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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第六章この世で一番正しいもの】
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愛している証明(4)SideR

――おかしい。

 アッシュの想いは《創造主(かみさま)》の権限で消したはず。


「ローゼリアお嬢様のことが本気で好きなんですが、どうすればいいでしょうか?」


 なのに何故、こうなってしまっているのだろう。


 私はティーカップを落としてしまった。

 ガチャン、と割れた音が響く。私の服にも紅茶が飛び散った。でもそんなの気にならないくらい、アッシュの言葉が脳裏を占領していた。


 どうすればいいでしょうか?

 そんなの錯覚だから、いっぱい食べて、一回寝たら治るわよ。

――と言いたかったけど、アッシュのいたずらっ子のような瞳を見ると、なんにも言えなくなる。


「あーあ、いきなりカップを落とすなんて。お嬢、ちょっと動かないでくださいね。あと好きです」


――あと好きですって何!?

 アッシュは丁寧に私の服からシミを取り、ガラスの破片を集め、ウエスで拭き上げる。さすが従者。慣れた仕草で全てをピカピカに戻してしまった。


「お嬢、質問に答えていただけませんか?」


――質問? あぁ、どうすればいいのでしょうか? って質問のことかしら。

 そんなもの、私のほうが知りたいわ!

 どうすればいいの!?


 私はアッシュが好きだ。

 ずっと一緒に居てくれて、ずっと支えてくれた彼が大好きだ。

 それをさっき実感したばかりで。

 でもその想いは消したはずなのに――どうして!?


「き、きっと、錯覚よ!」


 私の声は震えていた。

 本当は私も好きよ、と言いたかった。

 でもアッシュがローゼリアではなく『私』を愛しているという証拠は? 証明は?


 私はただのOLで、ただのコミュ障で、ただの陰キャな女だ。

 ローゼリアというキラキラな女の子の容姿を与えられても、中身はやっぱり変わらない。


「そんなはずないです、俺は世界中の何よりも、お嬢のことが好きです」

「……~~~~っ!」

「どう言ったら信じてくれます? キスをしたら、信じてくれますか? 愛してますから」

 アッシュが私の肩を掴んで、顔を近づけてきた。

――あ、まつげすごく長い。瞳も金色でとても綺麗。

 って、いやいやいやいや! そんな場合じゃなく。


「~~~~っ! だ、だめ!」


 私は両手のひらを使って、彼を押し出した。


「お嬢は俺のことが嫌いですか? 俺は好きです」

「う、ううううう~~~~」


 嫌いじゃない。むしろ大好きだ。

 でも、口に出したら今まで抱えていた想いが全部崩壊してしまう。好きと言って、抱きついてしまえたらどれだけいいか。いや、そんな恥ずかしいことできない。

 だって、彼の言う『好き』も、冗談の一つかもしれない。今までのような、冗談の一つ。それにしては言い過ぎだけども。


「……ほんき、なの?」

「ええ。本気の本気です。貴方の頭の先から、つま先まで、そしてその魂の奥底まで、全部全部愛しています」


 くらっとした。

 そんなに愛してくれている……の? 本当に? 

 私もよ、と言ったら『嘘でした』なんて言わない? いや、言わないな。アッシュはそんなたちの悪い冗談は言わない人だ。


 じゃあなんだ。

 本当に彼は私を愛しているの?


 あ、たぶん違うわ!

 きっと、想いを消す時にエラーが出てしまったのよ。

 きっと彼の想いはバグで――


「俺の気持ちが、欠陥だとお想いですか? 大好きですよ、お嬢」

「ぁっ……えっ、あぁあ……」

 想いを見越されてしまっている!


「貴方が、俺の気持ちを無理やり消そうなんて強硬手段を使わなかったら、こんな強行手段は使いませんでした。あ、大好きです」


「うぁ、……うううううっ~~~! つ……付け加えるように好き好き言わないでっ!」


「本当のことですから。大大大好きですから。ローゼリア様。いや、ロゼ」

「あだ名で呼ぶことは許してないわ!」

「俺は義兄なので、貴方をあだ名で呼んでも不敬にはなりませんので。あ、好きっす」


「んもぉっ! ちょっと、ちょっと、ちょっとぉおおおお!」

 頭がぼーっとする。熱い。

 心がざわざわする。この気持ちの正体はなに?

 

「言葉だけじゃ足りないというなら、何でもしますよ。つま先にキスでもしましょうか? 好きですから」

「や、もうっ! そうじゃなくてっ!」

「じゃあ、どうやったら信じてくれますか? この俺の想いを。好きっていう気持ちを」

「……あぅううっ……あ、えっと……」

 相手の気持ちを知る。頭の中を調べる。

 そんなのわからない。どうすればいいかわからない。


 遠い昔、ヒューゴが言っていたことを思い出す。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 信じればいいの?

 アッシュの想いが本当だと。


 確かに彼の眼差しは本気だ。口元はにやけているけれど、その瞳の奥は本当に真剣で……。


「あぁ、ロゼ。俺は貴方に触れたくてたまらないです。好きなんです。ずっと、何年も、何百年もこの想いを抱えてきました。

 でも貴方は気づいてくれなかった。だから、いま『言葉』に出して言います。

 俺――アッシュはローゼリアのことを生涯かけて愛すると誓うと」


 そ、それは……結婚の言葉では……!?


 もう頭がいっぱいいっぱいで、引いたはずの知恵熱がぶり返してしまいそうだった。

 

 そもそも愛って何?

 恋って何?


 正しい愛って何? 正しい恋って何?

 証明を。だれか、恋の方程式を、愛の方程式を教えてほしい。


「わ、わたし……」


 ゆっくり言葉を紡ぐ。アッシュの目がキラキラと輝いている。

 下手なことは言えない。冗談だなんて言うのは彼の告白に対する侮辱になってしまう。

 でも、でもでもでもっ!


「こ、こここ、心の準備がまだだから、ちょっと、まってほしいわっ……!」


 私は頑張って声を出した。


 その瞬間、アッシュに押し倒された。ソファーの上の狭い場所に。


「もう、飽きるほど待ちました。だから、待ちません。好きです。ロゼ」

「う、ううぅうううう~~! えっと、えっと、えとえとえとっ……!」

「好きです。愛しています。今すぐ貴方を手に入れたいくらい」

 彼は私の顎をくいっとあげて、顔がどんどん近づいて、私は思わず目を瞑ってしまった。


「……くすくす。可愛いロゼ。それは受け入れてくれるって証拠っすね。愛してます」


 目を瞑ったのは、キスを受け入れるってこと!?

 いや! いやいやいや、そうじゃないの。

 心では駄目と想っている。でも身体はアッシュが好きでたまらない、と拒絶することができない。


 あと5センチ、3センチ、1センチーー


 彼の吐息を感じられるくらい近づいたところでーー


「な、何してるんですかーーーーーー!!!!!」


 いつの間にか部屋を訪ねていたルーナの絶叫が響き渡った。

開幕です。


シリアスはやりきったので、ここからはこのテンションでお送り致します!


気に入っていただけましたら、★★★★★評価お待ちしています。

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