刊行記念SS お・も・て・な・し
9/10に第1巻が発売されたので、刊行記念SS第二弾です。
ーーーある雷の日。
今日は、お父様とお母様を労う為に午後からリビングを封鎖して飾りつけをしている。
「ジョー、こんな感じ?」
「はい、ありがとうございます」
ノエル兄様には、間接照明を担当してもらっている。今回使うのは、私の手作りアロマキャンドル。
小さくなったロウソクと細かく削ったクレヨンーーなんと、この世界にもクレヨンが存在していた。たぶん過去の『前世の記憶持ち』のお陰?ーーを湯煎で溶かし、溶けて出てきた芯は取り出してきれいに拭いておく。溶けたロウを湯せんから外し、60度前後まで下げてからーー私の場合は【サーチS】で確認ーー香り付けのためにアロマオイルを何滴か入れ軽く混ぜる。そのロウを何個かのショットグラスに入れて、軽く拭き取っておいたロウソクの芯を中心に差し込み固定して固まったら出来上がり。今回は、リラックス効果があり、緊張やストレスを和らげ気持ちを穏やかにするラベンダー。
「ジョー、こんなんでどうだ?」
「わぁ、良いですね」
ジーン兄様には、今回お父様達にカクテルを出してもらう。未だに私の身体では、まだシェイカーが振れないから。
ローテーブルの近くに、二段式のワゴンの上段にはグラスが何種類かと氷入れ、シェイカー、マドラーなどが並ぶ。下段には、ベースとなるお酒類と果汁の入った瓶が複数ある。
そして私はテーブルをセッティング中。おつまみに関しては、既に出来上がりストレージで保管中。今回は、スティク野菜のメソマヨディップ、ジャガトフライ、飾り切りしたフルーツ盛り、そして二種類のカナッペ。一つは、ドライフルーツミックスを小さく切ってクリームチーズに混ぜたもの。もう一つは、クリームチーズに牛乳とハチミツ、粗挽きこしょうを混ぜて上に甘露芋の甘納豆をのせたもの。
夕食を終えると、私達三人は侍従服とメイド服に着替え目隠しをしたお父様とお母様をリビングに誘導する。リビングに入ったところで、目隠しを取ってもらった。
「おぉー、すごいな」
「まぁ、なんて素敵なの」
「今夜は、父上と母上に日頃からの感謝を込めて三人でもてなさせて頂きます」
「いつも俺たちの為に、ありがとうございます」
「お父様、お母様、さぁこちらに座って下さい」
二人がソファーに座ると、ノエル兄様がドリンクメニューを渡す。オーダーを取るとジーン兄様に伝え、ジーン兄様がカクテルを作っていく。その間に、私はおつまみの説明をして、希望されたものを取り分けていく。
「うん。美味しいぞ、ジーン」
「えぇ、本当に上手に作るわねぇ。ジョアンのおつまみも美味しいわ」
カクテルもおつまみも好評のようで、私はお兄様達にサムズアップするとお兄様達も同じように返してくれた。
「そういえば、リビングがいい香りね? このキャンドルかしら?」
「はい。ノエル兄様と一緒に作ったんです」
アロマキャンドルは、【火】属性のノエル兄様に手伝ってもらったのだ。ちなみに、アロマオイルは、王都の香水屋さんに売っているらしい。さすがにノエル兄様もジーン兄様も、香水屋に入りにくいということで学院の帰りにサラが買いに行ってくれた。
「キャンドルの光とこの香りで、気持ちが安らぐな。ベッドルームにも欲しいぐらいだな」
「ベッドルームには、違う香りのキャンドルを準備しておきました」
「まぁ、そうなの? 嬉しいわ」
「これは寝るのも楽しみだな」
ベッドルームの香りは、イランイラン。甘い花の香りで、鎮静作用や抗うつ作用に優れていて、ストレスや緊張から解放して、心を落ち着かせ気持ちをリラックスさせてくれる香り。
お父様とお母様へのおもてなしは、大成功だった。そして意外と人をもてなすことが楽しかったお兄様達は、次は誰を相手にするかどんなことをするかなどと相談していた。
***第1巻、絶賛販売中!***
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