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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第七章 愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に】
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子猫と狼の追いかけっこ SideA

 ヒロインちゃんの行動は、だいたいわかる。

 だから俺は彼女との取引に同意した。

 ロゼはすっかり忘れてしまっているようだけど――


『ローゼリア・マリィ・クラインはフィリックス殿下の婚約者である』


 まずはこのでかいハードルをどうにかしないといけない。


 正直、国なんてどうでもいいから、ロゼを掻っ攫ってしまいたい。

 でもロゼは家族を愛しているし、そういうことを許してくれないだろう。


 フィリックス――正直彼の行動はよくわからない。

 この世界のフィリックスは、ローゼリアにいきなり求婚した。

 フィリックスは毎回行動を変えてくる。

 まぁ、簡単に言えば。あの王子も超ど天然なのだ。


 気分屋なところがあり、面白いことには何処までも興味を示す。

 逆に不快と思えば、何処までも追いかけて排除する。


 そういう人格者。

 王の器にはピッタリだ。


 その王のお気に入りであるローゼリア。

 ここを解決するためにルーナは動いているのだろう。

 正直俺もこの問題はめんどくさいと思っていたから有り難い。

 

 さて、ヒロインちゃんはどう動くのか。

 フィリックスを色気で誑かすのか。そうしたらフィリックスルートに入り、ローゼリアは断罪されてしまう。

 あのヒロインちゃんの様子は――王子ルートを目指しているような感じじゃなかった。

 まるでハードルを飛び越えるように、軽々越えてくれるんだろうか。


――さぁ、ヒロイン力。試させてもらおうか。



◆

 と、思いながら待った三日後は果てしなく長く感じた。


 ロゼは好きと迫って以来、猫の様にシャーシャー言って俺から逃げる。

 でもたまに「アッシュの紅茶が飲みたいわ……」と顔を赤く染めながら近寄ってきて、素直になる。

 ……これもういいんじゃないか。両思いって思ってもいいんじゃないか?

 だめか。だめなのか。


――ありがとう。アッシュ。……私は、貴方が好きよ。


 彼女が創造主の力を行使して、俺の想いを否定しようとした時、初めてロゼから聞いた「好(・)き(・)」という言葉。

 あれは敬愛の意味での好きだろう。

 また、今までもお菓子を作った時などに「大(・)好(・)き(・)大(・)好(・)き(・)」と言われたこともあるけれど、それはお(・)菓(・)子(・)を(・)作(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)俺(・)が(・)大(・)好(・)き(・)であって、愛(・)し(・)て(・)い(・)る(・)の(・)大(・)好(・)き(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。


 ロゼに求める答えはイエスのみ。

 ノーなんて答えたら、その場で口を塞いでやる。


 ヒロインちゃんが動き回った三日間。

 その後も返事はなかったので、三日目の朝からお嬢を追い回した。

「好きですよ、お嬢」

「やだ、もうやだぁあ!」

 ロゼは廊下を全力疾走で逃げる。

 俺も全力疾走で追いかける。


「《浮け》」

 ロゼが風魔法を使って外に逃げようとする。

「《木々よ》」

 俺は土魔法を応用させ、木の枝を操り、彼女の足を絡め取る。


「あーーーーんっ!」

 ロゼは片足だけ木の枝に捕まり、逆さまにぶら下がってしまった。

 服まで逆さになり、下着まで丸見えになってしまう。

「今日のパンツは、ピンクですね」

「ぶっころす!」

「お嬢、令嬢がそんな言葉を使ってはいけません」

「使わせてるのは誰よ!」


 といいつつ、他のやつらに見られないように土魔法を解いて、お嬢をお姫様抱っこする。


「――っと、捕まえました」


 俺がそう言うと、ロゼは顔を更に真っ赤に染め上げて、うつむいた。


「降りますか?」

「…………」

 おや、ロゼの反応がいつもと違う。

 いつもなら『早く降ろしなさーい!』と激怒するのに、今日は大人しい。


 やっぱり言葉で伝えまくる作戦は成功か。

 鈍感なロゼに想いを伝えるには、正攻法。今まで回り回っていたけれども、やっとたどり着けた。

 と――油断した瞬間だった。


「えいっ!」

 とロゼが俺の口の中に何かを突っ込んできた。

 なにかわからないほど小粒のもの。口内ですぐ溶けたから、薬かラムネか。


「降ろしなさーい!」

 ロゼが真っ赤な顔のまま言う。

 俺は素直に彼女を降ろした。


「……なに飲ませたんっすか」

「ふ、ふーん。貴方がしつこいから、魔法薬を使ってやったのよ」

「ほぅ」


 どうやらロゼお嬢様はもっといじめられたいらしい。


「なに盛ったんっすか?」


「おほほほ! 貴方が最近やたらと連呼している『好き』とか『愛している』の言葉を言わせない薬よ。逆(・)惚(・)れ(・)薬(・)ってところかしら」


「――ってことは、つまり……俺がお嬢のことを」

「そう。私のことをき、きらいになる薬なんだからっ!」


 ほう。

 なるほどなるほど。


 そこまで拒絶するか。俺の愛を。

 なら、徹底的に付き合ってやろう。


「今から貴方は意識を失うわ。そして、目が覚めたら私のことを……き、嫌いな従者になってるはずよ。効果は……長くない……だから……だから……」


 薬が効いてきたのか、お嬢の声が遠くなる。


「……もうちょっと、勇気を出す時間をちょうだい……」


 弱々しい声で、お嬢は言った。

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