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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第七章 愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に】
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子猫と狼の追いかけっこ SideA

 ヒロインちゃんの行動は、だいたいわかる。

 だから俺は彼女との取引に同意した。

 ロゼはすっかり忘れてしまっているようだけど――


『ローゼリア・マリィ・クラインはフィリックス殿下の婚約者である』


 まずはこのでかいハードルをどうにかしないといけない。


 正直、国なんてどうでもいいから、ロゼを掻っ攫ってしまいたい。

 でもロゼは家族を愛しているし、そういうことを許してくれないだろう。


 フィリックス――正直彼の行動はよくわからない。

 この世界のフィリックスは、ローゼリアにいきなり求婚した。

 フィリックスは毎回行動を変えてくる。

 まぁ、簡単に言えば。あの王子も超ど天然なのだ。


 気分屋なところがあり、面白いことには何処までも興味を示す。

 逆に不快と思えば、何処までも追いかけて排除する。


 そういう人格者。

 王の器にはピッタリだ。


 その王のお気に入りであるローゼリア。

 ここを解決するためにルーナは動いているのだろう。

 正直俺もこの問題はめんどくさいと思っていたから有り難い。

 

 さて、ヒロインちゃんはどう動くのか。

 フィリックスを色気で誑かすのか。そうしたらフィリックスルートに入り、ローゼリアは断罪されてしまう。

 あのヒロインちゃんの様子は――王子ルートを目指しているような感じじゃなかった。

 まるでハードルを飛び越えるように、軽々越えてくれるんだろうか。


――さぁ、ヒロイン力。試させてもらおうか。



 と、思いながら待った三日後は果てしなく長く感じた。


 ロゼは好きと迫って以来、猫の様にシャーシャー言って俺から逃げる。

 でもたまに「アッシュの紅茶が飲みたいわ……」と顔を赤く染めながら近寄ってきて、素直になる。

 ……これもういいんじゃないか。両思いって思ってもいいんじゃないか?

 だめか。だめなのか。


――ありがとう。アッシュ。……私は、貴方が好きよ。


 彼女が創造主の力を行使して、俺の想いを否定しようとした時、初めてロゼから聞いた「()()」という言葉。

 あれは敬愛の意味での好きだろう。

 また、今までもお菓子を作った時などに「()()()()()()」と言われたこともあるけれど、それは()()()()()()()()()()()()()()()であって、()()()()()()()()()()()()()


 ロゼに求める答えはイエスのみ。

 ノーなんて答えたら、その場で口を塞いでやる。


 ヒロインちゃんが動き回った三日間。

 その後も返事はなかったので、三日目の朝からお嬢を追い回した。

「好きですよ、お嬢」

「やだ、もうやだぁあ!」

 ロゼは廊下を全力疾走で逃げる。

 俺も全力疾走で追いかける。


「《浮け》」

 ロゼが風魔法を使って外に逃げようとする。

「《木々よ》」

 俺は土魔法を応用させ、木の枝を操り、彼女の足を絡め取る。


「あーーーーんっ!」

 ロゼは片足だけ木の枝に捕まり、逆さまにぶら下がってしまった。

 服まで逆さになり、下着まで丸見えになってしまう。

「今日のパンツは、ピンクですね」

「ぶっころす!」

「お嬢、令嬢がそんな言葉を使ってはいけません」

「使わせてるのは誰よ!」


 といいつつ、他のやつらに見られないように土魔法を解いて、お嬢をお姫様抱っこする。


「――っと、捕まえました」


 俺がそう言うと、ロゼは顔を更に真っ赤に染め上げて、うつむいた。


「降りますか?」

「…………」

 おや、ロゼの反応がいつもと違う。

 いつもなら『早く降ろしなさーい!』と激怒するのに、今日は大人しい。


 やっぱり言葉で伝えまくる作戦は成功か。

 鈍感なロゼに想いを伝えるには、正攻法。今まで回り回っていたけれども、やっとたどり着けた。

 と――油断した瞬間だった。


「えいっ!」

 とロゼが俺の口の中に何かを突っ込んできた。

 なにかわからないほど小粒のもの。口内ですぐ溶けたから、薬かラムネか。


「降ろしなさーい!」

 ロゼが真っ赤な顔のまま言う。

 俺は素直に彼女を降ろした。


「……なに飲ませたんっすか」

「ふ、ふーん。貴方がしつこいから、魔法薬を使ってやったのよ」

「ほぅ」


 どうやらロゼお嬢様はもっといじめられたいらしい。


「なに盛ったんっすか?」


「おほほほ! 貴方が最近やたらと連呼している『好き』とか『愛している』の言葉を言わせない薬よ。()()()()ってところかしら」


「――ってことは、つまり……俺がお嬢のことを」

「そう。私のことをき、きらいになる薬なんだからっ!」


 ほう。

 なるほどなるほど。


 そこまで拒絶するか。俺の愛を。

 なら、徹底的に付き合ってやろう。


「今から貴方は意識を失うわ。そして、目が覚めたら私のことを……き、嫌いな従者になってるはずよ。効果は……長くない……だから……だから……」


 薬が効いてきたのか、お嬢の声が遠くなる。


「……もうちょっと、勇気を出す時間をちょうだい……」


 弱々しい声で、お嬢は言った。

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