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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第三章 魔法学園編】
27/78

星の乙女は魔法の靴で導かれる(4)SideA

 俺は自室に戻り、ベッドに寝転んだ。

 深く息を吐く。感情を抑えつけなければ。


 ヒロインの足止めをしろ――それがロゼからの命令だった。

 その間に怪盗との出会いフラグを潰すと言っていたのだけれど――


「……俺がいないところで、別の男と会うなんて……」


 正直ヒロインが怪盗とくっつこうが吟遊詩人とくっつこうが、どうでもいい。


 面倒なら全員消してしまえばいいのだから。


 俺の願いは一つだけ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼女の亡くなる姿は、もう二度と見たくないから。



「まぁ、お嬢がやりたいなら小芝居にでも付き合いますけどね……」


 14時に噴水のある広場に怪盗こと『エドワード』が来る。

 ということは、それよりも前にヒロインを足止めしなければいけない。


 俺はそれよりも2時間前――ちょうどお昼時を狙った。


 癖のないストレートの銀髪は目を引く。

 可愛い系のロゼとは違って、ヒロインは綺麗系だろう。

 俺はロゼしか見ないから、周りの意見はどうでもいいけども。


 ヒロインはお弁当を持参しているようだ。

 学食だと貴族が席を占領して座れないからだろうなぁ。


 お弁当箱が入っているであろう小包を持って、立ち上がったところで声をかける。


「こんにちは、ルーナ嬢」

「は、はえぇっ!?」


 びくんっとヒロインが驚いていた。


「あ、貴方はローゼリア様の……?」

「はい。義兄(あに)で従者です。貴方に興味があって声をかけたのですが、他に御用がありましたか?」

「い、いえっ! お弁当を外で食べようと思っただけで……」

「あぁ、奇遇ですね。俺もそうしようと思っていたんですよ。よろしければご一緒にいかがですか?」


 ルーナがあたふたする。顔を真っ赤に染めて、俺を見つめてくる。


「あの……私、その庶民なので、嬢って呼ばれる感じではなくて……」

「女の子は皆お嬢様ですよ」


 ……言ってて自分で砂糖吐きそうだった。

――なんでロゼ以外を口説かないといけないんだよ。


「あの、その……そこには、ローゼリア様もいらっしゃるのですか?」

「いいえ。俺と二人です」

「ふ、ふたり……」


 ぐるぐると目を回すルーナ。

 男性からアプローチされたことはないんだろうか。

 あまり耐性がないように見える。


「俺と一緒は嫌ですか?」

「い、いやではないですけど……こ、こんなのシナリオに……」

「……え?」

「あっ、な、なんでも無いです!」


 いま聞き捨てならない言葉を聞いたような。

 でも今は一刻も早くロゼのところに行きたい。ロゼを一人にしたくない。


「嫌ではないのでしたら、ぜひともご一緒に」


 俺は誰も使っていない談話室に彼女を招いた。

 ちなみに『誰も使っていない』というのは、裏から手を回して校長を脅迫して空けさせたからだ。


 ルーナはそわそわしながら落ち着かないようすだ。

 俺は、あらかじめ用意していたお茶を彼女に振る舞った。

「どうぞ」

 彼女に出したのはダージリン。


「わぁ……すごくいい香り……」

「ストレートよりもミルクが似合うので、ぜひ」

「そ、そうなんですね……じゃあミルクを淹れていただきますわ」

 

 ルーナはそう言って、俺の誘導通りにミルクを淹れた。

 一口含んで、ほぅっとため息をつく。


「こんな美味しい紅茶は初めてです……」

「それはなにより」


 ルーナは俺を紅茶カップを持ったまま、俺の方をまっすぐ見てきた。


「あの、齢は違いますけど、学年は一緒ですし、どうか私に敬語はやめてください。あと、ルーナ嬢って言うのも、普通にルーナでいいので」


「ごめんなさい。俺は普段から敬語を使っているので、それで慣れてしまっているんです。だからどうかお許しください」


 もちろん嘘である。

 ロゼが聞いたら吹き出して、むせて、うそつきと言ってケラケラ笑ってくれるだろう。


 とりあえず俺はヒロイン――ルーナと一線を引きたかった。

 彼女を誑かすのは簡単だろう。

 でも、そんな暇があるならロゼとくだらない話をしたい。


 それに、口説いているところを見られたら……。

 超ド天然おバカなお嬢様であるロゼは『アッシュはルーナに気があるんだわ!』と変な誤解をしそうだ。――いや、するだろうなぁ。


 チク、タク、チク、タク。


 針の刻む音が大きく聞こえる。


「……あの……あれ? えっと……わたし……」


 こくり、こくりと、彼女の身体が揺れる。

 やっと効果が出てきた。


 ふらっとルーナは倒れた。

 俺はその身体を支えた。


 彼女に振る舞った紅茶には睡眠薬を盛っていた。

 味の変化にばれないように、ミルクを入れてもらった。


 ヴィンセントからの経緯で手に入れた睡眠薬。

 効き目は即効性で、6時間ほど眠れる。


 ――ロゼはヒロインの足止めをしろと命令をした。

 でも、手段は指定しなかった。

 

 きっとロゼは会話で引き止めると思っているのだろう。

 そんな面倒なことしたくないし、やる気もない。

 手っ取り早く眠らせて、怪盗(エドワード)とロゼが接触する前に、彼女の元に戻らないと。


――ヒロインにはこのままソファーの上で眠っていてもらおう。


「はぁ~。やっとロゼのところにいける」


 好きでもない女を口説くのは、正直気分が悪い。

 あとでロゼには、うんとイタズラしてやろう。


 どんなイタズラにしようか。

 俺は色々な想像をしながら、ロゼの元へ急いだ。

アッシュが一人称で頑なに『ヒロイン』と呼んでいるのは、

ロゼ以外の女性の名前を呼びたくないからです。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんとヒロインが( ☆∀☆) あの言葉を知っているということは、そういうことで…笑 またローゼリアの黒歴史要素が増えそうで面白いです(^w^)
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