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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】『あなた』が『わたし』にくれたもの
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あなたに恋してる証明 SideA

 もう何度繰り返しただろうか。

 もう何度ロゼの死を見届けただろうか。


 前の記憶を使って、先回りして、ロゼの言うところのフラグを潰していった。

 けれど、ロゼはかならず16歳に命を落とす。


 正直狂いそうだった。

 『ロゼを助けるという想い』を放棄したら楽になれるんだろうか。


――約束のおまじない。アッシュもこの小指に自分の指を絡めて。


 どれくらい前のことだろうか。

 もうあの約束がいつのことか思い出せない。



 例えば、ロゼの最期を見届けて、別の人生を歩むという手段もある。


 でも、俺はきっと後悔し続けるだろう。

 そして、そんなことをした俺自身が俺を許さないだろう。





 その日はたくさんの星が瞬く夜だった。


 12歳のローゼリアは寝間着で立ち上がって

「アッシュ、流れ星を見に行きましょ!」と言い出した。


 俺とロゼは何度も繰り返すうちに、魔力も能力値もスキルも、常人のレベルを越していた。だから、二人で気配を消す隠密スキルを使って、外に出た。


「どこにいくんですか?」

「うちの裏の山よ。今なら夜光花が咲いてるし、きっと蛍もいるわ!」


 夜光花は、その名の通り、夜にしか咲かない花だ。昼のうちに太陽の光を吸って、夜にぼぉっと光る。

 俺はロゼに手をひかれて、そのまま山道を登らされた。

 ロゼはひょいひょいとステップでも踏むように山道を登る。


…………


「ついたぁ!」

 ロゼが案内してくれた場所は、木の少ないなだらかな場所だった。

 一面に夜光花が咲いていて、白色や桃色、橙色、緑色、青色等、カラフルな色を放っていた。

 まるで虹の上を歩いているかのような気分になった。


「ねぇ、見て。アッシュ。ほら! 星が綺麗!」

 空には無数の星が光っていた。


 俺とお嬢は「あの星は~座」と言いながら指して、瞬く星を見た。


――その時、一つの流れ星が落ちた。


「あっ! 流れ星! お祈りしないと!」

「お嬢、流れ星は一瞬だから、お祈りを三回も唱えられませんよ」

「そうね。だったら――」


 ロゼは両腕を大きく開いて、

「《星よ》」

 と魔法を唱えた。

 夜空にまた一つ流れ星が走った。


「ありゃ、唱えてる前に消えちゃうわね」

「俺が唱えましょうか?」

「いいえ。大丈夫。私に任せて!」


 ぽんっと、ロゼは自分の胸に拳を当てた。


「《星よ》《星よ》《星よ》《夜空いっぱいの星を流れ続けて》」


 ロゼはたくさんの呪文を唱えた。

 すると流星群かと思えるほど、たくさんの星が流れ落ちてくる。


「さ、アッシュもお祈りして。私もお祈りするわ」


 お嬢は小さな声で、ぼそぼそとお祈りをしていた。


――俺の願いは……。

――ロゼが幸せになること。そして次にロゼと幸せになること。


 星に願って叶うものなら苦労はしない。

 けれど、彼女が魔法を使って流した星ならば、なんとなく叶えてくれるような気がした。


 ロゼは両手を結んだまま、ずっと目を閉じていた。

 ……キスしてもばれないかな。と思いながら、ぐっとその気持ちを抑える。


 かっとロゼの目が見開かれた。


「三回唱え終わったわ!」

「何をお願いしたんですか?」

 俺はお嬢に尋ねる。するとお嬢は顔を赤くして、ぷいっと俺から顔を逸した。可愛い。


「そういうアッシュはどんなお願いをしたの?」

「そうっすねぇ、俺はこれ以上お嬢が太らないようにとお祈りしました」


「きぃいいーーー! もっと自分のためにお願いを使いなさいよ!」

 お嬢はそう言って俺の胸元をぽこぽこと叩いた。


「じゃあ、お嬢は何を願ったんですか?」

「……の、……を……たわ」


 めちゃくちゃ小さい声で聞き取れなかった。

「あの、もう一度お願いします」


「あ、アッシュの幸せをお願いしたの!『アッシュが心から幸せになれますように』って。


 俺は呆然とした。

 ……まさか俺のことを祈ってくれているとは思わなかった。

 お嬢にとって、俺はただの従者だ。俺や使用人のことを同一視していると思っていた。

 


 でも、違っていた。

 お嬢は『俺のため』に願いを唱えてくれた。


 それがどれだけ嬉しかったか。

 無限に続く地獄を渡り歩き、俺は報われるのだろうかと、なにか代償くらいもらえないだろうか、と下心が芽生えたこともある。


 でも頬を赤くして、虹色の花達の上を歩く彼女を見ていると、そんなのどうでもよくなった。


 俺に目標を与えてくれた人。

 俺の友達になってくれた人。

 そして――俺に、感情を教えてくれた人。



 何度繰り返しても、この光景は忘れない。

 流星群も、虹色に光る花々も。

 そして、それを嬉しそうに、笑ってみている彼女を――


 どくんっと、心臓がはねたような気がした。

 締め付けられるように苦しく、そして甘い痛みが広がる。


――あぁ、これが恋なんだろうな。


 俺は初めて、彼女への恋心に気づいた。


過去編はこの辺で畳みたいなと思ってきています…。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 風景を思い浮かべて感動しました! めっちゃロマンチックですね☆ [気になる点] ロゼは辛い記憶だけ転生後に忘れている。とありましたが、ロゼは死後の宇宙?のような場所で毎度《再構築》と唱えて…
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