第109話:従者のステータス
その他に把握すべきことは……フィアとルリのステータスか。
フィアは素のステータスがちょっとだけ増えてるっぽいなー。
あとは固有スキルを結構取得してるし、耐性も上がってるようだし、どうやら試しにやってもらった練習は、しっかりと実を結んだようだ。
でも、フィアの取得した固有スキルにはレベル表記がないんだが、これは従魔だからなのか……?
嘴撃と蹴撃は、そのまま嘴での攻撃と蹴りによる攻撃のことだろうな。
羽撃と羽突は……なんだろう?羽撃が羽を使った打撃で、羽突は羽を使った突き攻撃だと……?そんな練習メニューを組んだ覚えはないのだが?
まさかとは思うが、出番がなくて暇な師匠たちが教えてたとかだろうか……?あり得る……あの人たちなら十分やりかねん……
とはいえ、おかしなことを教え込んだわけでもなさそうなので、大丈夫かな?
疾走と跳躍は、走り込みの成果だろうな。順調に成長しているようでなによりです。
体幹はともかく、旋回はどうして生えてるんですかね……?旋回が生えるような、くるくる回る動きなんてどうやって覚えたのだろうか?やはり、何か教わってたのかもしれんなー……
耐性の上昇は、まず間違いなく毒餌の影響だろう。
なにしろ上昇した項目が、バッチリ毒餌に使ったものと合致しているのだから、他に考えようもないな。
現状でも序盤の敵であれば、この耐性を突破できる状態異常持ちはいないだろうが、ボスを含め、いつ耐性を越えてくるかわからんからな。これからも毒餌を続けて、耐性上昇に努めてもらわねば……
だが、毒攻撃とかがまだ生えてこないのは、食べてる量が少ないのだろうか?まぁ、まだ進化もしてないし、気長に待つとしようか。
ルリのステータスだが、実はまだきちんと目を通していない。
その理由としては、この世界では基本的に、他者のステータスやスキルに関して詮索しないのが暗黙の了解になっているからだ。
従者になったとはいえ、それを勝手に見ていいのか、判断が付かなかったために保留にしていたのだ。
いい機会だから、メリルさんに相談してみるか……
「メリルさん、ルリのことで少し相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、構いません。何を聞きたいのですか?」
「1つ目は、ルリのステータスを見ていいのかということと、2つ目は、ルリのこれからについてです」
「……ステータスを見ていいのかとはどういうことでしょう?聞いていいのかではないのですか?」
あー……もしかしてと思ったが、やはり従者になったからと言って、従魔のようにステータスが見えるのはおかしなことだったのね……
「実は、先程自分とフィアのステータスを確認している時に、ルリのステータスも表示されたんですが、従者になったとはいえ他者のステータスを勝手に見ていいものか、疑問に思いまして……」
「なるほど、そうでしたか。まず前提として、対象が従者だからといって他者のステータスを見ることは、通常であればできません。何らかの能力や道具を使わずに、他者のステータスを知る方法など聞いたこともありません」
「やはり、これは異常なことなんですね。私もおかしいとは思ったんです。それまでは他者として情報は見れなかったのに、口頭で従者になることを誓っただけで、まるで従魔のような扱いになるとは思えなかったので……」
「そういうことでしたか。それならば、やはり本人に見ていいか確認してからの方がいいでしょう。その方が、あなたも変に罪悪感を持たずに済みそうですし」
「わかりました。では、それは後で聞いておくことにします」
まぁ、こうなるよね。考えるまでもないことなのだが、どうにも接し方が良くわからなくて、若干避けてしまうんだよなー……
そして、相談事の本命である、彼女の今後の行動についてだ。
「あとは、ルリの今後についてでしたね。あなたは彼女をどうしたいですか?」
「……可能であれば、このままここで預かっていて欲しいというのが、正直な思いです。本来、同行者ができる予定など全くなかったのですから。とはいえ、いまさら減刑というわけにもいかないので、どうしたものかと……」
「あまり会わないようにしているようですが、彼女のことが嫌いですか?」
「そんなことはありませんよ。ただ、どうしても気後れはしてしまいます。あの件がなければ、彼女は今も自由でいられたはずなので……」
「あの時は、本来であれば首が3つ落ちていたはずなのです。それなのに、よくもまぁ全ての首を繋いだまま収めたものだと感心しました。あの2人も生かされていることに深く感謝していますし、囚人ではなく従者となれたことをありがたいと思っているようですから、あなたが気に病むことなど何もないのですよ?」
「ええ、頭では理解しているんです。失われるはずの命を3つも救おうとすれば歪みも出るでしょう。その歪みを無理矢理抑えるために命の在りようを歪ませる必要があった。その結果がこれなのだと理解はしているんです。もちろん、感謝されていることも含めて。それでもやはり、自分のせいで歪まされた人を見るのは結構きついんですよ……」
あの時、全力で事に当たったつもりではある。だが、私が思いつかないだけで、それよりもっといい結末があったのではないかとも考えてしまうのだ。
「あなたは考え過ぎなのです。気楽にのんびりと過ごすのでしょう?ならばもっと割り切れる性格にならなければいけませんよ?……あなたは責められるようなことは何もしていないのですから、もっと自分の行動を肯定すべきです。自分の考え方を誇っていいのです。あなたに一番足りないものは、自信なのかもしれませんね」
「自信、ですか……それはまた難しいものを要求してきますね……」
「まずは今回の件を片付けてみましょうか。自信を付けるには成功を重ねるしかありません。ですから、実際に問題を解決することができると証明してみましょう。ルリをどうするか、何か案はあるのですか?」
一応あるにはある。考えてはあるのだが、それが果たして可能なのか、そして適しているのかはわからない。
何しろ、私の案に必要なものがそうそう手に入るものではないし、その上、彼女が今まで積み上げてきたものを無駄にしかねない。というか場所によっては、完全に無駄になるだろうからなぁ……