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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第三章 魔法学園編】
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星の乙女は魔法の靴で導かれる(3)SideR

 私とアッシュは、私室に集まり、始まってしまった学園ストーリーをどうするか案を出し合うことにした。

 まずは怪盗ルートのフラグ折りから始める。

 ここ5年間で何度も振り返っている怪盗ルートについて、考察した。


【怪盗】

 エドワード・ウォーカーJr(ジュニア)

 17歳。普段は意気地なしで、よくいじめられている。

 けれど夜になると変身。

 キザでかっこいい怪盗になる。

 ウォーカー家は代々続く怪盗家系なのだ。

 怪盗といっても貴族が理不尽に平民から取り上げた財産などを返していく、所謂義賊だ。


 エドワードルートでの、ヒロイン――ルーナの立ち位置は、良きライバル。

 ルーナは新聞部に入り、話題の怪盗の招待を暴こうとする。

 けれど毎度撒かれてしまう。

 そんな攻略対象とヒロインの追いかけっこルート。


「で、お嬢。どう攻めるおつもりで?」

「……正直言っていい?」

「ええ、どうぞ。なんとなくわかってるんで」

「なんにも考えてないわ……」


 正直、本当に何も考えていなかった。


「五年間、何してたんっすか……お嬢。

 ……まぁ、別の男のことを考えられてたら嫌ですけど」

「え? なにか言った?」

「お嬢はおバカでくるくるでかわいいなぁって」

 私はアッシュの頭を思いっきり叩いた。


「……正直、エドワードルートはヒロインが10歳の頃に会ってるのよ。

 二人は幼馴染で、彼はヒロインが好きなの。

 ヒロインが入学したときに気づくのよねぇ……」

 まさに王道。

 エドワードルートは『これが欲しかった』と思えるくらい王道なのだ。


「はぁ……で、出会いイベントはどこでしたっけ」


「えっと、噴水前だわ。エドワードが噴水前でいじめっ子に噴水に突き落とされるの。……そう、ちょうど明日のお昼ね」

「ふむふむ」


「で、アッシュにはお願いがあるの」

 私はぐいっとアッシュに顔を寄せる。


「お、おぅ……なんっすか……」

 何故か少しアッシュの顔が赤く染まった。


「ヒロイン――ルーナの足止めをしてほしいの」

「……えぇ、俺、女の子を口説くのってすげぇ苦手なんスよ?」

「よく言うわね。めちゃくちゃチャラいじゃない。私の前ではいつも変なことを言って口説きまくってくるくせに」

 アッシュは腕を組んで、しばらく天井を見つめていた。


 …………。


 ……。


 無言タイムが続く。


「な、なによ。そんなに嫌なの?」

「嫌というか……すげぇショックと言うか。まぁいいっすよ。ヒロインちゃんの足止めをすればいいんっすね?」


「そうよ! その間に私はエドワードを助けに行くわ」

「え、なんでですか? 放っておけばいいじゃないですか」


「だって、いじめは良くないでしょう?」

「……えぇ~」

 アッシュはもう呆れ果てた顔をしていた。


 そうして、私とアッシュの怪盗ルートこと、エドワードルートフラグぶっ壊し作戦が始まった。


 噴水の近くの木陰に私は隠れていた。

 エドワードはここに来るはず。


「イベント絵では噴水前だったもの……ぐっ、黒歴史……」

 自分で言って、黒歴史を思い出し、自分でダメージを受けてしまった。

 もうすぐ14時。そろそろ来るかしら、と待ち構えて数十分。


――来ない。


――誰も来ない。


「来ないっすねぇ」

 聞き慣れた声が後ろからする。


「あ……アッシュ!? なんで? ヒロインは?」

「ヒロインの足止めをすればいいんでしょ? それならもう終わらせてますから。たぶん4時間くらいは稼げるんじゃないんスかね」

「え? なにしたの?」

「企業秘密っす」

 アッシュはにっこりと笑った。


 その時、ようやく足音が聞こえてきた。


「アッシュ、エドワードが来るかも!」

「……へい」


「ちょっと、なんで胸元に手をいれてるの?」

「お嬢が危ない目にあったときに守れるように、火魔法を付加(エンチャント)した短剣を用意してるだけっすよ」

「ぶ、物騒!! 大丈夫よ! ここは学園内だから、人目もあるし、悪役令嬢の私を狙う輩なんているわけないわ」


「お嬢。魔法と一緒で可能性が1%でもあったら、俺は全力でお嬢を守ります。……お嬢に言い寄る変な虫から」


「……もう。何言ってんのかわかんない。でも、こうなったら貴方、私の言うことも聞かないものね。勝手になさい。ただ、邪魔はしないで。でも私が失敗しそうになったらケアして」

「めちゃくちゃいいますね。流石お嬢。理不尽の塊っす」


 アッシュはさっきからへらへら笑っているけど、5年も一緒にいたからなんとなくわかることがある。――なんか怒ってる。


 怒らせるようなことしたかしら?

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