65.ポーション?
アラン兄様と屋敷に戻ると、ちょうどノエル兄様、ジーン兄様、ヴィーが下りてきたところだった。
「あっ、おはよう、ノエル兄様、ジーン兄様、ヴィー」
「あれ?2人でどこ行ってきたの?」
ノエル兄様が聞いてくる。
「ちょっとね〜」
そう言って、アラン兄様は客室へ戻って行った。
「何あれ?すっごい機嫌良いんだけど?」
ヴィーが自分の兄を見て驚いている。
「なぁ、ジョー、どこ行ってたんだ?」
ジーン兄様が聞いてくる。
アラン兄様が言わないってことは、内緒なのかしら?
私が話して、面倒なのは嫌よねぇ〜。
「んー、内緒〜」
と、誤魔化して自室に戻る。
ーーー食後のモーニングティー。
「いや〜、それにしてもドライフルーツに本当にあんなに効果があるとはなぁー」
お祖父様が言う。
「本当よ、肌艶も良くなってウエストも細くなるなんて。ありがとう、ジョアンちゃん」
お祖母様もお礼を言ってくれた。
「そうなのよねぇ〜。本当にあの効果はスゴイわ。前にお兄様に貰って視力が戻った時は驚いたもの。ねぇ〜、ジョアンちゃん。他のスキルも規格外なのよね?」
「規格外…?みんなそう言うけど、私が他のスキルを知らないので……本当に規格外なんですか?」
「そうねぇ、1つずつ見せてくれるかしら?まずは【サーチ】を。Sって言うのは、見ているもの全てを鑑定可能なのよね?」
「はい、私が見てるものは鑑定出来るみたいです」
「じゃあ……ヴィンスをサーチしてみて」
「えっ!?何で俺?」
「【サーチ】」
[ヴィンス・ロンゲスト]
伯爵ロンゲスト家、次男。9才。【雷】属性。
状態:野菜不足のため口内炎ができている。
先程、階段を踏み外し右足首を負傷。
補足:わんぱく、痩せ我慢。
隠し事あり。
「ふふっ。(ジーン兄様と同じように隠し事あり)」
「どう?何て出た?」
「えっと、ヴィー……野菜食べないから口内炎出来てるでしょ。それに、さっき階段踏み外して足首痛いんじゃない?」
「えっ!?何でそれ知ってんだよ!」
「見えたから。それより、足首見せて!」
そう言って、ヴィーの前で跪く。
「えっ!な、何すんだよ」
右の足首を触り
「痛いの痛いの飛んでいけー(【ファーストエイド】)」
「あ?あれ?足首の痛みがなくなった」
ヴィーはその場で立ち上がって、ジャンプし足首が痛くないことを確かめた。
「ジョアンちゃん、それが【ファーストエイド】なの?」
「はい、《おまじない》ってことにしてあります。なので、スキル発動は無詠唱です」
「素晴らしいわ〜。【ストレージS】は昨日から色々と出してもらっているから、じゃあ次は【アクア】ね。使ったことないのよね?」
「はい、屋敷で水はありますし」
「一度、出してもらえるかしら?あっ、このカップに」
「はい、えっと【アクア】」
空いたカップに、並々と水が入る。
「うん、普通の水ね。試しにお湯とか出せる?」
「んー(お湯出るかな?)【アクア】あっ、出た」
次のカップにお湯が入り、湯気をたてている。
「温度調節も可能なのね。ジョアンちゃん、その出た水を鑑定出来る?出来たら、見せて欲しいの」
「はい。【サーチ オープン】」
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[ジョアンの水]
ジョアンがスキルで出した水。
産地:ジョアン。
食用:可。
補足:常温。
飲むことによって多少の回復が見込まれる。
この水で料理を作ったり、お茶を入れると
いつもより美味しい上に、多少回復するから
一石二鳥だよ。
悪阻も楽になるし、傷口にかけると自然治癒力
がアップ。
毒だって無効になるかも?
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「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」
「母上、これって出したら大変な事になるのでは?」
アラン兄様が叔母様に聞く。
「え、えぇ、これはさすがにヤバいわね。…ジョアンちゃん、この水は滅多な事では出さないでね!」
「は、はい、わかりました」
「皆も、他言無用じゃ。良いな?」
「「「「「はい!」」」」」
「……」
なんてこと、コレってただの水じゃないのぉ〜。
ある意味回復薬って事でしょ?ポーションってやつ?
それはヤバい!!ヤバいわよ〜。
で、どうしてこんな時にウチの両親がいないのよ〜。
お母様はわかるわよ、悪阻で寝てるのは。お父様はギル叔父様と二日酔いって、なんなのよーーーー!!!
あっ、でも悪阻にも良いなら後でお母様にあげましょうかね〜。
「ジョアン、大丈夫か?」
アランは私が呆然としているのを心配して、近くに来て話し掛ける。
「えっ、あっ、はい。ちょっと驚いてしまって……」
「無理に1人で考えるなよ。ここにいる人なら、相談でも何でも聞いてくれるから。なっ」
そう言いながら、優しく頭を撫でる。
「ありがとう、アラン兄様」
「「「アラン兄様ーーー???」」」
ノエル兄様、ジーン兄様、ヴィーが叫ぶ。
「ちょ、ちょっといつから、その呼び方になったの?」
ノエル兄様が聞く。
「えっ、あー、今朝から」
「はぁーー!?聞いてない!!」
ジーン兄様が言う。
「じゃあさー、俺のこともヴィー兄様ーーー」
「「「ない!!!」」」
ノエル兄様、ジーン兄様、そしてアラン兄様までが声を揃えて否定する。
「なんでだよー!!」
ヴィーが口を尖らせる。




