99.ノリノリでテレポート
ーーーリビングにて。
「あっ、ところでさっきの干し芋はワシにも貰えるかのぉ?」
「あっ、ごめんなさい。干し芋はさっき全部渡してしまいました。あとでお祖父様分を作りますね。」
「あぁ、頼むよ。3日後には発つから、それまで貰えれば助かるな。」
「えっ!?3日後?」
「ええ、そうよ。伝えてなかったかしら?3日後には帰るのよ。次は、ジョアンちゃんが遊びに来てね。」
「はい。寂しくなります。ようやく全てを話せる人が出来たのに。」
「そうね。でも、離れていてもあなたを応援しているわ。それにね、私たちが住んでる所も素敵な所よ。ランペイル領の飛び地の領地なのだけれど、海があるのよ。」
「う、海!!」
私は目をキラキラさせる。
「おっ、やはり海を知っておったか。」
「はい。前世で住んでいた国は島国で周りを海に囲まれていました。」
「じゃあ、お魚ももしかして生で食べるのかしら?」
「はい!大好きです!!セウユをつけて食べるんです!!」
興奮して身を乗り出しながら話す私を見て、2人は優しく微笑む。
「じゃあ、いつでも遊びにおいで。夏になると泳ぐ事もできるしの。」
「わぁ〜楽しみです。あっ、もしかして、一度お祖父様達のお屋敷に行けば、転移で行けるのかな?」
「あぁ〜、確かに。じゃが、結構な距離はあるぞ。馬車で行くと、途中で一泊はせんといかんからなぁ。」
「そっかぁ〜。あっ、アシストに聞いてみますね。」
ーーヘイ、アシストちゃん!教えてちょうだい。
ーーJ:転移に距離は関係ある?
ーーA:基本的に関係ないけど、体力的に疲れるよ。今は長距離は止めておいた方が良いよ。だって主は、まだ6才だもん。
ーーJ:成長したら大丈夫なの?
ーーA:うん。でも人数にもよるかな?
ーーJ:ん?人数って?
ーーA:一度に運べる人数。今は短距離なら2人ぐらい行けるかな?
ーーJ:マジか…。
ーーA:うん、大マジ(笑)
「ジョアンちゃん、大丈夫?」
「あっ、はい。ごめんなさい。ちょっと驚いてしまって。」
「アシストから答えは得たかの?」
「はい、転移は体力疲労があるので今は長距離は無理だと。」
「なるほどなぁ〜。で、何に驚いたんじゃ?」
「……転移って単独しか出来ないと思っていたんです。でも、今なら短距離なら2人ぐらい連れて行けるらしいです。」
「「はっ??」」
お祖父様達が固まる。
「ふははははーーっ。さすが、規格外なだけあるわい。わっはははーー。」
「体力疲労に繋がるなら、毎日の鍛練怠らないようにしないとね。次に会える時の分まで、ナンシーに指示しておきますからね。」
「あっ……はい。が、頑張ります……。」
転移の話から、鍛練の課題に繋がってしまったわ…。うん、ありがたい、ありがたいんだけど、何だろう、嬉しくない……。
「よし!ジョアン、ものは試しにワシと転移じゃ。」
「「えっ!?」」
「なんじゃ?ワシも転移をしてみたいんじゃよ。リンジーだって、興味があるじゃろ?」
「そ、そりゃあ、ありますけどね。」
「ちょっと待って下さいね。やり方確認します。」
ーーヘイ!アシストちゃん。教えて。
ーーJ:複数人の転移ってどうやるの?
ーーA:一緒に転移したい人が、主に触れていたら大丈夫だよ。
ーーJ:手を握っていたり?
ーーA:そうだよ。
「私に触れていたら大丈夫みたいです。」
「おう、そうか。やろう、やろう!」
と、ウィルは立ち上がる。
「どこに転移したらいいですかね?なるべく人がいないところがいいと思うんですけど……。」
「そうねぇ。私達の客室なら大丈夫じゃないかしら?」
「はい。じゃあ、私の手を握って下さい。……いいですか?じゃあ(お祖父様達の客室、お祖父様達の客室…)【テレポート】。」
シュン…。
「良かった。ちゃんといけた。大丈夫ですか?お祖父様、お祖母様。」
「お、おう。スゴいな。一瞬だったぞ。」
「……便利なものねぇ。」
「よし、今度はスタンリーの執務室だ。」
「えっ?それは、お父様が驚いてしまいます。」
「だから、良いんじゃないか。わっははは。さぁ、行くぞ。」
お祖父様はそう言うが、不安でしかない私は助けを求めるようにお祖母様を見る。
「はぁ〜。もう、言い出したらきかないし……スタンリーを驚かすのも面白そうじゃない。」
と、お祖母様。
肯定派でしたか、お祖母様…。
「じゃあ、行きますか。(執務室、執務室
…)【テレポート】。」
シュン…。
「「うぉわぁーー!!」」
いきなり現れた3人に驚く、お父様とグレイ。
「わっははは。はははーー。成功じゃぞ、ジョアン。スタンリーを驚かしたぞ。」
「うふふふっ。2人の顔ったら、鳩が豆鉄砲食らったみたいよ。ふふふっ。」
「父上、母上、驚くじゃないですか!!……と言うか、何故2人が転移出来るのですか?」
「いや、ジョアンのアシストが教えてくれるに、短距離なら2人まで連れて行けると言うからな。ものは試しにやってみたまでよ。いや〜面白かったな。」
「ジョアン……。」
あー、コレって説教案件よね?
もぉ〜お祖父様たちのせいよ。私は被害者ーー!
「私もやりたい!!」
お、お父様、そっちですか…。
はぁ〜。そろそろ疲れてきたんだけど…。
「さぁ、さぁ、行こう!行こう!」
そう言って、私を抱き上げる。
なぜ、そんなにノリノリですか?
そして、グレイもこちらをチラチラ見てるのは、何かしら?もしかして、興味ある感じかしらねぇ〜。
「グレイも行く?」
と、グレイに向かって手を差し出す。
グレイは素早く駆け寄ると、その手をキュッと握る。
「で、どこへ?」
「ん〜、じゃあリビングかな。」
「(大丈夫かしら?誰もいないと良いけど…)じゃあ、行きます。(リビング、リビング…)【テレポート】。」
シュン…。
「きゃっ!!」パリン…。
「「「あっ……。」」」
転移先のリビングには、片付けをしていたナンシーがいた。
驚いた拍子にティーカップを割ってしまい、無言で破片を拾うナンシー。破片を拾い終わり、顔を上げたナンシーは背中にブリザードを背負っていた。
「何をなさっているんです?」
笑顔で聞いているが、目が笑ってない。
「「「すみません。」」」
「謝ればそれで良いと思ってませんか?説明して頂けますよね?」
「あっ、あの、私の転移が2人連れて行けるとわかったので。」
それを聞いたナンシーは、きっとお父様が転移するように私に強請ったこと、グレイが恨めしそうに見て自分も一緒に転移させてもらった事を、いとも簡単に言い当てた。
そして、私以外はその場で正座をさせられてナンシーから、とてもありがたいお言葉を頂いた。
その間、私はリビングの片隅で割れたティーカップをスキルの【リペア】を使い修復していた。
誕生日に怒られることほど、嫌なものはないわね。
それと、もう屋敷内で転移はやめましょう。




