表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】彼女を運命から救うためにできること
35/78

ヒロインと悪役令嬢(4)SideA

 俺とヒロインちゃん――ルーナがいつも使う談話室に、今日は金色の髪の毛だま――ことロゼがいた。

 ロゼは三角座りで部屋の端に隠れていた。

 もふもふの髪のせいか、中型犬のようにしか見えない。


「……こわいこわいこわいこわいこわいこわい」

「どうします? お嬢、ヒロインちゃん呼ぶの辞めます?」

「ううん、ちょっと話してみたいわ。ルーナも転生者なのよね」

「そうですね。お嬢と一緒のようです」


――ちなみに『星靴』の大ファン&ローゼリア推しであることは黙っている。


「協力者が増えるのはありがたいわ……でも、ヒロインよ? すごくきゃぴきゃぴした陽キャで、インスタ映え~とか言う子だったら仲良くできる自身ないわ」

「……またよくわからない単語を」

 現代語なのだろう。

 とりあえず、ひきこもりお嬢様が仲良くできるか不安である――ということは理解した。


「ねぇ、アッシュ。お願いがあるの」

「なんですか?」

「お茶を淹れてほしいわ。一杯飲んで、勇気を出したいの」

「それくらいなら喜んで」


 俺はお嬢に紅茶を振る舞った。

 ロゼはやっとお茶を飲んだ。お嬢が飲んだと同時に、扉が開いた。

 その先には顔を真っ赤に染めたルーナがいた。


「あ、あの、ローゼリア様、その……」

 もじもじと人指し指と人差し指をこねこねとしている。

「え、えっと、ルーナ、さん……」

 お嬢は太ももの間に両手を入れて、もじもじしてる。


 なんだこの光景。


 女同士だから許せるけど……いや、ちょっと嫌だけれど。

 

 ルーナは顔を上げて、大きく息を吸った。

 そして――


「ローゼリア様ーーいいえ、薔薇子(ばらこ)様、大好きです!!ずっとずっと、大ファンでした!」

 大きな声で告白をした。


「ぴぎゃあああああ!!!!なんでその名前を知ってるの???!!!」

 ロゼは頭を抱えて崩れ落ち、床に突っ伏している。


「薔薇子っていうのは?」

 俺は聞き覚えのない名前を尋ね返した。

 キッとロゼが俺を睨んだけれど、気にしない。


「あぁ、それは『星靴』の作者様のハンドルネーム……ペンネームのようなものですわ」

「なるほど、お嬢は『薔薇子』というペンネームで活動していたんですね」

 俺は満点のスマイルでロゼに語りかけた。


 ロゼは怒りで満ち溢れた目で俺を睨む。聞いてないというような目で。

 というか『星靴』の話を模写するくらいのファンならペンネームくらい知っているだろうから、予想できるだろうに。


「…………ふー、ふー、ふーっ」

「あの、私……ずっとコメントを送っていた『月子(つきこ)』です」

「月子さんっ!?」

 ロゼがガバっと顔を上げた。


「いつもメールで感想を送ってくれる、あの月子さんなの!?」

「はい!」

「ファンアートを送ってくれた、月子さん!?」

「はい!」

「たまに通販専用のギフトカードを支援してくれた月子さん!?」

「はい! 溢れる愛を伝えるために、課金で証明したくて」


 とりあえず、ロゼにルーナが熱狂的なファンであることは理解してもらえたらしい。

 

「大・大・大好きなんです。薔薇子先生の作品が! あ、あと()()()()もだいすーー」

「ぎゃあーあーあーーーーーー! それは黙って黙って黙って黙ってー!」

 ロゼが立ち上がって、ルーナの口を塞いだ。


「他の話?」

 俺が尋ねる。


「あら、アッシュ様は知らないんですね。薔薇子先生ーー」

「……薔薇子先生はやめて」

 ロゼが涙目で訴える。


「はい、でしたらローゼリア様の作品は、『星の乙女は魔法の靴で導かれる』だけじゃありませんわ。他にも色々なジャンルがありまして、()()()()()()()も、()()()()()()も、()()()()()も色々あるんですの。もう私は全部大好きで……ずっと追っていました」


 ルーナの口からはとんでもない発言が飛び出た。

 なんとこのロゼお嬢様の黒歴史は、この物語だけじゃないらしい。


「……初耳ですぜ、お嬢」

「だって言うわけないじゃない。これ以上の黒歴史を暴露して、私に何のメリットがあるのよ」


「だから、この世界で転生して幸せなんです。是非ともローゼリア様が幸せになれるよう、協力させてください!」

 ルーナははっきりと言い放った。

「……ほ、本当に協力してくれるの?」

「ええっ! 私にとって、ローゼリア様は神ですもの!」

 ロゼの手をぎゅっと両手で包み込むルーナ。


「まぁ、俺やこの世界にとっても『創造主(かみさま)』だけどね」


「はぁ……私の憧れの先生が、目の前にいるなんて、感動です」

 俺の話は聞いちゃいねぇ。ルーナはもう興奮しきって、目がきらきら光っている。

 一方ロゼは、あまりの熱狂的っぷりに少し、いやかなり引いていた。


「ねぇ、ルーナ嬢、もしも他作品も複写しているなら、持ってきてくれないかな? 読んでみたいな」

 と俺が笑顔で言うと、ロゼは『何を言ってるの信じられない』という顔で睨んできた。

「はい、何度も何度もプレイしたので、一字一句覚えています! それを持ってきますね」

「すごいファンじゃないですか、お嬢」

「…………」


 物語を一字一句複写するなんて、この子……本当にすごい子だ。

 この間持っていた『星の乙女は魔法の靴で導かれる』の本だって、辞書並みに分厚かった。あれが他に何作もあるのか。

 初めてローゼリア以外の人を尊敬した。尊敬のベクトルは違うけれども。


「と、とりあえず……ルーナは私の味方なのよね?」

「はい! もちろん! ローゼリア様大好きです! 最推しです!」

「それはメールでも言ってくれてたわね。あ、ありがとう……」

「いえいえ! ファンとして当然の義務ですから!」

「じゃ、じゃあ……これから、私は自分が死なないように努力をするんだけど、協力、してくれる……?」

「もちろんです! あ、でも……ひとまず」


 ルーナは自分の持っていた鞄に手を突っ込んだ。

 そして色紙二枚を取り出して、お辞儀をしながらロゼに渡した。

「サインをください! ローゼリア様と薔薇子先生の!」

「……えぇえ」


 流石のロゼもドン引きであった。

 正直見ている俺も、ルーナがこんな子だとは思わなかったから、ドン引きしている。


――協力な助っ人ができたけど……この子もかなり行動力がありそうな子だ。

 さて、どうコントロールするか。


 俺は宙を仰いだ。

 とりあえずお嬢に友達ができたのはいいことだと思っておこう。

ということで変態ローゼリアファン、ルーナこと月子さん登場です。


気に入っていただけましたら、★★★★★評価お待ちしています。

またアルファポリス様等にてランキング参加もしておりますので、


広告の下にあるボタンをぽちっと押して頂けると励みになります。

コメント・感想・誤字脱字報告も随時募集しております!是非ともよろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ