第125話:新素材?
ご飯も食べたし、テントも片づけた。
それじゃ、森に行って探索を開始しますかねー。
もう少しで森に入る。この世界に来てから踏み入る、初めてのアクティブエリア。死を齎す弱肉強食の戦場。
現状で、既に過剰戦力なのはわかっているのだが、それでもやはり、実際に生身で戦うとなると緊張もしようというものだ。いくら死に戻りできるといっても、やはり傷付きたくないと思うのは仕方ないことだろう。故にここから先は知覚系と隠密系を全開、それに加えて超集中と探索と採取と詳細鑑定と地中精査も使いつつ、マップ埋めをしていこう。
今までは街中にいるだけだったから、マップを見る必要もなかったけど、さすがに外は広域マップが必要になる。特にこのゲームだと、マップに直接書き込みができるようなので、素材の位置や注意点などの有用な情報を書き込んでおくと、特定の素材が必要になった時とかに思い出せずに苦労する、なんてこともなくなるので、こまめに書き込んでいこうと思う。
ただし、このマップは初期状態だと白地図なので、自分で歩き回らないと詳細が表示されない仕様となっているのだ。地図を手に入れることが出来れば、その部分だけは地図が上書きされるが、それも地図をそのまま写した状態なので、大まかにはわかるが余り正確ではない。
しかし、直接自分でその場に行った場合は、自分が知った情報に上書きされるため、歩けば歩くほど正確なマップが完成するようになっている。つまり運営は、世界中隈なく歩き回れといいたいのかもしれない。でも、完成させる気ないよね?これ。
そして、この上書きできる範囲は、どうやら自分の知覚範囲に影響を受けるらしい。
何故なら、今現在のマップが私自身を中心とした円を動かしているように、街からの移動したルートだけがはっきりと表示されているからだ。
つまり、詳細なマップを完成させたければ、自分という細いペンでマップを全て塗り潰せというわけだ……
私は空間認識があるからまだマシだけど、一般プレイヤーが森のマップ埋めしようとしたら、とんでもない手間暇がかかることになる。だってさぁ……これ多分、視界の利かない場所だと、自分の周囲1~2mくらいしか更新されない気がするよ?
何故かというと、私の移動経路の幅が、きっちり860mなんだもの。これって私の空間認識の半径430mの倍、つまり直径に相当するんだよね……
どこまでを認識範囲としているのかはわからないから、もしかしたら一般プレイヤーは、自分を中心に半径5mとか10mって決まっているのかもしれないけど、下手すると自分が完全に把握できる手の届く範囲、あるいは攻撃可能な間合いとかになっているかもしれない。
そうなると、近接物理職のマップが埋まらないことになるけど、そこは地図を手に入れるか盗賊職を頼れってことなのかもしれない。そうすることで職毎の特徴も出せるしね。知覚能力や探索スキル持ちがいないと困ることになるから、自力で能力を得るか、誰かに頼るか、地図だけで諦めるか、自分で選べってことになる。
まぁ、私の場合は誰に頼るつもりもないし、空間認識があるので自力でマップ埋めをするけど……きちんと完成させるには、幅860mでローラー作戦をすることになる。地面の上ではなく樹の上を直線状に走って、幅860mの筆で1列ずつ塗り潰した方が絶対に早いからね。いろいろと確認作業が終わったら、一気に塗り潰すか……
それはともかく、周囲を探索しながら採取しつつ、適当にうろつくといっても、移動するための指標が何もないというのも案外きついので、とりあえず地下水脈に沿って移動してみるか……
森に入ってから500m程、採取で若干横にも行ったりしたが、ほぼ一直線に進んできた。ここまでの探索だけでも、既にそれなりの収穫を得ている。
薬草と解毒草がちょろちょろと生えているし、ノンアクっぽいのでまだ倒していないが、小さい蛇とネズミ、リスも見つけた。
あとは、食材にもなるハーブが少々と、何故か調薬に使える苔があった。こんな苔の情報は、今までなかったんだけど……?おそらくではあるが、詳細鑑定以上じゃないと効能がわからないのかもしれない。
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樹苔
分類:素材 等級:上等級 品質:B
樹木の根元付近に付着している苔。
樹皮の表面に定着しており、養分や水分を濃縮して蓄えている。
調薬、錬金の素材として用いることができる。
効果:植物系活性化
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こんな感じで、何気に上等級で品質Bという、高級素材っぽいものが採取できました。
ある程度以上育っている樹木の根元にたまにくっついてるので、ちょいちょい見つかるんだが……こんな森の入り口付近でこれだけ取れるのは、誰も採取していないからなのでは?
そういえば、月光花の茎とかも知られていないっぽい効能があったなー……もしかして、意外と知られていない素材や効能があるのか?
面倒なことになりそうなので、メリルさんにも私の能力は極一部を除いて教えていない。詳細鑑定もそのひとつだ。この世界にも、確かに鑑定能力はある。だが、もしかして”人間”が持つ鑑定能力は、実はとても性能が低いのではなかろうか?
もしそうなら、こういった身近にあるが未知なるものがある、という状況にも納得ができる。しかし、そんな人間たちが、例えばホムンクルスやエリクサーを作れるようになるものだろうか?素材を大量に用意して、試行回数でごり押しで完成するとは思えないものも多いのだ。
素材の効能を知った上で厳選し、その厳選された素材だからこそできる工程を踏んでいるものが多い以上、鑑定能力は低いとは思えないんだがなー……?
なんでこんな矛盾が発生するんだろう……?