88.街へ in 料理教室①
「私が作る卵焼きは味付けが東の国の調味料を使っています。なので、違う味付けでも良いですか?」
「東の国の調味料…だから、初めて食べる味付けだったんですねー。」
と、グレイスさん。
「えっ、ちょっとグレイスってば、お嬢様の料理食べたの?ずるいじゃない。」
と、ミシェルさん。
「えへへ、良いでしょー。でも、そのお陰で料理教えてもらえるんじゃない。」
「もぉー、それとこれは別よー。」
2人の会話を聞いて、
「仲が良いんですね〜。」
「あっ、ごめ…すみません、お嬢様。私達、嫁いだのも長男が産まれたのも同じ年だったし、近所っていうのもあって必然的に仲良くなったんですよー。」
と、グレイスさんが説明してくれる。
「へぇ〜良いですね、家族ぐるみで仲が良いのって。あっ…じゃあ、始めますね。まずは、ミシェルさんが食べてないし東の国の味付けで見本を作りますね。」
そう言って、私は手早くだし巻き卵を作り、2人の前に出す。
2人は、出来立ての卵焼きを食べて。
「「美味しい。」」
「さっきのお弁当の中の卵焼きも美味しかったけど、出来立ては更に美味しいです。」
「卵がふわふわで、噛むとジュワッと優しい味のスープが出てきて。初めて食べましたけど、本当に美味しい。」
「ありがとうございます。喜んでもらえて嬉しいです。じゃあ、お2人が作れる味付けを作りましょう。」
卵に塩、砂糖で味付けをし、焼く前に卵液を舐めてもらい味を覚えてもらう。その後、焼き方を実演しながら教える。
「甘めの卵焼き、しょっぱめの卵焼きはその家庭ごとだと思うので、そこはアレンジして下さい。焼く時は、弱火で焼くと焦げないし柔らかい卵焼きが出来ます。」
「「……。」」
「えっ、どうしました?」
「あっ、いえ、改めて焼き方を見てお嬢様がとても手慣れているのでビックリしてしまって。」
と、ミシェルさん。
「わ、私も。お嬢様はいつも料理するんですか?」
と、グレイスさん。
「はい、食べる事と料理が大好きで…それに、私【無】属性だから、魔術以外で皆んなの役に立ちたいと思って。だから、料理人と一緒にご飯作っているんです。」
「「っ!!申し訳ありません!!」」
そこで2人は噂で聞いた、領主の娘が【無】属性の判定を受けたことを思い出した。
「あっ、気にしないで下さい。私、【無】属性なりにやれる事見つけるんで。」
「やれる事ですか?」
と、グレイスさん。
「はい。とは言っても、今は料理したり、小物考えたりで…。まぁ、それでも貴族としてはどうかと、私も思いますけどね。でも何もしないでいるよりは良いかなぁと。」
「いえいえ、それだけ出来たら十分ですよ。」
と、ミシェルさん。
「そうですかね?もし、貴族から外される様なことがあったら、鍛冶屋か木工工房で働かせて下さいね。うふふふ。」
「「もちろん!!ぜひウチで!!」」
2人が、声を揃える。
「ふふふっ。お2人とも、ありがとうございます。」
その後、グレイスさんとミシェルさんは卵焼きを何度か失敗しながらも、徐々にきれいに巻ける様になった。




