表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】『あなた』が『わたし』にくれたもの
40/78

自己と存在の証明 SideR


再構成(プログラム)

 それはこの世界を創った私だけが使える魔法。

『世界の中の設定(システム)を改変する』チートスキル。


 この魔法を使った時、私は宇宙のような空間を漂い、この世界を俯瞰(ふかん)で見ることができる。

 この空間には、星のような小さな輝きが無数に広がっている。

 星々をよく見ると、星ではなくすべて1と0だった。


 やろうと思えば、登場人物の運命を変えることもできる。そう、なんでも。

 ヒロインを破滅させることもできるし、攻略対象をいなかったことにもできる。


 ただ、なぜか配役をいじることはできない。

 だから私がヒロインになることはできないし、攻略対象になることもできない。

 私がローゼリアであることは確定している。


 今まで繰り返し(ループ)を経験してきたのは私だけ。

 じゃあ、お供を誰か選ぼう。


 攻略対象じゃない人。私の繰り返しに付き合ってくれそうな人。

 その時、頭に浮かんだのが――アッシュだった。


 気安くて、チャラい主人を尊敬していない従者。

 彼ならローゼリアの味方でいてくれるだろう。


「決めた。《再構成(プログラム)》。アッシュに『観測者(主人公)』権限を付与。

 シナリオも『観測者(主人公)』だから、改変することができるわ」


 繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し。

 何度も繰り返し、私の頭はおかしくなっていた。

 そして疑い深くなっていた。


 この世界は私が創った世界(ハリボテ)

 たくさんの脆いところがある。


 たとえばフェリックスルートに入ったあと、特定の場所に行くと、バグが出る。

 一人で『構造(ソース)』を考えていたし、『修正(デバッグ)』もしていたから、どうしても見落としがあった。


 バグが出るとどうなるか。世界が止まってしまうのだ。

 その度に私は《再構成(プログラム)》を使って、世界を修正してきた。

 穴が空いた水道管を塞ぐように。創造主(かみさま)というのは、意外と地味なのである。


「そして彼が起こした事象(バグ)は自動で《修正(デバッグ)》できるように、デバッガーアイテムを設定しましょ。うーん……私は彼の紅茶が好きだから、紅茶をアイテムにしようかしら」


 紅茶を飲むと、悪役令嬢の配役から外れた行動を取れる――そうしよう。

 アッシュは主人公だから自由に行動ができるし、その行動が未来を変えることもできる。


「アッシュなら、きっと私と敵対することはない……と思うけど。まぁ、そこは運次第ね。彼がどういう性格なのか、私は詳しく設定していないから」


――本当はもう繰り返したくなかった。

 この世界から解放されたかった。


 一人でくるくる廻る人形のように踊るのはもう嫌だった。


 だから、書き換えてしまった。創ってしまった。もう一人の観測者(主人公)を。

 そして、私が死ぬ――『観測』をやめることで世界がリセットされるんじゃなくて、アッシュが『観測』をやめることで、世界がリセットされるようにしよう。


 そうしたら、世界はもうちょっと広がってくれる。

 無理難題に付き合わせちゃった従者(アッシュ)に、幸せな未来を与えることもできるかもしれない。


「どうせ物語を始めるなら最初から……。じゃあ、私の頭も初期化(リセット)しましょ」


 一人の宇宙で、一人で呟く。

 答えてくれる人は誰もいない。壊れた私はここでオシマイ。


創造主(かみさま)』の視点と『観測者(しゅじんこう)』の視点。

 これで運命が変わるだろうか。……それとも、やっぱり私は悪役のままなのだろうか。



「《初期化(リセット)》」


 そして私はループの回数を数えずに、ループしていたことすら忘れた。

 こうして、私の()悪役令嬢ライフが再始動したのであった。



「よりにもよって、なんで中二病時代に創った黒歴史ゲームに転生しちゃったの!?」


 周りにある彫刻も、壺も、全部見たことがある。

 これは間違いなく、『星靴』の世界だっ!

 ゲームなんていっぱいあるのに、なんでよりにもよって――


 しかも、この顔……。

 私は立ち上がって鏡を見る。

 

――そこには長い金色の髪の女の子がいた。瞳は宝石のようにキラキラと輝いている。

「……どう考えても、ローゼリアよね」


 悪役令嬢ローゼリア。

 ヒロインをいじめて、どのルートでも死亡が確定している悪役キャラ。


――その時、突然扉が開いた。

 そこには息を切らせた12,13歳くらいの少年が居た。

 夜の帳のように黒い髪に、猫のような黄金色の瞳。

 ……えっと、こんなキャラ、攻略対象にいたかしら。と私は頭をかしげた。


「――っ! ローゼリアお嬢様っ!?」

 飛びつくように、少年は私に抱きついてきた。

「あ、あなた……だれ?」

「アッシュです。……貴方はローゼリア様、お嬢ですよね。幼くなっているけれど……首も、ちゃんと繋がっている……」

「ぶ、物騒なことを言うわね」

「いや……とても嫌な悪夢を見たので……」


「……ところで、貴方、誰なの? 名前を教えてほしいわ」


 すると少年は、花のようにぱぁあっと輝いた笑顔を浮かべて、胸に手を当てた。


「――俺はアッシュ。アッシュ・ウイル・ウォルフガングです。貴方の従者です」


 彼の頬には涙の跡があった。

 相当酷い夢を見たのだろう。可哀想だったから、私は頭をなでた。


「な、なんですか?」

「いや、貴方が泣いていたみたいだから」

「俺は男だから泣きません。でも――本当に夢でよかった」


 泣きそうな声で、彼は言った。

これにて神様視点っぽいところは終了です。

これからもちょこっと出てくるかもしれませんが。

さり気なくタイトル伏線回収。

『我が主は~』はアッシュ視点で、アッシュが主人公の物語という形です。


デバッグとかバグとか、恋愛ものであんまり見ない単語ばかり出てきて…。

ゲーム世界なので、どうしてもこの要素は入れたかったんです。


気に入っていただけましたら、★★★★★評価お待ちしています。

またアルファポリス様等にてランキング参加もしておりますので、

広告の下にあるボタンをぽちっと押して頂けると励みになります。

コメント・感想・誤字脱字報告も随時募集しております!是非ともよろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ