう。そして、移動した者たちは、行く価値のないフィールドに戻ることはない。


そこまで読んでいた上で、この配置にしたというのであれば……おそらくだが、運営はこの過疎エリアに何かを仕込んでいるはずだ。さっさと人払いを済ませたい、見つけられたくない何かを。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ