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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第六章この世で一番正しいもの】
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愛している証明(5)SideR

男性(ケダモノ)は出ていってください!」

 そう言って、ルーナは私とアッシュを引き剥がし、アッシュを無理やり外にひっぱりだした。もちろん魔法を使って。


「《施錠(ロック)》」

「大丈夫ですか? ローゼリア様! あぁ、怖かったでしょう! アッシュ……この前から怪しいやつだと思っていましたが、まさかこんな強行手段に出るなんてっ!」

 ルーナは私をぎゅーっと強く抱きしめてくれた。


「まったく。あいつがローゼリア様のことを好きなことには気づいてましたが、こんなに早く手を出すなんて……」

 ルーナは怒っていた。


「き、気づいていたの!?」

「えっ……逆に気づいていないとお想いでしたか? あの男はどう見ても、ローゼリア様のことを好きですよ」

「LIKEな意味でよね?」

「もちろんLOVEの意味ですよ」


 私はくらっとした。


 まだ出会ったばかりのルーナに悟られるほど、アッシュの思いはむき出しだったのか。

 そして、私はそれにギリギリまで気づかなかった。


 でもーー


「でも、アッシュの感情は私が設定したものなの! 繰り返す世界を一緒にいようって、それできっと共依存関係になってたから――」

「……なにかしたんですか?」


「彼の想いを《創造主(かみさま)》の権限でリセットしたわ」

「……あー。なるほど。はいはい。ある程度わかりました。うん。なんといえば良いんでしょうねぇ」


 ルーナは両腕を組んで、うーんと唸る。


「ローゼリア様は、アッシュの何を受け入れられないんですか? 『顔』ですか?『性格』ですか? まぁ性格はめちゃんこ悪いと想いますけど、あの男は」


「そもそも……アッシュは私が創った人だから……。私が都合よく操ってるだけかもしれないじゃない? 私を好きになってほしいって想いが、《創造主(かみさま)》権威のまやかしになって、彼から正気を奪っているのかもしれないし……」


「ヤツは元々正気(まとも)じゃないですけどね……睡眠薬の件は一生忘れません」

「え? 睡眠薬?」

「あ、こちらのお話です。えぇっと、話を戻しましょうか」


 ルーナがソファーの横に座った。

 一応対面のソファーもあるんだけど、ルーナは私の横から離れず、ずっと私の腕を掴んでいた。

「ローゼリア様、薔薇子様のほうがいいですかね、薔薇子様は――」

「薔薇子はもうやめてぇ……」

 顔から火が出てしまいそうなほど恥ずかしかった。

「ではローゼリア様で。ローゼリア様は、私のことをどう思ってますか?」

「えっと、ヒロインで、綺麗で、思っていたよりも気が強くて、思っていたよりも勇気のある方だわ」

「ありがとうございます。では、ローゼリア様。貴方にとって私は意思を持って動いている『人』に見えますか?」


「見えるわ」


「それは何故ですか?」


「だって、同じ世界から来た人だから……。私の創った物語も知ってくれているし」

「うん。そうですね。じゃあ、アッシュは意思を持って動いている『人』に見えますか?」

「…………」

 正直言うと、わからなかった。


「黙るということは、完璧に違うと思っているわけじゃないんですね」


「えぇ。ところどころ変な行動をしたり、私の想定外の動きをしてくれたりするわ」


「では、アッシュ以外の人は、みんな意思を持って動いていると思いますか?」

「思いたい……けど、わからないわ。ルーナはどう思う?」


「私は意思をもって動いていると思ってます」

「どうしてそう思えるの?」


「だって、新しい世界ですよ。そんな理屈こねこねしないで、幸せなセカンドライフを目指したいじゃないですか!」


 ルーナはキラキラとした目で語った。

 私もそう思いたかった。


 でも、どうしても私が《創った》という認識がちらつく。

「……ほーん。ふむふむ。はいはいなるほど」


 ルーナは渋い顔をした。

「(確かにここまで鈍感だったら、苦労するわ、アッシュ……ぷぷぷざまぁみなさい)」

「えっ? ルーナ、何か言った?」

「いいえ、ちょっと思ったことを口に出しただけですよ。おほほ」


「では、もう一つ、ローゼリア様に尋ねます。貴方が創ったテディベアーーキッドは、自分の意思を持って動いてると思いますか?」

「ええ。彼――キッドには好きに動いてくれるように直接魂を与えたから……」


「……魂。ふーむ。ヒューゴ先輩辺りが話にのってくれそうですね。まぁ、あとで聞いてみましょう。では、なんでキッドには魂と意思があって、アッシュには魂や意思を持っていないと思うんですか?」

「そ、それは……」


 キッドは私のことを慰めてくれたり、話を聞いてくれたり、怒ってくれたり、いろんな感情を持ち合わせている。

 なら、なんでアッシュはそうじゃないと思うのか。

 それはーー


「貴方が、そう、思いたいからですよ! ローゼリア様!」


 探偵漫画のように、ルーナからずびっと指を立てられた。


「私の乙女ゲーきゃっきゃうふふライフが始まると思ったら、それ以前に、こんな問題があったなんて。まぁ、私はNL(ノーマルラブ)が好きなので、いくらでも応援しますけども……」


「で、でも……でもね、アッシュは私としかループについて話す相手がいなかったから、私とアッシュは共依存にならざるを得なかったというか」


「あれですか? 学校っていう閉鎖空間で、なんとなく周りが囃し立てて、カップルになってしまう、あの現象のような?」


「ちょっと違うわ。似ているけど」



「はぁああぁあああぁああああああ~~~~~~~~~~~~~」



 ルーナのどでかいため息が響き渡る。

 え。私、そこまで変なこと言った?


「それで、リセットしたと。はぁ。そりゃ彼も怒りますわ。……ちょっと納得です。私のローゼリア様に手を出そうとしたことは許しませんけど」

「うぁ……えっと、えと……」

 なんだかすごく呆れられている。


「ずばり、聞きます。前世での恋愛経験はありますか?」

「な、ないわ」


「誰かを好きになったことは?」

「クラスで一番足の早い男の子に憧れたことくらいは……それ以上の好きはないわ」


「つまり恋愛経験はゼロと」

「るる、ルーナはどうなのよ!」

「私も経験豊富というほどではありません。ゲーム大好きなオタクっ子でしたから。付き合ったのも中学生時代に周りに囃し立てられて2週間だけくっついた人がいたのと、社会人になって半年ほど付き合った人がいるくらいで。でも薔薇子様の創ったゲームのときめきには敵いませんでしたけど、はぁ……」

「ば、薔薇子様はやめて!」


「こりゃ、アッシュがこじらせるのもわかります。アッシュは好きな人から、『貴方の思っている感情はまやかしで、その想いは間違い』だと()()()()否定されたんですから。そりゃ怒りますよ」


「……ど、どうしたらいいの? こういう場合」


 私が戸惑っていると、ルーナはそっと私の手を握りしめてくれた。


「本当のことを聞かせてください。ここには私と貴方しかいません」

 真剣な眼差し。夕日色の瞳が私の姿を映し出している。


「貴方は、アッシュのことが好きですか?」


「ーー好きよ。大好き。彼を思うと胸が痛くなるの。焼けそうになるの。彼がもし今後、他の女の人をみると思うと、たぶん嫌な気持ちになると思う。LIKEの好きじゃなくて、LOVEの好き……だと思う」


「すごい。ローゼリア様。私、金平糖を一瓶一気食いしたときのような気分になります」

「どういう……」

「口から砂糖を吐きそうな気分です」

「そ、そんな、えっと、そんなに?」


 長く、さらっとした銀の髪をかきあげて、ルーナは言った。


「貴方は自分で創ったキャラであるアッシュに恋をした。

 それも本気の恋を。で、相手も同じ様に思ってくれているのに、

 それがまやかしであると告白自体を否定したんです」


「でも、アッシュはゲームの――」

「それは言い訳です! いいですか? ローゼリア様、あんまり素直にならないのでしたら、私がアッシュをとっちゃいますよ?」

「……――っ」

 アッシュの横を並ぶルーナを想像する。

 嫌だ。

 アッシュとキスしているルーナを想像する。

 やだ。

 アッシュと想い、見つめ合う二人を想像する。


 ぐっと、涙がこぼれそうになった。

 嫌だ。

 今までのように、私だけを見てほしい。

 アッシュには、ずっとずっと私を見てほしい。


 こんなワガママで拗らせた女だけど、それを全部受け止めると言ってくれるアッシュを、幸せにしてあげたい。

 だけど――

「で、でも、でもでもでも!」

「なんですか? ローゼリア様」

 ふふん、と鼻で笑うルーナ。


「――は、恥ずかしいの! 今更、なんて言えば……!」


「うふ、あは、あはははははっ! やっと気づいてくれたんですね。アッシュなんて、拗れて拗れて仕方なかったでしょう」


 大きな声でルーナは笑った。お腹を抱えるくらい。


 そしてまた『ずびしっ』と指を立てて、言い放った。


「ローゼリア様、貴方は普通の女の子です。アッシュも普通の……うん、まぁ、普通の男です。だから、同等に恋をする権利はあるんです。でもローゼリア様はそれを怖がっている。今までの関係を壊したくないから」


「うぐっ」


 図星を突かれた。


「私はルーナとしてではない、自分の意思を持っています。私個人の主観では、ローゼリア様は超超超超超鈍感ド天然のお嬢様で、そして――()()()()()()()()()()()()()()()()です!!」


 ルーナは自分の胸に手を当てて、はっきりと言葉にした。


小難しいことを言ってローゼリアは愛の証拠やら証明やらと誤魔化していましたが、

ただただ、好きってだけのことです。

ルーナが話を引っ張ってくれて嬉しいです!


気に入っていただけましたら、★★★★★評価お待ちしています。

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