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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】彼女を運命から救うためにできること
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ヒロインと悪役令嬢(3)SideA

 昼食時――俺はまたヒロインちゃんを昼食に誘った。

 ヒロインちゃんは目をキラキラさせながら、俺の誘いに載ってくれた。

 案内したのは、前ヒロインちゃんを寝かせた談話室。


「……あれ? ローゼリア様は?」


 ヒロインちゃんはキョロキョロとお嬢の姿を探していた。


「すみません。ちょっと病み上がりで、今日は欠席です」

「……ってことは、貴方と二人なんですか?」

「そうですね」

 ヒロインちゃんは俺をじっと睨んだ。


――ふむ。

 ド天然あほなお嬢と比べて、この子は冴えている。

 前、この談話室に呼んだ時、薬を盛ったのに薄々気づいているのだろう。


「私のような庶民とお話していたら、悪い噂が立ってしまいますわよ、クライン様」

 ヒロインちゃんは、少し距離を置いて話す。


「いえいえ、そんなヘマはさせません。ちょっと聞きたいことがあるんですよ。貴方に」


「あら。勉学のことでしたら、もっと優秀な生徒がいらっしゃるじゃありませんか。それこそクライン様なんて、いつも学年上位ですし。あと敬語はやめてくださいな」


 この女に誤魔化しは通じないと思った。下手に誤魔化せば警戒心を上げてしまう。


「先週、『星の乙女は魔法の靴で導かれる』のお話をしてくれたよね」


 びくっ、と彼女の肩が上がった。

 まさかこの話になるとは思わなかったらしい。


「ややこしいことをしてたら昼食の時間が過ぎちゃうから、単刀直入に言うね。貴方、別の世界からこの世界に来た、転生者じゃないのかな?」


「…………」

 ヒロインちゃんは沈黙する。


 そして顔を上げて

「えぇ、そうですわ。頭がおかしいと思われるかもしれませんが、私は異世界から転生して、この世界にやってきました」

 と、はっきり断言した。


 こうなれば話は早い。


「君は『星の乙女は魔法の靴で導かれる』の話が好きらしいけれど、誰を一番狙っているんですか?」


 俺は単刀直入に尋ねる。


「……随分詳しいです。この本は流通していないはずでは?」

「残念ながら、詳しい人が知り合いにいるんですよ」

「私と同じ転生者がいるってことですか?」

「簡単に言えばそうですね。……で、誰が好きなんですか?」


 ヒロインはがばっと立ち上がった。

 そして顔を赤く染めて、頬に手をおいた。


「私が一番好きなキャラは……ローゼリア様ですわ」

「……!?」


 まさかの返答で驚いた。


「ローゼリア様の格好いい言葉遣い。身長はゲームより低めですが、気高さは変わりなく――人気投票でもローゼリア様に入れるくらい大好きなんです」


「はぁ……」


 呆れて言葉が出なかった。

 ちょっと待ってほしい。ロゼルートがあるなんて、創作者から聞いたことがない。


「ローゼリアのことはわかった。確かにうちのお嬢は可愛いですからね。……で、ルートでは誰を狙っているんですか?」

「ヴィンセント様を狙っていますわ」


「……ん゛、げほんげほん」

 気管に詰まってしまった。


 まさかのヴィンセントルート。俺が一番最初に潰したルートだ。

「ヴィンセント様のヤンデレっぷり……本当に良いんですわ。

 愛の深さも感じられるし、どこにいても守ってくれますし……あぁ、やっぱりヤンデレは最高ですわ」


 ほぅっと、恋をする少女のように、ヒロインちゃんは顔を赤く染めた。


「ねぇ、君はわかっていると思うけど、うちのお嬢は『悪役令嬢』として、どのルートでも死亡するんだ。その件についてはどう考えている?」


「この間、ローゼリア様とお話をして、絶対に阻止したいと思っていますわ。だってローゼリア様はお優しい方ですもの」

「もしも君が想う相手――ヴィンセントと結ばれなくても?」

「ローゼリア様が幸せになれるなら、喜んで!」


 彼女の夕焼け色の瞳は、真剣だった。

 だから、信じられそうだ。

 人の心に裏は感じられない。 


「……じゃあ、話そうか。俺とお嬢のことを――」


 俺は彼女を信用に値する相手だと判断した。

 もちろん言葉だけでは信用ならない。読唇術なども全て使わせてもらって、この決断に至った。

「長くなるからお茶でも淹れようか」

「貴方が淹れたものは信用ができないので、私が作ります」

 そう言って、水場にはヒロインちゃんが立った。

 やっぱり睡眠薬の件についてはバレているらしい。


 紅茶のポットが机の上に置かれる。

 そしてカップに注がれる。人にお茶を注いでもらったのなんて、何年ぶりだろうか。

――ん、でももう少し蒸らしたほうがこの茶葉は美味しくなるんだけど……。

 と、また紅茶について没頭しそうになった。

 俺はごほん、と咳払いをする。


「まず、うちのお嬢――ローゼリア様も転生者だよ」

「え……えっ……えぇえええええ!?」

 と、想定通りヒロインちゃんは淑女らしからぬ声をあげた。


「ちなみにこの世界を作ったのもお嬢だ」


「ローゼリア様マジ神じゃないですか! えっ! 本当に……ローゼリア様が? えぇ! ずっと大好きだったんですよ。ファンで、でも同人イベントには出てくれないから、メールで感想を送るしかなくて……あぁ、そんな素晴らしい人に近づけていたなんて……」

 ほぅっと空を見つめる。

 この子は本当にロゼのファンらしい。


――なら、協力してくれるだろう。お嬢の死を回避するアイデアを、もう一つの目線で考えてくれるだろう。

「じゃあ、お嬢にもそう伝えておきますね」

「あ、あの、クライン様。お願いがありまして……」

「なに?」

「ローゼリア様のサインが欲しいんです」

「そ、そう……」


 わかったことは一つ。

 彼女は生半可なレベルでなく、本気でロゼのことが好きらしい。

 これが良い方向に転がってくれればいいけど……と俺はため息を付いた。


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