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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第八章 愛の鎖】
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世界の強制力(3)SideA

「今晩はルーナのところに泊まるからっ!」


 ロゼは顔を真っ赤にして叫ぶように言った。

 ルーナ――ヒロインちゃんの名前が出たことに、少し苛立つ自分がいる。

 まだロゼの心は俺で埋まっていない。

 他者が入り込めるほど、余裕がある。


 もっと依存させたい。もっと俺から離れないようにしたい。

 時間はたっぷりある。

 まだ、束縛はせず自由にさせてあげようと思った。


 日が沈み、空が暗くなる。

 そういえばロゼと過ごさない夜は久しぶりな気がする。

 いつもどちらかの部屋で、キスをして、触れ合っていた。


 一晩離れると考えるだけで、苦しくなる。

 ロゼを俺中毒にさせたいのに、逆に俺のほうが中毒にされてしまっていた。


 コンコン。


 なんともいえない、悶々とした思いを抱えてベッドに蹲っていたら、ドアを叩く音が聞こえた。

 もしかしてロゼが帰ってきた!? そう思って扉を開けるために急いで起き上がり、身なりを軽く整える。


 コンコン、コンコン、ドンドン。


ノック音はどんどん激しくなる。


「アッシュ様ー! いるんでしょうー?」

 扉の奥から聞こえた声は――ヒロインちゃんだった。

 一気に萎えた。居留守を使おうと思って、ノック音を無視する。


 ドンドン、ドンドン、ドンドンドンドンドンドンドンドン!


 激しくなるノック音。


「いや、流石に近所迷惑――!」

 俺はなし崩しに扉を開けた。

 その先には、長い銀髪をポニーテールにまとめた、私服のルーナがいた。

「やーっと出てくれましたね。ローゼリア様を返してもらいにきました。今日は私と一緒に過ごすと決めてるんですからね!」

「――は?」

 ローゼリアは2時間ほど前に、ルーナの部屋に行った。

 それから姿を見ていない。


「君のところに来てないの?」

「……へ? どうゆうことです? いつもながらアッシュ様が離してくれず、こっちに来てないのかと――」

 ルーナは驚いた表情を浮かべた。

「2時間ほど前に君の部屋に行ったはずだけど――」


「来てませんよ。……ん? どこかで捕まってるんでしょうか。エドワードとか、フェリックス殿下とか、そのへんに」

「……」

「無言でイラッとしないでくださいな。こっちまでピリピリ感が伝わってきて正直不愉快です」

 ルーナはわざと俺を挑発するように言って、はぁやれやれと肩を落とす。


「今の反応を見るに、ローゼリア様をこっそり隠している……ということもなさそうですね」

「だからさっきから言ってるじゃん……」


「正直ヤンデレの言葉は信用できないんです」

「俺はヤンデレなんかじゃないけど……」

「は?」

 ルーナは鳩が豆鉄砲を食らったような目で俺を見た。


「……いや、まぁもう、そこは……置いといて」


 ルーナが自分の顎に手を当てて悩む。


「ローゼリア様、どこに行ったんでしょう。アッシュ様、追跡装置とかつけてないんですか?」

「残念ながら。追跡装置をつけると、ロゼの魔力でヒートアップしてぶっ壊れちゃうから、つけれてないんだよ」

「うわぁ……付ける気はあったんですね……」


「それより。俺を挑発しに来たわけじゃないだろう?」

「そうですね。フェリックス殿下とエドワード。ついでにレオナルドにも聞いてみましょうか。このへんは私が聞いてみます」


 フェリックスに会うのには色々面倒な手順がいる。

 彼は学生であるが、同時に第一王子だからだ。

 ルーナはヒロインだから、気安く会えるけれど――


「アッシュ様はそうですね。私の寮の女の子たちに話を聞いてみてください。ローゼリア様を見てないかどうか」

「普通は逆だと思うけど」


 男性が男性に話を聞く。

 女性が女性に話を聞くのがベストだけれど、まぁそこはいい。手っ取り早い方を選ぼう。


 何もなければいい。

 ロゼが例えばルーナの部屋に行く途中で誰かと話し込んでいたり、野良猫を追いかけていたりするのならそれでいい。彼女のイレギュラーな行動はいつものことだ。


 けれど、なにか嫌な予感がする。


「では、一時間後にここで待ち合わせしましょう」

「一時間で王子やその他諸々に会える?」

「そこは『ヒロイン』ですので、気にされなくても大丈夫です」

 ルーナはぺったんこな胸元に手を当てて、どやっとした顔で言った。



――一時間後。

 俺の部屋の扉の前で、ルーナは三角座りをしていた。


「あ、アッシュ様!」

 ルーナの表情には焦りが浮かんでいた。


「収穫はなかったみたいだね」

「……はい。そちらは?」

「こっちもロゼを見たって子はいなかった。嘘をついている様子の子はいなかったし……」


「全員には聞き取れていないんですよね」

「あぁ、そうだね。流石に一時間じゃきついよ」


「……でしたら、ちょいと私に心当たりがあります」

 ルーナは立ち上がり、お尻をぽんぽんと叩いた。


「反ローゼリア様派閥があるのはご存知で?」

「どの世界でもあったよ」


 反ローゼリア派閥。

 簡単に言ってローゼリアのことが嫌いなお嬢様達の集まりだ。


 王子が婚約者――その件についてふさわしいとかふさわしくないとか。

 お茶菓子の代わりにロゼの悪口で盛り上がる集団。

 その派閥から聞こえる悪口は、絶対にロゼに聞かせないようにしている。


「そちらは当たりましたか?」

「筆頭のお嬢様は当たってみた。自白の魔法もかけたけど、全然反応がなかったから――」

「さりげなくエグいことしてますね……」

 ヒロインちゃんの顔は青白くなっていた。


「……正直、何らかの事件に巻き込まれている可能性が高いです。この3時間、何処にもローゼリア様がいないのですし……」

 俺もそれは思っていた。

 さすがのロゼでも夜中に3時間も野良猫をおいかけていたりはしないだろう。


 何処かに隠されている?

 ……いや、もっと視野を広くして――


「学園の門番に聞いてみるか……」

「そうですね。学園内にいるとは限りませんから……」


 俺とルーナは転移魔法を使って、学園の門番の前へ転移する。

「すみません。聞きたいことがあるんですが。金色の髪で青い瞳の可愛い女生徒を見ませんでしたか? 身長はこれくらいで……」

 ルーナが話を聞く。身振り手振りで尋ねる。


 俺は小さく自白の魔法をかけた。

 嘘や誤魔化しは通じない。


「女生徒は見ておりませんが、一台の馬車が出入りしたのを見ました」

「何の馬車でした?」

 ルーナが聞く。


「……普通に、学園に食材を届ける業者でしたので通しました。でも、なんだか今日は急いでいましたね」

「中は見なかったんですか?」

「学園に入れるパスポートを持った業者でしたから」


「……その業者の連絡先を教えて下さい。今日、本当に入荷があったのか聞いてみます」

 ルーナは真剣な顔で、門番から聞いたことにメモをとっていた。

 俺は別のことを考えた。


 もしもロゼが学園の外に出ている――攫われてしまっていたら。

 ヴィンセントという駒を通して裏の人間を動かしたほうが早い。


「《転移》」

 俺は唱えた。行く場所はヴィンセントの元。


「あっ、ちょっ! 私もついていきますっ!」

 魔法が発動する瞬間、ルーナが俺の腕にしがみついてきた。


 こうなったら一緒に転移してしまう。

 ルーナにあれこれ聞かれるのは面倒だ。邪魔するようなら眠ってもらおう。


 何よりも俺は彼女の心配をしないといけない。

「……ロゼ」

 俺は愛しい人の名を呟いた。


 どうか、無事で。



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