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第11話:GMコール


「………各ギルドの受付嬢を疲弊させている渡来人を、管理者の御使いを呼び出し退去させて貰うことによって、事態の収拾を図ると言う事ですね」


「理解が早くて助かります。ですがこれだけ強力な存在を何の対価もなく呼び出せるはずがありません。そのためにいくつかの条件付けをすることで可能としました。一つ、対象が渡来人であること。二つ、過去に遡り対象とのやり取り全てを読み取らせること。三つ、その内容が処罰・退去に値しない場合、執行対象が渡来人から召喚者本人となる。この三つの条件を満たした上で呼び出すことになります」


「質問。二つ目の過去に遡り~とはどういうことでしょうか?」


「詳細は私も知りません。ただ過去にあった出来事をその場に居たかのように知ることが出来るらしいですよ」


「……質問。三つ目の執行対象が召喚者本人になるとは?」


「そのままです。処罰・退去に値しない者を御使いを利用して刑を執行しようとした罪で処罰・退去されると言う事です。その結果どうなるかはわかりませんが…」


これはほんとにわからん。住人のペナルティに関しては向こうに丸投げしちゃったから…


「つまり召喚する際は命を掛けろという訳ですね……」


「そうなります。ですが人一人の消滅を願うのです。であればその天秤のもう片方にも同等の物を乗せるべきでしょう?」


「それはそうですが…渡来人は故郷へ戻されるだけ、私達はどうなるかわからないと言うのは釣り合っていないのではありませんか?」


「これは今現在、渡来人によって不当に苦しんでいる受付嬢達を救うためのものであって、それ以外は一切考慮してないからですよ。当事者以外の無関係な人が使っていい力ではないんです。その力を利用して自分にとって都合の悪い者を消したいと考えるような人達など、むしろ消えて貰った方がいいと私は考えますけどね」


「………………」


「…………」


やっば…めっちゃ引かれてる。どうしよう?ついポロッっと本音が……


「申し訳ございません。あまりの力の大きさに判断を誤ったようです。短慮による苦言をお許し下さい」


「頭を上げて下さい。突飛な事を言っているのです。多少混乱されるのも想定内なので、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ」


いや、ほんとに。ついポロリしちゃっただけで、そっちが謝る要因はないのよ?気を遣わせてしまって、ほんと申し訳ない…


「お気遣いありがとうございます。」


うおぉぉぉ、すげぇ気まずい……


「少々脱線しましたが、話を戻しますね。それで、本来システムを使えない住人の方でもこの機能を使える様になれば、過度の干渉をしてくる渡来人を排除可能となるでしょう。」


「確かにそうなのでしょうが……いえ、失礼致しました。その機能はすぐに使える様になるものなのですか?」


「ええ、召喚する際の文言と召喚した後の文言を知ってさえいれば、受付嬢が務まる方なら問題ないでしょう。御使いは人語を解し、会話可能ですからね」


「文言だけですか?召喚には魔力や触媒が必要なのでは?」


「システムを媒介に呼び出すので、魔力は必要ありません。それと文言を記録する際に、決して復唱しないよう注意して下さい。それだけで発動してしまいますから」


さすがに新たに住人用のシステムを即座に作って実装してくれとか言えんし…


「……ただ口にするだけで発動するのは危険だと思いますが?」


「そのためにわざわざ文章形式になってるのだと思いますよ?ではこちらをどうぞ。一行目は召喚するためのもので、空白部分に自分の名前を入れて唱えて下さい。二行目は召喚後に目的を伝えるためのもので、こちらの空白には対象の名前を入れて唱えます。その後は指示があったら従って貰えばすぐに終わるでしょう」


「わかりました。他に注意点などは?」


「そう、ですね…御使いはどんな方が来るかわかりませんが、余計な詮索や質問は控えた方がいいかと。後は…受付嬢だけでなく器量よしの看板娘や無茶な事を言われている店舗など、同様の被害を受けている方が居れば教えていいと思います」


多分、そういう奴は他でもやらかすからなぁ~…

まだ初日だから美人の配置が知られてないだけで、掲示板とかで拡散されたらまず間違いなく被害が出る。


「なるほど、ではその様にさせて頂きます」


「はい。後の事はお任せします。」


「承知いたしました。この件はすぐに報告し、確認が遅れそうな者には伝令を向かわせます。この度は貴重なご意見、誠にありがとうございました」


「いえ、私が気になって勝手に動いただけですから。それではこれで失礼させて頂きます。また明日お会いしましょう」


そう言って部屋を後にし、宿屋まで戻る。




「ただいま戻りました」


「おや、おかえり。何か食ってくかい?」


「さっき食べたばかりですよ?さすがに入りませんよ…」


どんだけ食わせる気だよ、この人…


「やれやれ、小食だねぇ…はい、鍵だよ」


「ありがとうございます。おやすみなさい」


「ああ、おやすみ。ゆっくり休みな」


そうして部屋に戻りベッドに突っ伏す。


はぁぁぁぁぁぁ、つっかれたぁぁぁぁぁぁぁぁ………もうやだ、二度とやりたくない……私はこういうの向いてないんだよ、説明下手だしな……

これと言うのも、分別を弁えないバカ共が余計な面倒を起こすからだ!おかげでしなくてもいい仕事をする羽目になったじゃねーか!とは言え、これで少しは沈静化するはず…してくれないと困る。私の心の平穏のために。


早ければもうそろそろ受付嬢まで情報が伝わるはずだ。そうなれば、いよいよ反撃に出た受付嬢がプレイヤーに対してGMコールをすることになる。目の前でGMによってバカ共が垢BANされれば、当然騒ぎが起こる。

それは掲示板を含め様々な手段で拡散され、遠からず全プレイヤーに知れ渡るだろう。それに加えてこんな初日の第一陣としてログインしてる奴が1日経たずに垢BANされたとなれば、リアルでも騒ぎ出すはずだ。

すると未だログインしていない者にも住人がGMコールすることが出来る上、垢BANまでさせられる事を知ることになり、他人を顧みない者には非常に生き難い世界だと周知されるだろう。


そう、これである種の淘汰がなされるはずだ。他者を蔑ろにする者や自身だけを優先させる者は、この世界から排除されていくだろう。せめてこの世界に生きる人々くらいは、他者を慮る者達であって欲しい。

そんな事を考えながら、私は意識を手放した。


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