表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

524/562

520.コントみたい

 細かくしたカレールーを入れると、周囲にカレーの良い匂いが漂い出した。その匂いを、【風】属性のシェルトンさんがコボルト達の元へ飛ばす。そして私の周りでは、誰のものかわからない腹の虫が大合唱している。


「やべぇ……。匂いがたまらない」

「班長〜。もう我慢出来ないっすよ。食べましょうよ〜」

「ヘイデン……それには同意する。よし、食べるか」

「「「「いぇーい!!」」」」


 私のストレージからご飯とパン、ピクルスを出している間に先輩達が皿やコップの準備をしている。そしてリキは、トッピングの骨付きソーセージを炙っている。


「「「うっま!!」」」

「ヤバいっす!」

「止まらないな」


 皆んなが其々に感想を言ってくれながらも、食べるスピードは落ちない。私が食べ終わる前に、皆んな少なくとも一回はお代わりをしていた。ヘイデンさんとリキに至っては既に二回目も終わりそう……。


 いや、確かにカレーは飲み物って言うけど……。


「……来たな」


 カズール班長の呟きに、私達は無言で頷き各々そっと皿を置いて、私とリキだけが鍋の近くに残り他の人達は気配を消して近くの木の陰に身を隠した。そして、木の陰からシェルトンさんが再び微風を送る。

 しばらくすると、草むらからハイコボルトやコボルトが顔を出してきた。


「結構、多いけど……だ、大丈夫かな?」

「た、たぶん?」


 ハイコボルト達が顔を出してから15分程たった頃、ようやくコボルトの2頭が草むらから出てこちらにゆっくり近づいて来た。そのコボルトの手には、棍棒が握られている。リキは緊張からなのか手を震わせながら、小さめのボウルにカレーを盛ると隣の私に渡す。それを受け取った私は皿の端に大きめのパンを2つ載せ、私達と草むらの中間地点までゆっくりと運ぶ。こんな危険な作業を私がしているのは、偏に【バリア】を使えるから。

 私がカレーを置き、その場から離れると2頭のコボルトは恐る恐るカレーに近づき匂いを嗅いでいる。そのうちパンを手にして食べると、ちょうどカレーが付いていた部分だったのか目を見開いて驚いている。


「……コボルトも驚く仕草は人間と変わらないんだね」

「だな」


 そのまま見ていると、2頭のコボルトが我先にとカレーを食べている。どうやら気に入ってくれたようだ。

 今回のカレーは辛味成分のあるチリやペッパー系は入れてない。でも、クミンが入っているのでカレーの匂いのするシチューに近い。遥か昔に給食で食べたカレーシチューに似ている。ちなみに私達が食べていたカレーには、チリを入れていたけど。


「すげぇ勢いで食ってるな」

「うん。あっ、ハイコボルトが出て来た」


 2頭の食いっぷりに我慢できなかったのか、ハイコボルトが草むらから出て来た。その後ろに、他のコボルト達も続く。ハイコボルトは2頭に向かって何か言っているようだが、2頭は気づいているのか気づいていても無視しているか反応はない。豪を煮やしたハイコボルトは、カレーに夢中になっている2頭に近づき後頭部を叩いた。叩かれた2頭は、真後ろにいたハイコボルトに驚き尻餅をついていた。それでも2頭の口はモグモグと動いているし、なんなら手に持ったパンを口に運ぼうとしてまた怒られている。


「ぶっ……。ヤバい見てて面白すぎる」

「くっ! リキ、しぃっ!」


 確かに、ハイコボルトと2頭のコボルトのやり取りは、コントを見ているようで面白い。まるで、ド◯フを見ているよう。リキの吹き出しに気づいたのか、ハイコボルトがこちらを見て威嚇している。


「ほらぁ、リキが笑うから」

「えっ!? 俺?」

「そうでしょ。私は、我慢したもん!」

「……やっぱ我慢してたのかよ。ずりぃ」

「んなことより、2人共カレー運ばねぇと」

「「っ!!」」


 私とリキが小競り合いをしていると、木の陰に隠れていたはずのヘイデンさんが近くにいた。急に声を掛けられて叫ばなかった自分を褒めたい。後で聞いたところヘイデンさんは【隠密】のスキル保持者だそうだ。

 ヘイデンさんに言われ、自分達の仕事を思い出した私達は準備していた深めな大皿にカレーをなみなみと注ぎその上にパンを置いた。それを、私とリキ2人がかりで運ぶ。もちろん【バリア】を展開しながら。

 近寄って来た私達を警戒し臨戦体制に入ったが、視線はカレーの大皿に釘付けになっている。その熱い視線を受けながら私達は溢さないように大皿を地面に置く。中腰のまま後方に下がりながらコボルト達を見ていると、ハイコボルトがこちらを気にしながら大皿ににじり寄って行く。下がる私達とにじり寄るハイコボルトの距離は一定を保ったまま。


「食べますかね?」

「大丈夫だ。ジョアンちゃんの料理だから」

 

 鍋がある所まで戻って未だにその場に留まっていたヘイデンさんに聞くと、根拠のない答えが返ってきた。でも、私の心配は杞憂に終わったようで、大皿にコボルトが群がっている。ゴキブリホイホイならぬコボルトホイホイ。

 そのまま見ているとコボルトが1頭、また1頭と横になっていく。そして、最後まで食べていたハイコボルトが横になった。ようやくカレーに仕込んだ眠り薬が効いたようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★好評発売中★

html>
書籍情報はこちらから
★マグコミ様にてコミカライズ連載スタート★

html>
マグコミはこちらから
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ