先生と助手の勘違いからの
「本間君、君が私の所へ来てからもう何年になるかな」
「先生の助手になって、来月でまる三年になります」
「そうか、三年か……」
「ええ、三年です」
「近く私の研究も一段落するから、そろそろ将来を見据えた話でもどうかな」
「えっ、そっその、いきなり言われましても、心の準備が」
「うん? そうか、確かに言葉にしていなかったが、君も最初からそのつもりで私の所へ来たのだと思ってたのだがな」
「えっ、知っていたのですか」
「ああ、そんなのは、最初の面談の時にすぐ分かったよ。君の瞳には情熱が灯っていたからな」
「そ、そうだったのですね……恥ずかしいです」
「別に恥ずかしがる事じゃないだろう。最初の情熱がなければ今後の新しい生活は無かったのだから」
「諦めなくて良かったです。まさか思いが届くとは思っていませんでしたので」
「君ほど理想的な人はいないんだ。そう思っていたのが意外だな」
「そうですか。でも、嬉しいです。今まで思い続けてきた事が報われます」
「ふふ、君のそういう所が、とても好ましく思われて、今回の決断に至ったのだ」
「あの……私も……好きです」
「そうだろうと思った。前からよく見ていただろう」
「えっ! ばれていたのですか」
「まあ、分かりやすかったからな。そのおかげで確信を持てたので迷わずに済んだのだ」
「それで、式はいつ頃の予定でしょうか」
「式? ああ、そうか。発表は大々的にしたいから、すべて整うのが半年後位だな」
「私の年齢だと大々的でなくてもいいですよ。早い方が嬉しいです」
「そうか、ではその様に進めよう。寂しくなるな」
「えっ?」
「まあ、君の為だから私情を挟むのは良くないな」
「えっ、結婚の事じゃないのですか?」
「いや、新しい研究所の所長に君をという話だが」
「えっ、所長?」
「えっ、結婚?」
「私が所長ですか、夢見たいです」
「ちょっと待ってくれ。結婚って」
「済みません、話の流れを勘違いしてしまいまして、お恥ずかしい限りです」
「そうか、勘違いか。あれ、でもさっき好きって……それに何故か浮かない顔をしている」
「だって、勘違いとはいえとても嬉しかった分、違った時のショックが大きかったですもの」
「え、ショックって……その気になっても良いのか」
「先生」
「君みたいな人は僕にはとても手が届かないと思っていた。でも、でもそうなら、僕と結婚して下さい」
「はい」