547.修学旅行23 アウルベア確認
アウルベアが目撃されたという牧場に、先行したメテオの報告によると牛舎の中で食事中だと言う。つまり、家畜がアウルベアに捕食されているということ。一応、一緒に向かうメンバーに情報を共有し、先を急ぐ。
ブライアン先生曰く、ウォーカー領で今まで狼系の魔獣からの被害はあったが、熊系の魔獣の被害は数えるほどしかなかったらしい。なので、領都にある冒険者ギルド所属の冒険者もランクC以下が多く、それ以上を目指すために他の領へ流れて行くらしい。
牧場付近まで来ると、先行していた領主様と何人かの冒険者が隠れるように牛舎を見ていた。
「兄貴」
「おぉ、来てくれたか。今、牛舎内に一頭は確認したがもう一頭が見当たらない。いつもなら二頭一緒に行動しているんだが」
「兄貴、騎士団には報告しているのか?」
「もちろん。だが、騎士団からは二日後にこっちに来ると返答があった」
「……そうか。冬前だからな」
ブライアン先生の説明によると、冬が来る前に熊系の魔獣は活動が活発になるらしい。前世の熊のように冬眠はしないが、冬になると作物も少なくなるので今のうちに食べておこう、っていうことらしい。そして、魔獣討伐をメインでしている第二騎士団は各地から被害報告が出ると遠征し、討伐にあたるようでこの時期が一番忙しいそうだ。
「……私達が討伐しちゃったら騎士団の人達の仕事取っちゃうかな?」
「「「「「は!?」」」」」
私が何気なく呟いた言葉に領主様、ブライアン先生、ハリー先生、ミア先生、スカイさんが反応した。
「いや、仕事を取ったら困ることはないぞ。代わりに他の所に行くか、待機で休養を取れるかだからな」
「だ、だが、学生の君達が討伐だなんて……いくらブライアンがいたとしても無理だろう?」
「そうだよ! アウルベアの怖さを知らないだろう?」
ブライアン先生は、元騎士団ということもあり騎士団の内情を知っていた。領主様とスカイさんは、学生である私達を心配してくれているが、アウルベアは既に一度みんなで討伐しているので怖さはない。ただ、二頭同時となると不安は否めない。
ーー大丈夫よ。今回は私もいるんだから。
ーー俺もいるの忘れてないっすか?
ーー私もおりますよ。
パールとメテオ、ベルデに念話で言われ、先程の不安は少し減った気がした。
「大丈夫です。アウルベアなら討伐したことありますし、私の契約獣もいますから。先生達も手伝ってくれるんですよね?」
「もちろんだ。スカイも文官科出身とはいえ、冒険者登録しているからな。な?」
「ま、まぁ。でも俺、ランクCですよ。叔父上」
「大丈夫だ。こいつら全員ランクBだから」
「「「「「えっ!?」」」」」
ブライアン先生の言葉に、ハリー先生とミア先生は無言で頷き、領主様とスカイさん、そして一緒に張り込みをしていた冒険者たちが驚いていた。ちなみに冒険者達はランクCとDの混合チームだった。
いやいや、一応騎士科の成績上位ですしね、と心の中で呟きながら苦笑いした私達。
そして作戦は、こうだ。
まず、メテオが再度牛舎内の様子を探り、未だに外に出てこないアウルベアーー以降、熊Aーーの状況を確認。その間に、パールが気配を消して周辺を見回り、以前熊Aと一緒に目撃されたというアウルベアーー以降、熊Bーーを確認してもらう。両方の状況を確認後、二頭同時の討伐では分が悪いので二頭を分断させて討伐する。
メテオの報告では、熊Aは捕食後お腹いっぱいになったからなのか寝ているらしい。でも時折、耳が動いているので私達が踏み込んだ時点で気づく可能性があるそうだ。
一方、熊Bはというと牧場から3km程離れた沢でキングシャーモンを捕食中だったそうだ。3kmとは言え熊Aの鳴き声が聞こえた場合、こっちに合流されては困ると思ったパールは、ベルデにお願いして熊Bのいる辺りに結界を張ってくれたようだ。
ハリー先生は領主様の防御を、ミア先生は私達と共に攻撃班になる。ミア先生は、綺麗な容姿には似つかわしくないド派手な攻撃が得意らしく魔術師団にいた頃は「静」のハリー「動」のミアと両極端な二人だったらしい。そして、この二人が結婚したことに誰もが驚いたらしい。そう聞いたけれど、私的には二人を見ていると両極端だからこそ合っているとも思えた。
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