第3話 友達
それからは、マリアと私はよく庭で遊ぶようになった。
最初は、マリアが私のことをどうしても「様」をつけて呼ぶものだから、彼女が私を単に「ヘレン」と呼べるようになるまでだいぶ時間がかかった。
だって、友達なのに「様」なんてつけるのは変だし、それは私のことを対等と見てくれていないことだったから、それだけは嫌だった。
私にとって、彼女はマリアで、マリアにとっては、私は友達のヘレン。
そんな、単純な関係を、私はずっとずっと望んでいたんだと思う。
たまに爺やに頼んで、お屋敷の外に連れて行ってもらって、そこで一緒にご飯を食べたりもして、一緒にお花の冠を作ったりもした。
追いかけっこしたり、鬼ごっこをしたり。
ずっと一人でお庭で遊んでいた私には、マリアという友達がいてくれることが、とても新鮮で楽しかった。私が知らないことも知っていたし、逆にマリアが知らないことを私が教えてあげたりもした。
本当に、楽しい時間だった。
夕日を見ながら、私はヘレンに話しかけた。
「ねぇマリア」
「ど、どうしたのヘレン……?」
「私、マリアに出会えてよかった」
マリアの方を振り返ると、彼女は夕焼けに照らされてか、赤い顔をして、笑顔で答えてくれた。
「……う、うん!わ、私も!へ、ヘレンに会えて、すごく嬉しい!」
「マリア。私の初めての友達。これからもよろしくね」
私の微笑みに、彼女の顔が一層赤らんだように見えたのは、気のせいだったのかどうかは分からなかった。