52.調理指導①
予定通り、同時2話更新。
こちらは1話目です。
食材の在庫も確認したところで
「えーっと、今までは肉を焼いて、生野菜を食べていたんですよね?」
jr.メンバーに聞いてみる。
「うん、それ以外の調理の仕方知らなかったから……」
リュウジスさんが頭を掻きながら申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、知らない事は今から学べば良いんだよ。一緒に頑張ろ!」
そう言うと、何故かみんな顔が赤くなる。
知らない事、恥ずかしいのかしら?
「じゃあ、唐揚げと野菜オムレツを作ります」
唐揚げチームに、ナットさん、エリーさん、リュウジスさん、マーティンさん。オムレツチームに、オーキさん、オミさん、ガンさんを分けた。
「オムレツチームの人は、タマオン、ピーパーを微塵切りに、ジャガトは皮を剥いてさいの目切りにして茹でて下さい。ベーコンも同じさいの目で。あと、卵を割って溶いておいて」
「ジョアン様…さいの目切りって?」
ガンさんが聞く。
「あっ、えーっと小さめのダイスに切ることです。こんな感じに」
「あっ、わかった。やってみる」
「唐揚げチームの人は、ルフバードの肉を一口大に切って、ガーニックのすりおろしと塩を振りかけて軽く揉んでおいて。で、衣を付けて揚げるから。衣は小麦粉と片栗粉を同量と水でトロトロぐらいに混ぜて」
「「「「了解」」」」
「いてっ!」
ガンさんが包丁で手を切ったようだ。
「大丈夫?ちょっと見せて」
とガンの手を取り、切った箇所を手で覆う。
「痛いの痛いの飛んでいけー(【ファーストエイド】)。はい、これで大丈夫」
私兵団の前でスキルを使っていいかわからないから、《おまじない》ってことにしておきましょう。
後で、お父様に聞かないといけないわね。
「っ!!」
ガンさんが見ると、血が止まり痛みも無くなっていた。
「あっ、ありがとう。ジョアン様」
「ううん、気をつけてね」
そう言って、他の人の様子を見に行った。
ガンが手を握られた箇所を触りながら、ボーッとしてるとノエルが近寄ってきた。
「ガン、何赤くなってんだよ。お前、いくら可愛いからって僕のジョーに変なことすんなよ」
そう言って、ノエルもジョアンの方に行った。
「変なことなんてしねーよ。……変なことは」
と言う、ガンの呟きはノエルには聞こえていない。
が、スキル【隠密】で気配を消していたナンシーは生暖かい目で見ていた。
「はい、どちらのチームも下準備は出来たみたいだから、ちょっと休憩にしましょ」
ストレージから冷えたアイスティーとミランジジュース、ソルトバタークッキーを出す。
みんなにミランジアイスティーを配り、自分も飲む。
んー。やっぱり美味しいわ。
今度はリップルティーも作ってみようかしらねぇ。
「休憩も取れたから、再開しまーす」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「じゃあ、オムレツチームはフライパンにサラダ油を入れて熱してタマオンとピーパーを中火で炒めて。タマオンが半透明までなったらベーコンとジャガトを炒めて塩胡椒。濃いめの味付けでね。そこに卵入れて、ちょっとかき混ぜる。蓋をして弱火で蒸し焼きにするの。火が通ってきたら両面焼いて出来上がり」
「「「はい」」」
「唐揚げチームは、鍋にサラダ油を入れて温めて。温まったら衣をつけた肉を油に入れるの。だいたい5分ぐらいかな。で、全部揚げたら、ちょっと油の温度を上げて、もう一度揚げるの。揚げ終わったら、最後に塩をパラッて振りかけて出来上がり」
「何でもう一度揚げるんだ?」
ジーン兄様が聞く。
「2度揚げって言って、カリッとさせるためにだよ」
「なるほどな〜」
「じゃあ、気をつけて揚げてね」
「「「「はーい」」」」
ジュワーッ。
やっぱり、揚げ物の音だけでお腹すくわねぇ。
しかも、自分が揚げずに食べられるって、更に美味しく感じるわぁ。
「「あちっ!!」」
2人1組で揚げていたが、ナットとマーティンに油が跳ねた。
「2人とも大丈夫?早く冷やさないと」
火を止め、2人の手を引っ張って水道で冷やす。ナットさんは腕だったが、マーティンさんは頬に飛んだらしい。腕はそのまま冷やせるが、顔はさすがに難しいからハンカチを濡らしてマーティンさんの顔にあてさせる。
「あー火傷しちゃったね。痛いの痛いの飛んでいけー(【ファーストエイド】)」
ナットさんの腕の火傷を手で覆って、《おまじない》もといスキルを使う。
「えっ!?」
ナットさんは驚いて腕を見ると火傷の赤みと痛みが引いた。
「マーティンさん、ちょっとしゃがんで?」
5才と11才では身長差がありすぎた。
しゃがんでもらって、マーティンさんの頬に手をあてる。
「痛いの痛いの飛んでいけー(【ファーストエイド】)。うん、赤みはなくなったよ。痛みは?」
そうマーティンさんに聞くと。
真っ赤な顔のマーティンさんが
「う、うん。だ、だ、大丈夫」
「良かったー。火傷の跡が残ったら格好いい顔が台無しになっちゃうよ。気をつけてね」
無言で頷くマーティンさんを見て、ニコッと笑うとオムレツチームの方に行く。
その後ろ姿をボーッと見ていると、マーティンはいきなりジーンに肩を組まれた。
「マーティン、何ボーッとジョーを見てんだよ。ほっぺた触られたぐらいで、鼻の下伸ばすな!格好いいって言われたからって、勘違いすんなよ」
「べ、別にしてねーよ」
「なら、良いけど?お前……クッ、クッ、クッ、耳まで真っ赤だぞ」
「う、うるせー」
ジーンは笑いながらジョアンの方に向かった。
それを近くで見ていたナットが、無言でマーティンの肩をポンポンと叩いて鍋の方に戻って行った。
「あー、もぉー」
と、頭を掻きながらマーティンも鍋の方に向かった。
それを【隠密】しながら見ていたナンシー。
(はぁー。ジョアン様ったら、5才でなんて罪作りなのかしら。すでに2人がジョアン様に釘付けだわ。しかも坊ちゃん達の同級生だなんて……これは、奥様に報告案件ね)