呪いを解くお約束SideA
――彼女はなんて残酷な人なのだろう。
あんな告白をしておいて、こんな突き放すような手紙を遺しているなんて。
どの世界でも彼女の死は避けられなかった。
だから、彼女は遺書を俺のために書いたのだろう。
俺はもう彼女なしでは生きていけない体になっているのに、彼女はそれではいけないと否定をする。
彼女がいない世界で、幸せになれなんて残酷なことを言う。
でも――そんな彼女だから俺は愛しているんだ。
俺だけを見てほしい。
俺だけの物になってほしい。
俺と同じ想いを抱いてほしい。
それが歪なものだということは、ずっと昔から理解していた。
けれど、止められないのだ。
彼女の長い金色の髪を見るたびに、宝石のように輝く青い瞳を見るたびに、俺は彼女を独り占めしたくなる。
閉じ込めて、誰にも見せたくなくなる。
彼女の求める幸せは、俺の求める幸せとは違う。
そんな当たり前のことは最初からわかっていたはずなのに、どこかでわかりあえるという希望を抱いていた。
俺と彼女は一生わかりあえない。
それは幸福の定義がお互いに違うから。
「――って、そんなんで諦められるかよ!」
俺は彼女の遺言を握りしめた。
彼女の言葉は彼女の想いであり、願いでもある。
――でも、それじゃあ俺の願いもどうかきいてくれ!
言葉でわかりあえるというなら、いくらでも対話してやる。
一晩でも、二晩でも、一週間でも、一ヶ月でも、一年でも、十年でも、ずっとずっと対話をして譲歩できるところを見つけよう。
勝手に突き飛ばすな。お馬鹿令嬢。独りよがりで死んでいくなよ。
俺は立ち止まらない。振り返らない。
『最大幸福の世界』に辿り着くために。
そのために彼女が必要だ。
この想いは依存なんかじゃない。
彼女を置いて、先に進むなんて俺にはできない。
俺は彼女が好きだ。
ローゼリアは俺のおかげで世界が極彩色に輝いたと書いていた。けれど、その裏を考えてほしい。彼女が居ない世界がどれだけ灰色か。
いつも置いていかれるのは俺だけだから、彼女は知りもしないだろう。
……俺の願いは、いつも変わらず。
――彼女とずっと守って、彼女よりも少し先に死にたい。
だから、どうか……。
「じゃじゃじゃじゃーん! ルーナでございます!」
いきなりドアが開いたと思ったら、そこにはルーナがいた。
身体が傷だらけ。衣服は泥と煤だらけ。
「いやぁ、厳しかったですよ。なんかもういろんな試験をクリアしろって言われて、もう7つくらいの試練を受けました。100年くらいの時を感じましたが、ここでは数時間も過ぎていないんですね」
ルーナの手元には、ぼんやりと光る青色の薔薇があった。
「どうぞ。これがローゼリア様の魂です」
ルーナに渡された薔薇を手に取る。
どくん、どくん、と薔薇が鼓動を打つ。
この薔薇の色は――ロゼの瞳の色とそっくりだった。
しかし、これを手渡されて、どうしろというのだ。
「《氷魔法解除》――さぁ、アッシュ様。呪いに倒れたお姫様は、どうやって目覚めるのか。ご存知でありません?」
――あぁ、なるほど。そういうことか。
俺はルーナが持ってきた薔薇を、ロゼの胸元に置いた。
物語のお決まり。
眠り姫は王子のキスで目覚め、白雪姫は王子のキスで生き返った。
つまり、そういうことだろう。
そして先程まで凍っていた冷たい彼女の唇にキスを落とした――
ルーナの死の国あたりを細かく書いても需要がないなと思い、ざっくりカットしました。
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