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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第十章 我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主】
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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主 SideR

「ルーナ・アリス・ハリソン。どうかこちらに」


「は、はい~?」


 ルーナは聞いてないといった感じで私の前に立つ。

 きょろきょろして周りを見回している。


「どうぞ」

 私はブーケを彼女に渡した。


「えっ? えぇ?」

 彼女はあたふたしながら、ブーケを受け取ってくれた。


「私の幸福の一部を一番大切な親友の貴方にあげる。どうかあなたがいつまでも、いつまでも幸せでありますように」


「ろ……ローゼリア様……いえ、薔薇子様……」

「そ、その呼び方はやめてってばぁ!」


「嬉しいです。こんな嬉しいこと、前世でも今世でも初めてです。こうして神様に祝福されたのなら、私は地獄でも、煉獄でも、天国でも、何処にいっても頑張れる気がします」


 ルーナはポロポロと大粒の涙を流した。

 彼女のドレスが涙で濡れてしまう。


「や、やだ……今生の別れみたいなこといわないでよ」


 ルーナの涙を拭こうとハンカチを取り出す。


――その時、ルーナの姿がぼぅっと光っていることに気がついた。


 昼間の月のようにぼんやりとした光だった。


「大好きです。ローゼリア様。アッシュ様はあんまりローゼリア様をいじめちゃだめですよ。どうか、おふたりとも永遠に幸せになりますように、どこかの世界から祈っています」


 ルーナがそう言うと、彼女の身体が白い光に包まれて――消えてしまった。

 薔薇の持ち主は消え、ブーケは宙から地に落ちる。


「……えっ」


 何で?

 ルーナは一体どこに……?


「……転移魔法で逃げたんでしょうね。大衆の前が恥ずかしかったんでしょう」

 戸惑う私に、アッシュは優しい声でそう告げてくれた。


「でも、そんな……」

「お嬢――いえ、ロゼ。前を向いてください。……貴方は今日の主役なんですから」


 そう言われて前を向く。

 たくさんの人々がいる。その中にルーナの姿を探すけれど、彼女はいなかった。


 アッシュはルーナの行方について知っているのかもしれない。

 消えたときに動揺すらしなかったから。

 でもそれを私に教えてくれないのは、何故だろう。いつも彼が私に嘘を吐く時は、私のことを思っての嘘を吐くことが多い。


 だから、きっと……ルーナの行方について、私は聞かないほうがいいのだろう。

 なにかあるのなら、ルーナ自身から打ち明けてくれるはずだ。


 私は背筋をピンと伸ばして、落ちたブーケをもう一度手にとった。

 そしてブーケトスを行う。


 誰か、見知らぬ誰かよ。

 どうか貴方も幸せでありますように。



 こうして式は終わり、念願のハネムーンだ!

 馬車で私たちはゆっくりと向かう。


「色々有りましたね。お嬢」


「お嬢って言うの、もうやめない? 私はもうアッシュのお、お嫁さんなんだし……」


「ちょっと、その照れ顔は反則です」

 くいっと顎を上げられる。


「俺にとって貴方は永遠のお嬢様です。そしてようやく手に入れた。俺だけの愛しい薔薇でもあります」


「歯の浮きそうなことを言うのね」


 私の恥ずかしいという気持ちは限界突破していた。

 

 アッシュはいたずらっ子のように、ニッコリと笑って――


「……二人っきりになったら、思いっきりいじめてあげますからね」

 なんて言ってきたのだった。



 物語を締めくくるには、この言葉がお決まりだろう。

 こうして二人は末永く幸せに暮らしました。

 めでたし、めでたし。



――だけどこれは現実。

 物語じゃない。

 これからもこの世界は続いていく。私とアッシュの人生はまだまだ続いていく。



 何処に居ても、病める時も健やかなる時も、永遠の愛を誓いましょう。

 神様ではなく、ただ一人の貴方に。


これにておしまい――と思いましたか? もうちょっと続きます。


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