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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第二章 悪役誕生編 幼年期】
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真の悪役(仮)育成日記(4)SideA※

※一部残酷な描写が続きます。苦手な方は飛ばしてください。

――二日目。


 静かな部屋に、ぽたり、ぽたりと水が落ちる。

 食事は与えず、排泄も許さない。


 ただただ、滴る水に耐えてもらう。

 そのうち時間の感覚も狂い、精神が崩壊する。

 魔法で苦しめるのとは違う楽しさが、拷問道具にはあった。


 ちなみにヴィンセントルートでは、お嬢とヒロインが敵対する組織に攫われて、監禁される話がある。

 ヒロインは監禁だけで済むが、悪役令嬢であるお嬢は色々と拷問を受け、傷物にさらされる。

 だから、その引き金になるヴィンセント(こいつ)はとことん潰しておかないといけない。


 お嬢をいじめるのは、俺だけでいい。


――二日目の夜。


「今日は退屈な日だったわ」

 とお嬢はぼやいた。

 眉間に皺がよっている。本当に退屈だったらしい。

 公言するということは、外に脱走はしていないようだ。

 もうすぐ変装して脱走してもおかしくない頃合いだな……と思った。


「お嬢、明日は手紙の書き方の練習をするんでしたっけ?」

「そうよ。一人前の貴族になったら、手紙のやりとりなんて当たり前にあるもの。でも手紙書くの……めんどくさいわ」

 お嬢はお気に入りのテディベアを抱きしめながら言った。


「……乙女ゲームとやらのシナリオを書くのはお手の物ですのにね。……ぷぷ」

「だだだだ、だまらっしゃい!」


 ……触れられたくないところだったらしい。

 テディベアを投げられた。


「お嬢~。テディちゃんが可哀想っすよ~。この子も泣いてますぜ。『ロゼたまぁ~。ボクを投げないでくださいぃ~』って」


「そ……そうね。キッドが可愛そうだわ」

 あ、この(テディベア)、キッドって言うんですね。ループ八回目にして初めて知った。

 ロゼはしゅんと眉毛をたらして、テディベアを拾った。そして愛おしそうに抱きしめた。


「今度からは投げるのは枕にするわ」

「……ものを投げるのは確定なんっすね」


 キラキラとした瞳で答えるロゼ。まぁロゼの枕なら幾らでも歓迎して受けよう。



――三日目。


「さて、どんな感じですかね」


「……いま時間は……? 仲間は……? どうなっているんだ……」

 ヴィンセントが掠れた声で言う。

 もちろん俺は答えない。笑顔だけ浮かべてやる。

 顔色は青白くなり、目には隈が出来ている。不規則に落ちてくる水滴に耐えられないのだろう。この拷問は睡眠時間を削る。

 人間(ひと)は睡眠時間を削れば削るほど、精神を摩耗していく。

 悪の組織のボスとはいえ、肩書をとればただの人間(ひと)だ。


「お前は、何を求めているんだ」

「……」

 まぁ、組織を渡せといっても、簡単に譲渡できるものではない。


 責任者が交代になりました、と発言したら、必ず離れるものもいる。


 更に信用を築き上げ、国の裏で動く組織として行動したり命令したり、そういう面倒事はごめんだ。

 そんなことをしている時間があるなら、ロゼと一言でも多く会話をしたい。触れ合いたい。


 ヴィンセントは言葉を発するほどの体力は、まだ残っているようだ。

 なら、まだ正気を保っている。


 普通なら、いつ不規則な水滴の落下を数えているうちに、気が狂う。だいたい二日ほどで根をあげるらしい。

 だいぶ衰弱していた。

 そろそろ開放してやろう。


「……うん、思ったより早く終わりそうだな」

 


――三日目の夜。


 帰宅して、服装を整え、主人の部屋を訪れる。


「ただいま戻りました。お嬢。何かお手伝いできることはありませんか?」


「あら、おかえり。お昼の休暇は楽しかったかしら? アッシュは毎日屋敷で働いてるんだから、まるっと一週間くらい休みをとってもいいのよ?」


 ロゼは上機嫌だった。

 部屋に入った時、鼻歌を歌っていたくらい上機嫌だった。


「お嬢」

「なぁに?」

「街に行きましたね?」

「――っ! なんで、わかったの?」


 カマをかけたつもりだったが、図星だったようだ。

 自分一人で世界を創ったり、屋敷の護衛から脱走したり、街で遊んだり――

 うちのお嬢様は行動力が怪獣レベルだ。


「言っときますけど、お嬢。平民街に行く時は必ず従者を――」


「たまには一人になりたいときだってあるじゃない? 私は何も買わずにダラダラと服を見たりするのが好きなの。別に買うわけじゃないけど、従者がいたら、店主さんがノリノリで接客してくるから買わざるを得なくなるし――」


「……じゃあ、こうするのはどうでしょう」


 俺は人差し指を立てて、一つロゼに提案をした。


「俺と庶民の格好をして、恋人ごっこをして街を歩くのは――」

「却下」

「まだ言い終わってないんすけどね」

「ふ、ふん。あんたと、こ、恋人なんて……寒気がするわ」


 と言いつつ、ロゼの顔は耳まで真っ赤に染まっていた。

 キスの件から、少しは意識を向けてくれるように……なったのか、なってないのか。

 言葉と表情が矛盾して、コントロールできていない。


――可愛い……っ。


 六度目の繰り返し(ループ)の時は、監禁していたから、いつでもいくらでも抱きしめることが出来た。

 でも今はぐっと堪える。


「じゃあ、もう一つの提案を」

「……な、なによ。またふざけたら怒るから」

 どうやら俺の本気の愛情は、おふざけだと思われているようだ。


繰り返(ループ)しているから知っている情報なんですが、明々後日に美味しいジェラートの店が来るんですよね。平民街に」


「じぇ、ジェラートですって!」

 びくんっとロゼが大きく反応した。

 犬のしっぽでもついていたら、びゅんびゅん振っていそうなほど食いつかれた。


「ちなみに、こっそり開いている露店なので、場所は分かりづらいです」

「……うっ、ジェラート、食べたい。でも……うぅ……」

「水魔法と空気魔法を応用したプロが作った氷菓子なので、繰り返し(ループ)前のお嬢は大変気に入っておられました」

「あぁ……そんなの……絶対に食べたいわ」

 元々キラキラしているお嬢の瞳が、更にキラキラ光る。


「明々後日、俺がそこにご案内しましょう。なので、せめて明々後日までは大人しく屋敷にいてくださいな」


「……明々後日。長いようで短いようで、魅惑的な内容だわ……。でも、ちょっとくらい外に出ても……」

「ちなみに、屋敷から出たら即分かるように結界を張っておきます」

「鬼! チート!」

「チートはお嬢も同じでしょう」

「……はぁ、わかったわ」

 こうしてロゼは菓子に見事釣られた。


 明々後日までにヴィンセントについては、片をつけよう。

 ご褒美はロゼとのデートだと思えば、これから行う面倒な行為も楽しい余興だと思える。


「絶対に連れて行ってよ! 約束だからね」

「勿論」


 二人でデザートを食べに行く。

 言い方を変えただけで、正直これはデートである。

 デートだと、認識してもいいよな。……うん。


「楽しみにしてるわ!」

 ロゼは花が咲いたような笑顔を浮かべた。

「俺も楽しみにしてますぜ」

 つられて、俺も笑った。

※ラブコメ……です……。自信がなくなってきました。


コメントなどいただけると大変励みになります。

是非ともよろしくお願いします。

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