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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第二章 悪役誕生編 幼年期】
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真の悪役(仮)育成日記(5)SideR

久々のローゼリア視点です。

 最近アッシュの様子がおかしい。

 お昼にお休みをいただきます、なんて今まで言いだしたことはなかった。

 でも何故か夜には帰ってきて、私の話を聞いてくれる。


「一週間ほど昼を出るって言ってたけど……」

 なんで昼間に出かけているのだろう。


 アッシュのキャラクター設定は、正直そこまで詰めていない。

 悪役令嬢(ローゼリア)の従者で、行き過ぎた悪役令嬢を、さりげなくなだめるキャラ。そんな感じでアバウトに詰め込んだだけだから、正直彼が何を考えているのか想像がつかない。


 ローゼリアとしてではなく、私の個人で抱いた印象は『ちゃらい』『いじわる』『主を尊敬していない従者失格』『たまに何考えているかわからない』――そして、『この世界で、たぶん一番頼れる相手(ひと)


 だから、何をしているのか、しようとしているのか、全く想像つかない。


――その時、ピンときた。


 アッシュは何度もこの世界を繰り返している。繰り返す者だ。

 だから、ヒロインのことも知っているはず。


「……ま、まさかっ!」


 私はあることに気がついた。

 そう、そうだ。そうあってもおかしくない。


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 創造主(かみさま)だからこそわかる。この世界はヒロイン中心に回っている。

 ヒロインがちやほやされる。フラグを2、3個立てたら、好感度爆上がりするほどの愛され属性をヒロインは持っている。


 だからこそ、前の世界を知っているアッシュがヒロインを好きになったとしてもおかしくない。


「……なるほどなぁ」

 自分で考えて、自分で納得したのに、なんだか……心の奥がちくっとした。

 私だけの味方なはずのアッシュが、ヒロインに恋をしていたら……私は本当に一人ぼっちになってしまうかもしれない。


 でも、主人(ローゼリア)として、彼が本気で恋をしているのなら応援したい。

 それで、彼が幸せになれるなら――


「となったら、まずアッシュの性格をちゃんと把握して、なにを目的に行動しているのか、それを知るべきだわ! アッシュの恋を……応援、し、ないと!」

 目元に少し涙が浮かんだ。

 きっと花粉症だ。今日は桜が満開に咲いているから。


 今日のお昼は手紙を書く練習をするところだった。

 文字を綺麗に書き、季語を入れ、丁寧な文章を書く――を何度も繰り返す予定だった。

 けれどその稽古を私は投げ出した。


 講師の先生が来る前に、クローゼットの裏に隠しておいた動きやすくラフな服を着た。スカートの丈が短い分動きやすいし、生地も上等なものじゃないから、貴族バレはしない。


 アッシュはそろそろ屋敷を出る。

 私は窓を開け、近くの木に飛び移った。


浮け(フロウ)


 私が呪文を唱えると、足元に小さな翼が生えた。


 講師の先生ごめんなさい。

 でも私は、私のためにサンドイッチを作ってくれたり、和菓子を作ってくれたり、相談にのってくれたりする、従者(アッシュ)の幸せを祈りたいの。

 そう、心の中で言い訳して……



『おバカですね』

『いやぁ……お嬢の唇の端に、片栗粉がついてて』

『おはようごぜーます、お嬢。今日は月のものっすか? お祝いしましょうか?』


「……………………いや、やっぱり邪魔してやろうかしら」

 今までの無礼な発言を思い出して、イラッとした。


 その後、アッシュには綺麗に撒かれてしまった。

 隠密スキルが高いって本当なのね。

 私が跡をつけているのは気づかれていないようだけれど、普段からあんな感じで行動しているのかしら。


「……でも、ここは10歳のヒロインが住んでいる故郷とは違う場所だし――」

 ヒロインは遠く離れた田舎出身の設定だ。クライン屋敷から丸三日ほど馬を走らせて、やっと着くレベルの遠さだ。


 ヒロインが初めて街を歩くのは、ゲーム――つまり学園生活が始まってから。


「とりあえず、アッシュはヒロインと会ってるわけじゃないわね」


 そして、アッシュに見事撒かれた私は、どうせなので街の生活を堪能した。

 露店を歩いたり、喫茶店に入ってお茶菓子を楽しんだり。


 でも、その楽しさを共有する人がいなくて、ちょっぴり寂しかった。

――いや、アッシュがいないから寂しいってわけじゃない……!


「前世でも自分で創った世界でも、ぼっちなんて……。うっ……」


 私はマカロンを摘んで、口に入れた。

 なんでだろう。味がしなかった。



・・・


 その日の夜、こってりとアッシュに怒られてしまった。


 でも、明々後日に一緒にジェラートを食べに行く約束をしてくれた。

 今度はもっと楽しく味わえるかしら。


 ベッドに潜った私は、テディベアのキッドをぎゅっと抱きしめた。

 そして、明々後日のことを考えてワクワクしながら、ぐっすり眠った。

――寝るんかい!

とつっこみたくなるところが、ローゼリアのいいところだと思います。


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