第9話「捲土重来を期す」(その1)
海竜、自らを二発目の魚雷に化ける、擬態攻撃に移る!
標識的擬態攻撃――伊東の命令一下、海竜は全速で敵無人艦を目指すことで、自らを二発目の魚雷に化ける、擬態攻撃に移った。
魚雷を発射した海竜は、その発射音で敵潜水艦のパッシブソナーに掛かり、交戦となれば直ちに魚雷を受ける。だが敵は、魚雷を打つ前にアアクティブソナーで音波を発信した。
「敵潜水艦、北北東距離4000――」
ハナが敵潜水艦の位置を確認。
だが伊東はそれを聞いても動かない。
その時だった。
「総理官邸――緊急CALL」
とハナが叫ぶ。
「ああ……出してくれ」
伊東の返答に、ハナが忙しく応答する。
「はい、VR上の音声、解除します」
伊東はモニターを見ながら応答を待つ。
「伊東さん、赤瀬川です」
「総理、敵1番艦の領海侵犯を阻止します」
「それは待って下さい――」
「えっ、このまま領海侵犯を許されると……」
「いえ、早晩敵は撤退するという話が……」
「それは――確実な話ですか」
「実はシャングリスタンの過激派が、中国西部でテロを起こした様です」
「シャングリ……アメリカの裏工作ですか?」
「それはともかく、ここは引きましょう」
「海竜の吸着力はSAPTⅠよりも更に強く、敵を無力化して離脱すれば痕跡は残りません」
「海竜の力は分かりました。だが今は時期尚早、私としては万全を期したい」
「はい……総理のご指示とならば――」
「これでメガフロートの時間稼ぎになります」
「分かりました。ここはメガフロートに集中して、2年後には完成させます」
「3年後、敵空母が8隻となります。その時は、確実に太平洋へ出てきます」
「ご心配なく、準備万端整えてみせます」
「ただ伊東さん、どうもそちらが危ない――」
総理の話に伊東は緊張した。
例えWeb3を使っても、秘密基地の秘匿には限界があった。
(つづく)