第3話(その2)
「200隻――とはまた、尋常な数では……」
「全艦が無人です、操船から攻撃まですべて自動化され、沖縄方面へ押し寄せる筈です」
「200隻のすべてが全自動の無人艦とは……」
無人艦という言葉に、伊東はハッとする思いだった。
対峙する国同士の発想が類似するのは偶然ではない。ただその数とスピードには、やはり国力の差を思い知らされた。
「だから、あなたの組織が必要なのです」
伊東の行動は随時ハナへ伝達され、必要な情報はMDSへ蓄積される。情報はWeb3.0を使って送られ秘匿性は抜群。参加するメンバーは当局によって選ばれた者ばかりで、JFKでの様子もVRとして見る事が可能だった。
「では海竜の性能を拝見しましょうか!」
「一時はコンテナが落ちて、心配しました」
「裏をかいて正解でした。敵もあくまで重要なものはホールドの中と判断したのでしょう」
伊東は黙って頷くと、スミスの後に続いた。
空母JFKはニミッツ級空母に加わるジェラルド・R・フォード4隻シリーズの2番艦で、全長333m、幅41m、排水量が十万トンを超える原子力空母である。総工費は一兆四千億円を超え、アメリカ最新鋭の空母は、建造予定を十年前倒しして建造されていた。
伊東はショッピングモールの様な艦内をスミスの後から進んだ。窓のない壁は明るいグレイのモノトーン、4人が並んで歩けるほどの通路に天井も高い。何にも増して降り注ぐ自然光が軍艦の中だということを忘れさせた。
船内にはJ・P・スーザの行進曲・アメリカ海軍の栄光という曲が流れている。聞き覚えのある曲で思い出すのは運動会。ただ中国との軋轢の中、へたをすれば第三次大戦へ繋がる海域へ出るのかと思うと緊張した。
スミスは幾つかのゲートで指+瞳認証を繰り返し、上甲板から中央区画に入っていった。
モニター監視の中を行き、警備兵の身体検査を終えて最後に入った部屋は、左壁一面がガラス張りのコントロール室になっていた。
(つづく)




