真の悪役(仮)育成日記(7)SideR
ロゼ視点です
今日は朝から妃教育に専念をした。
というかさせられた。
昨日の脱走で、講師の先生はお怒りだった。
アニー曰く
「あのあと、先生がお嬢様が誘拐されたと誤解したんです。それで、パニックになって旦那様に報告して、旦那様は屋敷の従者や伝手を使ってお嬢様を大捜索していたんです」
「……そんなことが」
クライン屋敷の皆さんが全力で私を探していた。
そんな中、私はのんきに喫茶店でマカロンを食べていた。
「確かに、10歳のお嬢様がいなくなったら誘拐だと思うわよね……」
前世では一人で出歩くことが普通だったけど、ご令嬢ってこんなに窮屈なのね。
明後日はアッシュと二人だから、大捜索はされないだろう。
これからは気をつけて行動しなければいけない。
今日の課題は読書だ。この国の成り立ちについて等が詳細に書かれている。
「……これ、私の創った設定……」
勉強というより復習。
私にとっては黒歴史をほじくり返す地獄だった。
「お嬢様、集中力がかけておりますよ」
講師の先生が厳しく指摘する。
……いやだって、これ読むの辛いんだもの。
でも黒歴史だから読むのが辛いです、なんて他人に言ったら頭おかしいんじゃないかと思われてしまう。
唯一、話を理解してくれるのは、繰り返しをしているアッシュだけだ。
そんな時、アニーがばたばたと急いで、部屋を訪れてきた。
「お、お嬢様!」
ハァハァと息を切らせている。全力で走ってきたのだろう。
「貴方、従者とはいえ、礼儀がなっていないわ」
講師の先生が指摘する。
「……それどころではございません。
お嬢様、で、殿下……フェリックス殿下がいらっしゃいました」
「……え?」
フェリックスが? 一瞬思考停止した。
なんでこのタイミングで?
「こんにちは、クライン嬢。たまたま近くを通りかかったので、寄らせていただきました。どうぞ。手土産に些細なものですが、お土産です」
従者を連れて、殿下は現れた。手元にたくさん薔薇をもっている。王子は相変わらず神々しかった。
私とはちがうサラサラな金色の髪。
声はまだ声変わり前なのか、少し低い。でも、またそこがいい!
「で、殿下、どうしてここまで」
「貴方に会いたかったからですよ。クライン嬢」
そう言って、彼は一歩後ろに引き、私の手に口づけを落とした。
「昨日の騒動、こちらにまで届いてきましたよ。
本当に大丈夫だったか不安だったので、こうして来させていただきました」
「お、王子の耳にまで入っていたんですね。お恥ずかしい。
本当にお恥ずかしい。
「殿下、この後のご予定は?」
「しばらくないよ」
「それなら、是非とも私の話し相手になってくださいませ!」
そうして、私は殿下とティータイムを楽しんだ。
◆
殿下をお送りして、私は思った。
話し相手がほしいと。
魔法でそんなことができるのかしら……そう思いながら、私は頭に浮かんだ言葉を詠唱した。
「創造」
すると、なんとテディベアこと、キッドが動き出したのだ。
いやーチートすごいなぁ。
私はキッドに話し相手になってもらうことにした。
そしたらきっと寂しい夜はこないはず。
そう考えていたら、アッシュが来た。
けれど彼はテディベアのことで頭を抱え、王子の来訪について、もっと頭を抱えていた
今夜は静かな夜になるだろう
でも大丈夫。キッドが側にいてくれるから。
いつ学園に入れるのでしょう……
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