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第105話:与り知らぬ成長


「それはまた、なんというか……私は意識ない方がずっと強いですね……」


「それはどうでしょうか?一概にそうとは言い切れませんよ?」


「何か根拠がありそうですね?」


「ええ、根拠というよりも経験則に近いでしょうが。まず最初に、あなたは本当に意識を失っていたのか?という疑問があるのです」


「私自身、意識が薄れていくのがわかりましたし、記憶も残ってないのですから、意識を失ったとみていいのではありませんか?」


「確かに、それだけを聞けばそう思うかもしれません。ですが、その後も戦い続けられたということは、肉体疲労ではないということです。ということは、精神に起因するものとなるわけですが……ここから先は憶測になるのですが、あなたは能力の使用による頭痛が邪魔だと思ったのではありませんか?」


あー……考えた覚えはないけど、確かに私なら考えそう。ついでに思考や痛覚も邪魔だと思って両方閉ざしてもおかしくはないな。実際に嗅覚と味覚は既に閉ざしていたわけだしね。


「そうですね。覚えてはいませんが、その可能性は否定できません」


「であれば、やはり意識を失ったわけではなく、一時的に閉ざしたのではないでしょうか?別な言い方をするならば、考えないように、あるいは感じないように、意識を切り替えたとも言えるでしょう」


「ふむ……今の私の意識ではなく、不要なものを全て削ぎ落とした、新しい戦闘用の意識を作って切り替えた、と?」


自分で言っておいてなんだけど、多分これはないな。どちらかというと、意識すらも不要なものとして排除し、戦術と反射のみで動く戦闘人形キリングドールに近い状態にする気がする。


「ああ、なるほど……そういう考え方もあるのですね。いえ、確かにその方がわかりやすいかもしれません。そうしてできた新しい意識は頭痛に悩まされることがなくなった分、今まで以上に動けるようになったはずです。今思えば、その辺りから動きが読みにくくなっていったような気がします」


あ、納得しちゃった……まぁいいか、私のも推測でしかないからね。どっちが正しいかなんて、私自身が件の戦闘モードをコントロールできるようになるまでは、誰にもわからないだろう。


「他の人たちは、その変化に気付かなかったんですか?」


「気付いてはいたでしょう。特に直接刃を交えている前衛たちは、よりはっきりと。ですが、それまでも刻一刻と成長をし続けているあなたに対して、また成長したのかと、不思議に思うことはなかったでしょう。今までと同じく、新たな成長として受け入れていただけだと思います」


「……私って、その時点でそこまで成長していましたか?完全に防戦一方で、かろうじて直撃を受けずに済む程度にしか、捌けていなかったと思うのですが……?」


「何のために全員が刃引きした武器を持っていたと思うのですか?直撃してもいいようにです。つまり全員直撃狙いで攻撃していました。それはあなたにもわかったでしょう?」


「ええ、それはもう。むしろ直撃狙いだったからこそ、捌けていた面もありますし……」


「その無数の直撃狙いを全て捌いていたのです。それも時間と共に度合いを増していっているにも関わらず、直撃を受けていないということは、難易度の上昇と同じ速度で成長しているということなのです。それがわかっているからこそ、彼らは次の段階に成長したとしか思わなかったのではないでしょうか?」


「捌くのに手一杯で、成長している実感はまるでなかったんですけどね……」


「それどころではなかったでしょうから、仕方ないでしょう」


全くだよ!というか、武器増やしても捌き切れんかったしな……おまけに魔術もあるから余計に厄介だった……せめて二重詠唱とかがあれば、とは思った。


「魔術の手数も増やせればとは思ったんですけど、その前に意識がなくなりましたからね……」


「2日目には二重詠唱デュアルキャストを使っていましたが、それも記憶にありませんか?」


「……………全くありませんね……」


ちょっと待ってぇぇぇぇぇっ!私の与り知らないところでの、私の成長が著しいんだけど?!ちゃんと自分で修業して覚えたかったよ……


「……あとで、教えてもらうといいでしょう。彼女たちはさらに上位のスキルも持っていますから。ですが、これで納得がいきました。最初、どれだけ追い詰められても魔術を単発でしか使わなかったのは、そもそも習っていなかったのですね」


「そうですね。もしかしたら、教えた魔術を単発でしっかり使いこなせるようになってから、教えるつもりだったのかもしれません」


「そうかもしれませんね。あなたが初めて二重詠唱をした時の、あの2人の驚きようは凄かったですからね……私は魔術師ではないのでわかりませんが、誰にも教わることなく独自で可能とするのは難しい種類のスキルなのでしょう」


「あー……後で聞いてみることにします。この分だと、知らない間に他にもいろいろとできるようになっていそうですね……」


「ええ、倒れる間際のあなたはとても強かったですよ。ですが、どう強かったのは黙っていようと思います。他の者たちにも黙っているように伝えましょう。いつか、自分で意識のあるまま辿り着くと良いでしょう」


「お心遣いありがとうございます。そうすることにしようと思います」


はぁぁぁぁぁ、全くもう、何でこんなことになっているのやら……

意識や記憶関連だと、女神を思い浮かべてしまう……今回はネガティブ系じゃないから、手出しはしないと思うんだが……どうなんだろうな?

脳や精神への負荷が高すぎて、思わず手を出したって線もあるにはあるが……どうせ、考えても答えは出ないし、放置案件かなー?




放置と言えば、フィアを放置したままだった……

まさか、丸2日も戦闘することになるとか思ってなかったし、さらに1日半も寝てたらしいからなー……実質4日ほど放置してることになる……


おそらく、ここの人が食事と寝床は用意してくれただろうけど、こんなに長く離れたことがないから、少し心配になるので、迎えに行かねば。

フィアは私の従魔なので、余程離れていなければ位置くらいならすぐにわかる。現在位置は……すぐそこだった……


つい先程まで使っていた枕と、ほぼ同じ位置に反応がある。

そこには、枕と同化しているかのように、枕にくっついて眠るフィアがいた。


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