愛している証明(6)SideL
あらすじの段階で三人の視点でお送りしますって書いていたんですが、やっと三人目の視点を披露できました(キッドは除く)
ヒロインルーナ視点です!
憧れの異世界転生! しかも私の大好きな『星靴』の世界に、ヒロインとして!
私が転生前の記憶を取り戻したのは、入学一週間前だった。
死因は覚えていない。なんとなくトラックに引かれたような気がするくらい。
前世に思い入れはあるけれど、こうなったもんは仕方ない!
私はこの世界を満喫してやる!
「フェリックスルートは……えっと学園で入学生代表としてスピーチをしたあとに選択肢があるのよね。そこから入れるから……。
フェリックスかぁ。第一王子だから、王妃になるのかぁ。私にそんなのできるかしら……まぁ、任されるならやるけど」
フェリックスは魅力的なシンデレラストーリー。
王子様と恋に落ちて、国中から祝福されるルート。
「で、レオナルドルート。これはフェリックスルートからの分岐になるから、一旦置いておこう。寡黙な男は好きだけど、寡黙過ぎるのは苦手なのよね。間が持たないから」
紙に書きながら、色々と考える。
「エドワードルート。怪盗とドキドキしながら恋のスリルを楽しむ……。最高なんだけど、候補としては第二候補かしら」
捨てがたい。
ロマンが溢れるルートだから、行きたいのはやまやまなんだけど……時と場合による。保険として考えておこう。
「で、ヒューゴルートと人造人間ルート。この2つは夢があって好きなんだけど……せっかくの魔法世界で科学を共に研究していくのは……もったいない気がするわ」
ヒューゴと共に国から科学を認められる世界だった。
でも、せっかく魔法があるのに。と思ってしまう。
「……そして私の大好きなヴィンセントルート。……はぁ、ヤンデレ尊い。休みの日に裏街と通っていたら輩に絡まれて、連れ去らわれちゃうのよね。心の底まで愛してもらえるのは嬉しいんだけど……でも、言葉の選択を間違えただけで死にかけたり、行動を拘束されるのは嫌だわ……。殺し屋は論外。吟遊詩人は裏キャラだから、フラグが出るかも不明……ってことは、一番いいのはフェリックスルートかしら」
現実的に考えて、一番いいルートはフェリックスルートだ。
その日、私は徹夜で『星靴』のストーリーを一冊の本に書き起こして、翌日腱鞘炎になった。
でも、これで世界をいつでも振りかえれる――
◆
――と、思ってたのに……なんじゃこりゃ。
フェリックスは悪役令嬢であるローゼリアに好意を寄せているし、なにより、悪役令嬢周りがすごく代わっている。
モブ従者だった悪役令嬢の従者――アッシュはなんかすごくやばいオーラを出している。あれだ。ヤンデレオーラだ。俺のお嬢様を見たら殺すって感じの目で見ている。
その一方で、悪役令嬢――ローゼリアはぽややーんとしていた。
おっとりしているとみせや、一言で周りの悪口を制止したり、私――ルーナの悪口を言う女生徒に紅茶をぶっかけたり。
えっ……ローゼリア様、かっこいい。
私は思った。
ローゼリアルートがないかどうか。
ローゼリアルートがあるなら、ずっと一緒にいたい。友達として、親友として、かけがえのない存在になりたい。でも、物語にはなかったはず。
……というところで、ふと気がついた。
ローゼリアは、裏ルートである吟遊詩人ルート以外では全て『死亡』する。
あんなに可憐な少女の死が確定されている。
ゲームの中のローゼリアは、背が高く、ボディーラインも完璧で、美しかった。
でも目の前にいるローゼリア様は……その、すごく小さかった。
宝石のようにキラキラ輝く青色の瞳に、ウェーブのかかったもふもふの髪。そして何故か身長は低いのに、バストとお尻はすごく立派であった。
一言でいうと……なんか、ポメラニアンみたいな人だなと思った。
でも可愛いのは間違いない。
私――ルーナは心の中で誓った。
このポメ――ローゼリア様は、私が守り抜くと。
私を庇ってくれた、格好いいローゼリア様を誰にも殺させないと。
……と思ってたんだけど。
ローゼリアの従者であるアッシュから聞かされた言葉は想像を絶する言葉だった。
なんと、ローゼリア様はこの『星靴』のゲーム作者様だったのだ。
ローゼリア様神と思っていたら、本当に神だった。
そして、ローゼリア死亡回避会議が行われたけれども――
「ローゼリア様を助ける鍵は貴方が握っているんですよ、アッシュ様」
と、はっきりと答えは出てしまった。
けれどふと考える。
アッシュは私に睡眠薬を盛ったりすることを躊躇なくできるタイプの人間だ。
ゲーム世界でのモブアッシュはそんなことしなかった。
ただ「へいへいお嬢」といって、お嬢様の後処理をする感じの人だった。
なのに、なんだアイツ!
私のローゼリア様にベタ惚れじゃないか! しかも何回も世界をループしているなんてチートすぎる!
でも何度も主人の死を見て、彼女を助けるという執着心が増したのだろう。多分。
愛が深い。重い。
ヴィンセントなんて比にならないくらいヤンデレだ。
そして、ローゼリア様。
すーーーーーーーーーーーーーっごい鈍感なお嬢様だった。
『アッシュは私の創ったキャラだから、私を好きになるようにインプットされている』
彼女はそう持論をかますけど、私には言い訳にしか聞こえなかった。
ところどころ話を多方面で聞いてみたら、案の定ボロがでた。
ローゼリア様はアッシュのことが大好きで。
アッシュはローゼリアのことを病むくらい愛している。
……なんだこのバカップルの茶番は。
でも他人の恋愛模様ほど見ていて面白いものはない。ドラマだってそうだ。
「――は、恥ずかしいの! 今更、なんて言えば……!」
と顔を真赤にして言うローゼリア様はとても可愛らしかった。もう抱きしめてチューしたいくらい可愛かった。
恋する乙女というのはこんなにもキラキラしているのだろうか。
私は大きな声で宣言した。
「私はルーナとしてではない、自分の意思を持っています。私個人の主観では、ローゼリア様は超超超超超鈍感ド天然のお嬢様で、そして――超超超超超超拗れたツンデレちゃんです!!」
するとローゼリア様は顔を真っ赤にさせて、涙目になって、足をがくがくと震わせて、
「あ……あうぅ……あっ……ひぃいいんっ」
っと言って、布団に潜り込んでしまった。
◆
ということで、恋するお嬢様の想いを自覚させることに成功した私。
ローゼリア様の想いを叶える。そして、彼女を死亡させない方法。
その鍵はアッシュが握っているだろう。
私はローゼリア様の部屋の扉を開けた。
すると案の定ドアの前でアッシュは待っていた。
「盗み聞きですか?」
「いや、聞いてないよ。スキルを使ったら聞けるけど、その必要はないと思って」
「……ふぅん」
ちょっと余裕な感じが腹立つけれど、この従者――アッシュも何回もループしている間、ずっとお預けをされていたのだ。同情する。
でも、ローゼリア様が恋心を自覚した今、こいつがどういう行動に出るかわからない。
実際に『お前の想いは思いこみ』という力技の魔法を使われて、腹を立てているだろう。だから、ちょっと彼の話も聞いてみようと思った。
「ローゼリア様からだいたいの話は聞きました。少し貴方に聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」
「女生徒と二人きりになって、ロゼに誤解されたくないんだけどなぁ」
「じゃあキッドくんを立てましょう。それで二人じゃありません」
「都合よくお嬢の熊を使うね。わかった。……じゃあ君からいまのお嬢の状態を教えてほしい」
「大事なことは言いませんよ? それは本人が言うことですから」
「もちろん。人づてで聞きたいとは思っていないよ」
笑顔を浮かべるアッシュ。その笑みは笑ではあるんだけれど――オーラがすごくどす黒かった。
一晩でゲームシナリオを小説にできるくらいまとめきれる(一字一句間違いなく)ルーナ。
もうその時点で彼女はチート主人公です。
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