552.テラスハウス
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書籍『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜』第3巻。
コミック『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも、スキルだけで無双します〜 』第3巻。
WEB版に、多少加筆もしてますので、ぜひ!!
翌日のアフタヌーンティーの後、私は一人で厨房へと向かった。
「ちわーっ!」
「「「あ、ジョアン様!」」」
久しぶりに厨房へ行くと、ケンさん、アーサー、ベンがいた。
「あれ? ジョアン様、なんか良いことありました?」
「え? 何で?」
「いや〜、うまくは言えないんすけど、何だかスッキリしたような感じなんで……」
ベン曰く、厨房へ入ってきた私の雰囲気がいつもと違ったと感じたらしい。もちろん、いつも不機嫌に見えるわけではないですよ、っと慌てて付け足していたけど。
「あー、長年の悩みが解決した感じ?」
「なんでそこで疑問文なのかわかんねーっすけど、良かったっすね」
「うん、ありがとう。あー、で、ここに来たのは今夜BBQをしようと思って」
「今夜、久しぶりにご家族が揃うからですか?」
「そう。兄さまたちが揃って帰ってくるのってあまりないからね」
「確かに。ここ最近だと……俺の結婚式っすかね?」
「いや、それ最近って言う?」
言われてみれば、確かにアーサーの結婚式に参加する為に帰省した以来、二人が揃ったことはない。でも、その結婚式から既に半年以上経っている。なんなら、あと少しで一年だろう。
「あー、そうっすね。結婚式の時は、ジョアン様の髪も短かったですしね〜」
「うん。あの時は切り方が雑だって、お母様に怒られたっけ」
「でも、俺は嬉しかったですよ。国外にいたのに、俺の結婚式の為に帰って来てくれたんですから」
そう、アーサーの結婚式の時はちょうどアニア国に滞在していた時だった。あのピクレート侯爵家とのごだごだの件で。
ちなみにアーサーのお相手は、エイブさんの結婚式の時に知り合った王妃様付き侍女トリオの一人、セーラさん。意外と奥手な二人は付き合うまでに友人として三年、そこから婚約まで三年かかった。結婚に踏み切ったのはエイブさんの長女、アリスちゃんからの言葉だったらしい。王都でデートをしていた二人を偶然見かけたアリスちゃんは、二人に駆け寄りこう言った。
「私、パパとママの時のジョアン様みたいに、二人の結婚式でリングガールしたいの。来年には学院入学よ? 忙しくなる前に予定を入れたいんだけど?」
公衆の面前でーーこの時カフェのテラス席にいたらしいーーそう言われたアーサーは、顔を真っ赤にしながらもポケットから指輪を出して、セーラさんにプロポーズしたらしい。まぁ、元々この日がセーラさんの誕生日でプロポーズをする予定ではあったらしいが、アリスちゃんからの思わぬ催促に勇気をもらったと言っていた。この後、アリスちゃんはスージーさんに怒られたらしいけど、私はこそっと褒めてフルーツ飴をあげた。
そして、結婚したアーサーはタウンハウスではなくジェネラル在住のまま。セーラさんが転移扉を使って王城に通っている。元々は、エイブさんと同じようにタウンハウス勤めになる予定だったのだが、セーラさんがジェネラルにいるお父様お母様に挨拶をしに来た際、領都を気に入ったらしい。ということで、我が家の敷地内にある既婚している使用人用のテラスハウスに住んでいる。
テラスハウスは複数の家が横並びにズラリとつながっている点が特徴の物件で、各住戸が隣の住戸と壁を共有しているが、それぞれが独立した造りとなっている。全戸二階建ての個別庭付きで、グレイ・ナンシーファミリー、ベン・サラファミリー、マイク・アニーファミリーも住んでいる。
我が家のテラスハウスに住むのは色々と条件がある。まずは夫婦の一人、もしくは二人がランペイル家で働いていること、そして戦えること。ではセーラさんは? というと、なんと意外なことに冒険者登録をしていた。しかも所属は王都南の冒険者ギルドでランクDだそうだ。聞いたところによると、学院生時代に一時冒険者活動が流行ったことがあったらしい。その時に流行りにのって冒険者活動をしていたということらしい。
ちなみに冒険者活動が流行るのは何年かごとに巡っているらしく、流行る年は決まって誰かしらの活躍やイベントがあったりするらしい。ちなみにセーラさんの時は、武闘会が開催されお祖父様が優勝した時だった。でも、お祖父様の影響で女の子たちもこぞって冒険者登録したことを不思議に思っていたら、その時の開会式で近衛隊を既に引退していたお祖母様がデモンストレーションで剣舞を披露したらしい。お祖母様の凛々しい姿を見て、女の子たちは自分も闘える女性になりたいと憧れたとセーラさんに聞いた。
そんなこんなで、家族が揃うのはかなり久しぶりなので、BBQのタレもひと工夫しようかと思い厨房へとやって来た。




