第119話:チュートリアル終了
何とか街を出るところまで書き上げることが出来ました。
これも、皆様が日々読んでくださったおかげです。ありがとうございます。
今後はフィールドが舞台になる事が多くなりますが、これからもお付き合いのほど、宜しくお願い致します。
「そういった理由で、思っていたよりも高品質な装備ばかりになってしまいました……」
「そうでしたか。ですがそれも当然の結果でしょう。あなたは全ての生産技能を修め、ほぼ全ての技術を吸収したのです。そのこと自体が既に偉業と言っていい程、あり得ないことなのですよ?そして、その過程においてさらに磨かれた技術は、より高みに至ったことでしょう。そこまでのレベルに至ったあなたが作ったからこそ、並の職人では引き出すことのできない、素材の秘めたる能力まで目覚めさせることができたのでしょう。そんな素材を磨かれた技術で扱えば、等級も品質も否応なく底上げされてしまうのは、道理ではありませんか?」
「まだ、そんな域に達していないと思っていたんですよ……それはもっとずっと経験を積んだ、その先にあるものだとばかり……」
「今回の件で、自分の実力がどれほど規格外に育っているのか、少しは実感できたのではありませんか?これは戦闘技能にも当て嵌まります。今回自作した装備であっても、しばらくは全ての敵が一撃の下に倒れることになるでしょうから、より自覚できるようになるでしょう」
「…………」
「それから、その装備の価値ですが……はっきり言いますが、いくらの値が付くのか予測が難しいです。おそらく王都に居るC級冒険者の弓師であれば、言い値で買い取るでしょう。それこそ、森での活動をメインしているのであれば、防具も含めて一式全部を纏めて買い取ろうと、破格の条件や大金を提示することでしょう」
「確かに希少級もありますが、この辺の素材で作ったものですよ?王都のC級なら、ダンジョン産のいい素材で作った同等の装備を買うのではありませんか?」
おそらくではあるが、同じ等級、同じ品質でも、より良い素材を使った方が高い効果を発揮するはずだ。
確かに珍しいスキルも付いているが、それだけでC級の人たちが、目の色変えて欲しがるとは思えないんだよなー……
「その同等の装備が出回ることがないため、もし出たら私財の全て、場合によっては仲間に借金してでも買おうとする者が現れるのです。それにC級にまで辿り着いたものは、一部の目立ちたがり屋以外は見た目に拘ったりしません。同様に使用素材にも拘らず、純粋に性能を追い求めます。そして、あなたの作った装備は、追加効果が多い上に、全ての効果が噛み合っていてハズレがない。こういった無駄なく特化している装備自体が非常に稀なため、その性能に沿った能力の持ち主であれば、是が非でも手に入れたいと思うことでしょう」
「それは……ちょっと……いえ、かなりマズいことになりましたね……おそらくですが、私がまともに装備を作ろうとすると、上等級以上しかできない気がするんですよ……」
「ええ、私もそう思います。ですので作るのは構いませんが、売ったり譲ったりはもちろん、性能を見せることもしない方がいいでしょう。あなたの嫌いな騒ぎが、必ず起きるでしょうから。万が一に備えて、銘も入れない方がいいでしょう」
ああ、そういえば製作者名が入ってたな……あれ、どうやって消すんだろう?えーっと……ヘルプ、ヘルプっと……うん、これで良し!これでもう銘が入ることはないな。既に入ってるのは消せないっぽいけど……
「そうします。面倒事は御免ですからね。ああ、それと……これらが渡来人の装備だとして、この見た目だとどうですかね?西の町周辺の素材を使っているので、それほど目立たないと思うのですが……」
「やけに毛並みがいいので、上等級だとバレる可能性はありますが、それを除けば問題ないでしょう」
「そうですか……まぁ、街中を歩いていても、それほど目立たなくなったなら、今はそれで十分です」
「本当は見た目だけでなく、身分証も目立たなくできればいいのですが……まだギルドの教育が終わっていないようなので、もう少しだけ待っていてください。遠からず、あなたがごく普通の渡来人として活動できるようにしてみせますからね」
え……?この人、何言ってるの?なんかとんでもないこと言い出しましたよ?!
ギルドの教育ってなに?誰に何を教育してるの?しかもですよ?”まだ””終わってない”ってことは……もう既に始めちゃってるってことだよね?
さらに言うと”どこの”ギルドと明言していないってことは、もしかすると全部のギルドを教育しようとしてるんじゃないか?って疑問が湧いてきてですね……
確かに、私の有用性に気付けば、何処のギルドもその能力を欲して、面倒なことになるのがわかっているから、関わりあいにならないようにしようとは言ったけど……まさか、全てのギルドに手出しできないようにしている?しかも、睨みを利かせるレベルではなく、それこそ支配ってレベルで言うことを聞かせようとしているのでは……?
だからといって、私にはどうしてみようもないのだ。ならば、ここはもう気付かなかったふりをしておこう。うん、私は何も知らないってことで、予定通り野営訓練に行ってきますかね……
「それでは、装備も揃ったことですし、数日街を離れますね。とりあえずは、南の平原から西の森辺りでお泊りしてきます」
「わかりました。いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
そうして、メリルさんに挨拶をしてから、屋敷を出て南門へ向かう。
そして長かった、とてもとても長かった、私のチュートリアルがようやく終了する。
まさか、初戦闘までに半年も掛かるとは思わなかったよ……