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第103話:剣嵐舞踏


「こ、のぉぉぉ…………」


くっそ!なんだこれ?!予想はしてたけど、苛烈過ぎんだろぉぉぉぉぉぉぉっ!!


超感覚や並列思考を始めとする全能力をフル活用しても、現状打破に全く届かない。

それも当然、何しろ相手は9人もいるのだ。格闘、短剣、剣、槍、斧、槌、弓、魔、魔という、超攻撃的な凶悪メンバーが一斉に襲い掛かってきてるのだ。対するこちらは私1人、単体戦闘能力で負けてる上に、人数差もあるとか……いくら手加減されてるとはいえ、やり過ぎじゃぁぁぁぁぁっ!


右手に短剣、左手に短槍、両足による格闘、そして並列思考による魔術を駆使していても、手数がまるで足らないのは言うまでもない。


2人の魔術師による別属性の魔術に対抗しなければならないため、常に思考ひとつと発声はそっちに持っていかれる。いくら対抗する術を教えてもらっていようと、口は1つしかないんだよ!なのでほぼ詠唱しっ放しで、詠唱が短く発生が早い魔術を連発することで、なんとか被害を抑えてはいるのだが、全く妨害する暇がない。


足を止めれば、斧と槌の重量武器が唸りをあげて迫りくるし、避けても砕けた地面の破片が飛び交い、それを避けようと浮けば、待っていたとばかりにいくつもの矢が向かってくる。飛び交う礫を足場にして矢を捌けば、同様に礫を足場にして迫りくる拳と短剣が。両手両足を使って凌いで地上に戻れば、剣と盾による迎撃があり、そこを目掛けて槍の一撃が横から突進してくる。


「「サンダーボルト(フレアランス)」」

「アイシクルランス」


2人がそれぞれ火と雷の魔術を同時に放ち、私は一度に対抗できる氷の魔術で対抗する。

この2人は、毎回別属性だけど、一度に対抗できるように選んで攻撃してくる。おそらく、私が瞬時に正しい対抗属性を選べるか試しているのだろう。

この世界は属性が多く、その関係性はゲームによくある簡単な強弱ではないのだ。おまけに、単にスキルとして使えば、常に消費魔力も威力も同じ魔術になるが、魔力制御でカスタムすると、威力を上げたりいろいろ応用が利くようになるので、こんな使い方もできるようになる。


そして、本当に嫌なタイミングと位置に、的確に撃ち込まれる矢が危ないので、常にそっちにも意識を向けていなきゃならない。これは、意識を集中させながらも、常に全体を把握させようとしてるんじゃないかと思う。

はっきり言って、高速思考と並列思考なかったら、とっくに詰んでるからね?!これなかったら、例え知覚できてても絶対に処理が間に合わなくて、対処できなくなるから!


近接組は、もうやりたい放題である。

短剣は常に背後を狙って意識を逸らそうとしてくるし、剣は正面でこちらの足を止めようとしてくるし、斧は大きく横に薙いで姿勢を崩そうとしてくるし、槌は縦に振り降ろすことで当たらなくとも地面を凸凹にして足場を乱すし、槍は隙間を縫うように突き刺してくるし、身軽な格闘は縦横無尽に動いて飛び掛かってくるしで、全く攻撃できずにジリ貧状態ではあるが……直撃を免れてるだけでも、大したものだと思って欲しい。


「ほらほらどうした、足が止まりそうだぞ?」

「次のやつ、いっくよー!」

「後ろにもいるからなー」

「フゥンッッッ!!」

「おおりゃあぁぁぁぁぁっ!」

「主戦場の外側からも目を離してはいけませんよ」

「正面を崩せぬようではな……」

「どっせぇぇぇぇいっ!!」

「これはどうかなー?」


あぁぁぁぁぁもぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

言いたい放題言いおってからに!こっちは反論する余裕もねぇぇんだよぉぉぉぉっ!

くっそー!この世界には、多重詠唱とか無詠唱とか分身とかないのか?とにかく手が足りない!勝てないのはわかりきってはいるが、それでもせめて一矢報いたい!


何か、何かないか?できるできない関係なしに、それこそ今まで見聞きしたアニメや小説の中にある能力で、この状況下でも使えそうなものとか………考えろ、思い出せ、創り出せ!この世界において、私は”何をしてもいいんだ”。だったら、別に新たな能力を創り出してもよかろうなのだ!


とにかく、近接職が多すぎる!それらを捌けるだけの多数の武器が必要……そしてそれらを操るものも……そういえば、複数の武器を自分の周囲に浮かせて、自動迎撃する能力とかあったような?ざっくりしてて、上手く思い浮かばないけど……今必要な能力は……大量の攻撃を全て捌くこと……つまり、大量の武器を使って、全部の攻撃をパリィする能力!


自分の周囲で、無数の剣が舞い踊るように迫りくる攻撃を捌いている光景を幻視する……舞い踊る剣……絢爛舞踏、いや、この場合は剣嵐舞踏といったところか?この程度の名前なら、中二病あいたたたとはならんだろう。


魔力制御をより精緻に、より強靭にして武器と繋げる。繋いだ武器に魔力を纏わせていく。

それを1本、2本と増やしていくと同時に、知覚能力もより精緻に、より広くしなければならない……


「ぐうぅぅぅぅっ………」


頭が、痛い……こめかみの辺りに激痛が走り、思わず目を閉じ、呻き声が出る……だが、やめない。やめるわけにはいかない。もう少し……もう少しで、それに手が届くのだ……目を開けられないなら閉じていればいい。どうせ目を閉じていても、今は知覚能力を全開しているおかげで、色が抜ける程度の差しかないのだから問題はない。視覚を閉ざしたからか、少し楽になる。だがまだ足りない。


使用感覚を閉ざすことでリソースが増えるというのであれば、さらに閉ざそう。今は不要な嗅覚と味覚を閉ざすことでリソースを増やし、武器を増やす。3本、4本、5本……そして6本目で再び激痛が走る。これが今の私が使用可能な上限らしい。だが、それで十分。さぁ、いくぞ……


「剣嵐舞踏っ!」


私の周囲に5つの武器が現れ、全ての武器でウェポンパリィを発動させる。

みんなが驚いている間に魔術を範囲に切り替えながら、武器2つを対魔術用に配置する。


「チェインサンダーバインド」


驚愕とパリィによる隙ができたところに、至近距離からの範囲雷魔術はさすがに避けられなかったようで、動きが止まった短剣と槍の師匠の喉に得物を当てると同時に、剣嵐舞踏のうち2本に属性を加えて魔術を捌き、2本で矢を捌き、残りの1本を槌の師匠の喉に当てる。


結局、まともに反撃できたのはそれだけで、その後はまた防戦一方になった。それでも近接職には、雷属性を纏わせた武器でウェポンパリィをすることにより、多少ではあるがダメージは与えたし、遠距離組は範囲攻撃を使うようになったから、それなりの成果は出せたと思う。




その後の私はといえば、途中で倒れたようだ。


原因は、まず間違いなく剣嵐舞踏だろう……ただでさえ酷い頭痛だったのに、そのまま使い続ければ倒れても不思議はない。発動前の時点から、相当の負荷が脳や精神に掛かっていたのだろう。自分が倒れた時のことを思い出せないのは、その時にはもう意識がなかったからではなかろうか?


ちなみに、私は1日半ほど眠っていたらしい。

普段6時間睡眠なので、6倍くらい寝てたことになる。剣嵐舞踏の反動すげーな……使い続けたらレベルが上がって、多少は使い勝手が良くなるのだろうか……?


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