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第6話 真実

目が覚めると、知らない場所……ではなく、私はいつもの、屋敷の自分の部屋で寝かされていた。 

傍らには、お母様やお医者様、爺やがいた。


「ヘレン!!ごめんなさいヘレン!!まさかこんなことになるなんて……もう、私は……私は……母たる資格など……」

「奥様……今はご自重ください。ヘレン様が困惑しておられます故……」

「……お、かあ、さま……?それに、爺、や?……あれ?あの、男たちは……?」


おかしい。私はあの広場で、薬をかがされてどこかへ誘拐されたはずだ。

あとあの男が言っていたこと……


その先を言おうとすると、爺やが安心させるかのように優しく説明してくれた。


「ヘレン様。もうご心配無用でございます。我ら、アーノルド大総統直轄部隊が制圧しました。あやつらは今投獄されております」

「――え?ちょ、直轄……部隊?」

「はい、ヘレン様。我らの役目は、奥様とヘレン様を、あらゆる脅威からお守りし、敵を排除することでした。それが……奴らの動きに遅れを取り、駆け付けるのが遅くなってしまいこんなことに……悔やんでも悔やみきれませぬ」


苦々しく言い訳する爺やと、頭を垂れる侍女さんたち。


直轄部隊?

お父様の?


――爺やと侍女さんたちが?


「……はぁー……秘密主義もいい加減にしてほしいわ。とりあえず爺や、あれは私が勝手に屋敷を飛び出したことも原因だから、今こうして無事なんだし気にしないで。それより……爺や。知っていることを全部話しなさい」


もうなんだか面倒になってきた。

あれだけ泣いて叫んで悩んでいた私は、結局、爺やたちにずっと見守られていたんだ。

滑稽だ、本当に。いっそ笑える。


だから爺やから話させようとした。


お母様がどうとか、もういい。


そう思っていたけど、言いづらそうに、お母様が割って入ってきた。


「へ、ヘレン……それは私から……言います。あなたが知りたい、すべてを」

「……お母様……」


様子を見ていた爺やたちは後ろに下がった。

ずっと、ずっと望んでいたこと。


私が、何者なのか。


ひたすら私を――まるで拒絶するかのように、甘えを許さなかったお母様が、泣いているのを堪えて、私の気持ちに応えようとしてくれている。


しかしそれは――予想外の人の登場により、さらに悪い意味での予感が的中することになった。


「――いや、すべての責は私にある。ヘレン、お前が咎めるべきは、母ではなくこの私だ」


いつの間に現れたか、そこにいたのは、滅多に屋敷にこられないはずのお父様だった。


最敬礼する爺やたちを下がらせ、お父様がベッドに近づいてきた。


私が知りたかったこと――真実を、伝えるために。

しかしそれはあまりにも、重すぎるものだった。


「ヘレン。いや……エレン=アーノルド。私達の、ただ一人の大切な子よ。お前は……アーノルド家の、『長男』なのだ。こうならざるを得なかったこの父にこそ、すべての原因がある」



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